「山本幸三を励ます会」 雑誌・リベラルタイム2月号に掲載されました
■ 山本幸三レポート 〜 乱世で生き残るにはどうしたらよいか 〜


  1.  「新しい経営思想・経営戦略のための山本幸三セミナー」にご参加頂き、誠に有難うございます。日頃より、ご支援、ご指導賜りながら、昨年の総選挙で、苦杯を舐め、申し訳なく存じております。しかし、このまま引き下がる訳にはいきません。捲土重来を期して、頑張って参りますので、今後とも、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

  2.  さて、敗戦後のショックで茫然自失しておりました時、ある人から、「思想の勉強」をしてみないかと誘われました。その瞬間、私は、「ああ、これだ。自分に足りなかったのは。」と、直感したのです。そして、竹内日祥上人のお話を聞くようになり、自分を取り巻いていた霧が、次第に晴れていくように感じました。また、上人のお話は、科学の世界で、私が考えていたことと不思議に一致するので、二重に驚いています。この「思想」は、選挙と同じく戦いの場に立っておられる企業経営者の皆様にとっても、必ず参考になると思うので、ここで紹介させて頂きたいと存じます。

  3.  今日は、「乱世」の時代だと言われます。「乱世」では、全ての物が壊れていくのです。「秩序の解体」が、進むのです。色々な物が、作っても壊れ、作っても壊れしていくのです。年金問題なんかも、その良い例でしょうか。上人は、「今回の乱世は、1985年のプラザ合意から始まって、既に20年が経過した。あと40年続く。」と言われます。確かに、この10数年を振り返ると、通常の景気循環とは、明らかに違うようです。経済学で言う、60年周期のコンドラチェフの波動に対応しているのでしょうか。

  4.  「秩序の解体」と言うと、科学、物理学の世界の、「エネルギーの第2法則」を思い出します。「エネルギーの第1法則」は、エネルギー保存の法則ですが、「第2法則」は、別名、「エントロピー増大の法則」とも呼ばれます。エントロピーというのは、「乱雑さ」とか、「秩序の解体」などを意味します。つまり、この世は、エネルギーの流れで出来ているのですが、それは、常に、「秩序の解体」に向かっているのです。この「解体のエネルギー」が強く出ている時代が、「乱世」なのでしょうか。

  5.  ところで、この「エントロピー増大の法則」に反する現象が存在するのが、科学の世界の最大の謎なのです。「生命の誕生」が、一番の例です。人間は、バラバラの肉体の集まりではありません。極めて秩序立った有機体システムです。エントロピー増大系の中に、どうしてエントロピー減少系のシステムが出来上がるのか、この「自己組織化の基礎原理」を発見出来たら、間違いなくノーベル賞物でしょう。複雑系科学が取り組む、今日の科学の世界の最大のテーマです。

  6.  「思想」の世界での最大のテーマも、「乱世」に於いて、如何にして「秩序の解体」を逃れ、自己を確立し、自己と他者の関係を有機体的システムに作り変えていくかということです。これを実現する為には、思考のパラダイムを、「分離の思考」から「統合の思考」へと、180度転換させなければなりません。

  7.  日本の教育は、「分離・分割の思考方法」しか教えていないので、日本人は皆、この「分離の思考」に毒されています。「分離・分析が良く出来ることが、能力が高い。」とされる訳ですから。「分離の思考」では、「自分と他人」、「善と悪」、「敵と味方」といった具合に、対象を分けて、対立的に捉えていきます。
    しかし、この思考を続ける限り、「秩序の解体」を止めることは出来ません。

  8.  このジレンマを救い得るのは、「統合の思考」しかありません。「統合の思考」とは、悪の中に善を見出し、敵を味方にしてしまおうというアプローチです。善も悪も、敵も味方も、吸収・統合しようと考えるのです。何故、こういう考え方が出来るかというと、悪とか敵というのは、実は、自己のマイナスのイメージの投影でそう見えているに他ならないからだと、考えるからです。人間は、「自己概念」が「自己イメージ」を認識することによって、「自己を知る」ことが出来るのですが、「自己イメージ」には、プラスの自己イメージとマイナスの自己イメージがあります。プラスとは、自分にとって好ましいもの、マイナスとは、自分にとって嫌らしいもの、好ましくないものを意味します。この自己認識に於いて、「分離の思考」では、プラスの自己イメージしか受け入れることが出来ません。マイナスの自己イメージは、排除してしまうのです。これに対し、「思想」の勉強をして、「統合の思考」が出来るようになると、プラスもマイナスも、自己なのだからと、包摂して受け入れることが可能になるのです。「あいつは、嫌な奴で敵だと見えるのですが、よく観てみると、あいつの嫌なところは、実は、自分のマイナスの自己イメージそのものだ。」と気がつくのです。今までは、敵に見えていたものが、実は、自分そのものだということになるのですから、敵は敵でなくなるのです。敵こそ、自己を正確に認識させてくれる、最大の価値ある存在になるのです。敵が味方になれば、これ程、心強いことはありません。

