「山本幸三を励ます会」 雑誌・リベラルタイム2月号に掲載されました
■ 山本幸三レポート 〜 年金問題の本質は何か? 〜


年金問題の本質は何か? ・・・ 山本幸三

1 一元化は、救世主か
 先の参議院選でも、民主党は、「一元化こそ、抜本改革」と主張したが、果たして本当にそうか?私には、どうもそうは思えないのだ。一元化を実現するには、まず、@自営業者の所得把握をどうするか?A積立金が十分に有る制度と、無い制度の間で、負担の公平をどう図るか?−という難題を解決する必要がある。しかも、これをクリアーしたとしても、今日の日本の年金制度が抱える問題の抜本解決になるとは到底思えないのだ。また、グリーンピア等、社会保険庁の無駄使いなどが批判されたが、これも、本質の問題とは、かけ離れている。(金額としても4兆円位で、積立金170兆円に比べても、小さい。)

2 年金問題の本質は
 二つあって、@一つは、過去に約束した年金の支払いのうち、資金手当てが出来ていない巨額の債務をどう賄うかという「財政」の問題。そして、A若者や企業の「年金離れ」、「年金不信」をどう払拭するかという問題だ。@の「財政」の問題というのは、将来分と過去分に分けて考える必要がある。今回の改正前の段階で、厚生年金については、将来分の給付債務が1100兆円に対し、資産(積立金と国庫負担)が1050兆円と、概ねバランスしている。しかし、過去分は、給付債務が800兆円に対し、資産は300兆円しか無く、500兆円の債務超過で、これをどう埋めるかという大問題がある。国民年金や共済年金も合わせれば、ざっと600兆円の借金である。過去の年金支払いが大盤振る舞い過ぎたツケである。Aの「年金不信」については、「掛金は、年金給付の形で必ず本人のところへ返ってくる。」ということを、若者達に確信させられるかどうかにかかっている。単に一元化しただけで、これらの問題が解決する訳ではない。

3 今回改正は、何をしたのか
 今回の年金法改正は、実は相当過激なことをやったのだ。厚生年金保険料を13.58%から18.3%に引き上げ、他方、給付はマクロ経済スライドで調整する(労働力減少と長寿化で年に0.9%給付抑制)。この結果、バランスシートは、将来分が420兆円もの資産超過になる一方、過去分は丁度420兆円の債務超過となる。言い換えれば、過去の債務超過のツケを、これからの保険料負担増と給付削減で帳消しにしようということだ。こうした負担に若者や企業が、果たして納得するかどうかという疑問は残るが、@の財政の問題については、一応の数字合わせはしたということだ。他方、もう一つのAの「年金不信」問題については、全く何の手も着いていない。これは、今後必ず問題になる。この点で参考になるのが、スウェーデンの「見なし掛け金建て方式」というもので、自分がどれだけの年金を支払ったか、机上計算して帳簿につけておき、将来支払いましょうということだ。

4 賦課方式も積み立て方式も大差は無い
 これまでの年金の議論では、「賦課方式だから財政問題が起きるのだ。」との主張が、しきりに行われたが、最近の研究で、双方とも年金負担の点では無差別同等ということが明らかになった。ある意味で、これまで、賦課方式は、「いわれなき批判」を受けてきたことになる。スウェーデンでも、賦課方式を維持しながら、「見なし掛け金建て方式」を実現した。そのカギは、「見なし運用利回り」の考案にあった。

5 全ては、経済成長次第を忘れるな
 上記の改正後の試算も、賃金上昇率2.1%、物価上昇率1.0%、割引率3.2%を前提としている。経済が成長しなければ、年金問題の解決は、あり得ないのだ。この点、未だに、デフレが解消していないのは、憂うべきことだ。物価スライドで、ここ二年、年金給付は減り続けているのだから、年金受給者は、日銀に、デフレ解消を最優先にするよう、強く求めるべきである。かって、日銀総裁は、「デフレは、年金生活者にとって、好ましいことだ。」等と、うそぶいていたが、とんでもないことだ。経済が成長すれば、賃金も上がるので保険料も増えるし、運用収益も上がる。税収も増えるだろう。年金問題の解決が、やり易くなるのである。逆に、デフレが続く限り、悪循環で、年金問題に対処する糸口も掴めなくなる。全ては、経済成長次第だということを、忘れてはならない。

6 今後の取り組みは、どうすべきか
 以上の本質論を踏まえると、年金制度の再見直しは、必至だ。

  1. 「年金不信」の払拭を第一に考えるべき。スウェーデン型の「見なし掛け金建て方式」を採用してもよいし、現行の給付建てでも工夫すれば、全く同じように設計可能である。

  2. 財源の手当て次第では、保険料の引き上げ率を抑えることが出来るかもしれない。―「消費税」の引き上げは、可能か?

  3. まず、厚生年金と共済年金の一元化を図る。

  4. 次に「納税者番号制」を導入する。その定着を待って、国民年金との統合を図る。

  5. 税金は、過去の借金のツケで傷んだバランスシートの修復に当てていく。

  6. 加入者の利便に資するため、「手続きの一本化」を図る。

  7. なお、全ての前提として、デフレを解消し、経済成長を図る必要がある。

  8. いずれにしても、野党を巻き込んだ形でなければ、抜本改革は上手くいかないだろう。私が、年金調査会の事務局長をしていた時は、与野党協議してという雰囲気があった。与党も、ここは面子を捨て、協議を呼びかけるべきではないか?




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