アメリカとフランスで今何が起こっているのか?@米国、仏出張記録

 

アメリカとフランスで今何が起こっているのか?

米国、仏出張記録

 

(アメリカ合衆国議会議事堂の前で。)

 

私は、毎年大型連休中必ず米国のワシントンを訪問することとしており、かれこれ25年目になりま

す。これは、政治家として、今米国で何が起こっているのか、米国の議員や有識者が何を考えてい

るのかを知っておくことは、日本の行く末を考える上でどうしても必要なことだと思っているから

です。できれば、中国にも年に一度は訪れたいとも考えています。

  (日米国会議員会議の様子です。)

ワシントンでは、日米国会議員会議で米国議会議員と意見交換するとともに、その合間を縫って経

済・安保の有識者とも面談します。恒例のFRB(連邦準備銀行)議長との面談は、今年は丁度FO

MC(金融政策決定会合)開催日に当り実現できませんでした。FRB議長が一国会議員と会うのは

極めて異例なことのようですが、これも私が毎年訪れ、日本経済の状況についての説明を行うこと

を先方が評価しているからだと理解しています。今回は、FRB議長とは会えませんでしたが、ピ

ーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長とは旧交を暖めることができました。ポーゼン

所長は、米国経済の見通しについて、かなり楽観的な見解を示されました。ただ、リスクとして、

地政・外交・貿易を挙げられました。とくに鉄鋼・アルミに対する追加関税措置で日本を適用除外

しないのは全く理解できないと力説しておりました。まともな経済理論に基づかないトランプ政権

への苛立ちも滲み出ている感じのようでした。

 

今回の渡米で、私がもう一つ確認したかったのは、トランプ大統領についての評価です。この点

を会う人毎に質してみましたが、その評価は総じて散々なものでした。「アメリカ・ファースト」

という独善的な方針によって米国を中心とする自由で開放的な国際秩序が壊れつつあり、政策決定

が個人的かつ取引主義的となって、政府としての信頼が失われつつあるように見えました。

 

パリ協定からの離脱、TPPからの離脱、イランとの核合意からの離脱、WTOルールを無視した

懲罰的関税による貿易戦争布告等に見られる国際的信用の失墜のみならず、ロシア疑惑や旧ポルノ

女優への口止め料支払い等による個人としての信頼失墜など枚挙にいとまがないと多くの人が嘆い

ていました。あるジャーナリストは、「トランプ大統領は落ち着いて本を読むことも、じっくり考

えることもできない、という障害をもっているのだ。」と差別的表現ともいえるほど酷評してい

ました。困ったことは、トランプ大統領が何を言い出すのか誰にも分からないので、組織体として

の政府が機能せず、大統領個人に全ての決定が委ねられていることです。USTR(米国通商代表

部)のナンバー・ツーであるマイケル・ビーマン次席代表と会談した際、私から、「米国は各国との

貿易赤字解消を求めているが、本気で貿易赤字を解消したいというのなら簡単なことだ。貿易の反

対取引である各国からの資本流入をストップさせればいいだけだ。しかし、そんなことをやって米

国経済が上手く回るとでも本当に思っているのですか?」と追求したところ、ビーマン氏は「全体

としての赤字解消というのではなく、個別の国との間では色々問題があるということだ。」とシド

ロモドロの回答でした。私には、「実は自分もその理屈は理解しているのだが、トランプ大統領が

固執するので止むを得ないのだ。」と言っているようにも窺えました。彼等も困惑しているのでし

ょう。

 

アメリカ人は今、毎朝トランプ大統領がツイッターで何を言い出すかに振り回されています。他人

の意見など聞かない、自分の言いたいことだけ言うというツイッターで物事を進めようというのだ

から困ったことです。このためかどうか、ワシントンでちょっと異常だなと感じたことは、アメリ

カ人が皆猛烈な早口になっていることでした。他人の発言を遮ってでも自分の主張を通さねばとい

う強迫観念に捕らわれているようにみえます。これもツイッター等で情報が瞬時に拡散されるネッ

ト時代がもたらした今日のアメリカ社会の病理現象なのでしょうか。そういえば、かつて風変わり

な街の哲学者と呼ばれたエリック・ホッファーがこんなことを言っていました。「アメリカ人の浅

薄さは、彼等がすぐにハッスルする結果である。物事を考え抜くにはひまがいる。成熟するにもひ

まがいる。急いでいる人たちは考えることも、成長することも、堕落することもできない。彼等は

永遠に愚直状態に止まる。」と。真の自信がなく、外部からのショックに過敏に反応して、男らし

さを誇示しようとハッスルする指導者ほど、致命的な失敗を犯すものだというのです。

 

(20年以上の付き合いとなるセンセンブレナー米国下院議員と。写真は4月の訪日時に。)

パックス・アメリカーナが終わったとしても、米国が依然として経済大国・軍事大国であることに

は変わりがなく、各国指導者はトランプ大統領と何とか上手くやっていかなければなりません。一

番よい方法は何かと聞くと、「持ち上げるに限る。」との答え。この点、安倍総理は実に見事にト

ランプ大統領の心を捕らえているではないかと評判でした。最近の持ち上げテクニックで秀逸なの

は、韓国の文在寅大統領による「ノーベル平和賞間違いなし」とのささやきでしょう。この甘い言

葉に騙されずに金正恩と毅然と対峙できるのかどうか、結果いかんによっては、トランプ大統領の

評価も大逆転する可能性もあるのだから、興味津々です。

 

今回、ワシントン訪問に加えて、仏のパリへも足を伸ばしました。米国に加えてヨーロッパで何が

起こっているかも知りたかったからです。パリに行ってみて驚いたのは、仏がマクロン大統領の下

で大きな変貌を遂げていることでした。

 

仏のマクロン大統領がたった一年で成し遂げた改革の中身が凄い。住民税の段階的な撤廃、法人税

を33%から25%に引き下げ、テロ対策新法の制定、解雇訴訟に於ける補償額の上限設定、防衛

費の5割増額等々。米国議会での演説でも「自国第一主義に流され、繁栄を失ってはいけない。」

とトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」を堂々と批判。貿易、気候変動などで多国間主義を

訴え、世界のリーダーとしての存在感を高めつつあります。マクロン大統領の経済ブレーンの中核

とされるフィリップ・マルタン首相府経済分析会議(CAE)議長と意見交換しましたが、正統的な

経済理論に基づく現状分析や政策対応の適確さには舌を巻きました。仏侮るべからず。日・EUの

FTA締結は誠に時宣を得たものだったといえるでしょう。

 

マクロン大統領の特徴は、「演説と握手が長いこと。」だそうです。トランプ大統領と会ったとき

もしっかり手を握ってずっと離さないので、トランプ大統領の方がドギマギしたとのこと。以来、

トランプ大統領はマクロンびいきになったそうだから、握手も大きなコミュニケーションの武器と

いうことなのです。安倍総理も今度トランプ大統領と会ったときには、力一杯握ってずっと離さず

にいたらどうでしょうか。

 (パリ・ロダン美術館、「考える人」の像の前で)

パックス・アメリカーナの終焉を見据えて日本は、よほどしっかりと自国経済を建て直すことに注

力し、TPP11や日・EU間FTAなどの多角的経済連携を引っ張っていく役割が果たせるよう

にならなければなりません。また、もう一つの大国・中国との関係を早急に改善し、新たな国際秩

序作りに協調して取り組んでいく必要もあるでしょう。

 

(以上)