  9.  こうした物の考え方を「統合の思想」と言い、思想の世界に於ける「秩序の解体」を防ぐ、エントロピー減少系のパラダイムに成り得るのではないかと考えるのです。敵は、自己のマイナスのイメージの投影だとする考え方は、物理学で言う、「この世界では、鏡映対称性が成り立っている。」ということと相通じているように思います。鏡には、自分が映っているに他ならないということですから。

  10.  この乱世に生き残るには、「統合の思想」によって、企業経営を行っていかなければなりません。企業のトップが、自己の掲げる目的に確信を持って、それを共有出来る関係を、社員との間に築き上げられるかどうかにかかっています。人間は、自己を信じている人しか、他人も、信ずることが出来ないのです。社員との関係を「統合的」にするには、社長が、社員に率直に、自己を語ることが必要です。「自分が、いかに思想的に間違っていたか。自分が足りなかったから、社員を信頼出来なかったのだ。」と。その上で、どれだけ高い価値観のある目的を示すことが出来るかどうかが問われているのです。自己の目的に、限り無い価値があると確信する者だけが、他人からも信頼されるのです。高い価値かどうかは、「共同体全体の為に、貢献しようとしているものか?」で、判断されます。社員が、会社の為に貢献することが、自分自身にとっても生甲斐であると確信出来るような、高い価値観の目的でなければいけません。それが実現できたならば、全社一丸となって、百万の敵も、物ともしない体制が出来上がるでしょう。

  11.  一つ注意して置かなくてはならないのは、外部の見かけの敵は本当の敵ではないのですが、真の敵は、内部にあり得るということです。クラウゼヴィッツが、「戦いは、外部の敵に負けることはほとんど無く、内部の敵に負けるのだ。」と、言っている通りです。この内部の敵を見極めるには、「統合の思想」を、しっかり勉強していなければなりません。私が、選挙で負けたのも、一つには、「分離の思考」によって、「敵を作り過ぎた。」ことと、二つ目には、「内部の敵を、見抜けなかった。」ことにあると思っています。もっと早く、「思想」の勉強をしていたならばと悔やまれてなりません。

  12.  「思想」の勉強の中で、「孫子」と「クラウゼヴィッツ」の重要性を改めて認識致しました。次回のセミナーは、10月を考えておりますが、その時には、この「孫子」と「クラウゼヴィッツ」を取り上げて、議論してみたいと思っておりますので、どうぞ、ご期待下さい。

  13.  さて、最後に、最近の経済情勢についての、私の見解を申し上げます。

    • このところ、景気の回復を裏付ける指標が続出しておりますが、私は、既に景気回復のピークは打ったと観ています。根拠は、CI(総合景気指数)が、過去の回復期のピークの水準に達したからです。株の世界でも、「皆が、強気になったら、ピークだ。」と、言われるでしょう。株の、これ以上の上昇は、望み薄ではないでしょうか?

    • アメリカは、既に引き締めに入りました。六月末には、誘導金利も引き上げるでしょう。中国も、これに倣い、金融を引き締めています。このことも、株の上昇が、これ以上望めないことの根拠の一つです。

    • 株は、今年前半値上がりしましたので、一年半か二年経つと、地価に波及してくるはずです。地価は、来年中には、底入れするでしょう。

    • 以上から、今年の後半から来年にかけては、景気は、調整局面で、足踏みしますが、再来年、2006年からは、本格的な回復期を迎えると観ています。短期、中期の循環論からも、2006年からが、ゴールデンタイムです。

    • 従って、この一年半を、何とか生き延びることが、企業にとって、死活問題です。是非とも、「統合の思想」を、早く身に着けて、将来の発展に備えて頂きたいものだと思います。そのお助けをする為にも、月二回メールマガジンを発行させて頂きますので、ご活用下さい。




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