山本幸三地方創生探訪記録@静岡 (2017.7.21)

 

先月の21日は、静岡県の静岡市、磐田市を訪問してまいりました。一部抜粋し、本H

Pでご報告致します。

 

ー 静岡市 ー

・株式会社小柳津清一商店

(同社代表取締役小柳津正男様と営業部の伊藤知行様より取組について伺います。右奥のトロフィーの数にまず圧倒されます。)

株式会社小柳津清一商店は、「川根茶」、「本山茶」を中心とした緑茶の卸・販売、茶を原料とす

る食品製造・販売、菓子の製造・販売(お茶とお菓子とカフェの店「雅正庵」を運営)など、地場産

品の「茶」を使い、多様な事業を展開しています。

また、こちらは製茶工場として静岡はもちろん全国でもトップクラスの機械化率でを誇っていま

す。業界初の導入であった、「移動ラック式冷凍冷蔵庫」や摂氏マイナス30℃に耐えられる「特

殊仕様フォークリフト」、「マイクロウェーブ乾燥機」や「全自動袋詰機」など他に類を見ない程

の製茶関連最新設備が完備されています。

さて、そうした機械に頼るだけなのかといえばそうではありません。同社会長及び社長は、取得の

難しいお茶の審査技術有段者だそうで、長年の経験を通じて培った知識や技術、カンやコツまで

も、総動員して徹底した品質管理にあたっています。その結果、3年連続農林水産大臣賞や通商産

業大臣賞、経済産業大臣賞の他、国外では、毎年ベルギーで行われる国際的な食品品評会「モンド

セレクション」にて、緑茶商品では、世界初となる3年連続世界最高金賞を受賞するなど、数々の

栄誉に輝いています。

(最近では、ダイエット・美肌・アンチエイジングなど「美容・健康に良い緑茶」として推し進めています)

そして、同社は、静岡県拠点の内閣府プロフェッショナル人材事業を活用しており、同コーディネ

ーターのもと、各段階のコンサルティングや人材のマッチングを行っています。お話をお聞きした

ところ、やはりコーディネーターの知識やノウハウ、各方面へのパイプがまさにプロフェッショナ

ルだとのこと(静岡県の場合、元静岡銀行の銀行員の方で、地方シンクタンクで30年以上静岡県をフ

ィールドに地域経済の調査・研究を行ってきた、まさにプロ)で、コンサルティングも的確だといい

ます。同社がある時、利益を上げたいと思ったときに、「まずは売り込むための営業の人材が欲し

い」と相談をしたそうですが、様々ヒアリングや視察を行った結果、「営業よりも製造工程を見直

したほうが良い」とのアドバイスを貰い、実践した結果業績が改善したそうです。まさに、企業の

成長戦略を具現化していく実例でありました。また、上記写真の伊藤様も実は、プロフェッショナ

ル人材戦略拠点事業を利用して昨年入社したプロ人材であり、元々大手企業での営業経験など様々

な経歴がある中で静岡県へのIターンを希望し、即戦力として入社に至ったとの事です。

以上、同社はこのように同制度を活用していく中で、製造部門、営業部門含め、県外のメーカーな

どから4人を採用するなど、戦略的な経営を推進しています。

 

・興津螺旋株式会社

(同社柿澤宏一社長に工場内を案内して頂きました。)

興津螺旋株式会社は、ステンレスねじ業界で国内トップシェアを誇る総合ねじ部品メーカーです。

加工困難なチタン合金ねじの量産化に成功するなど、高い生産技術や品質管理能力、また、年間7

000種類以上のねじを製造するというニーズを具現化する対応力の高さから、顧客からの信頼も

高いといいます。そして、大量生産される部品の工程では一般的に不良品や異品混入防止のための

検査を行うそうですが、こちらでは「最初から不良品をつくらない」をモットーに、自主保全を徹

底することで「検査ありきの製造工程」から脱却し、不具合の芽を製造工程の中で摘み、結果的に

飛躍的に設備の寿命を延ばしています。なんと20年以上前の生産設備もこうした改善により、い

まだ第一線で活躍しているそうで、これらが品質向上やコストの削減にもつながっているようで

す。

(柿澤社長とともに、「ねじガール」からも職場環境や使いやすいロングレンチについてご説明頂きました)

加えて、同社では従業員の女性比率が50%となっており、製造現場で働く女性は「ねじガール」

と呼ばれ、ねじ業界に限らず、工場勤務のイメージを変える例として多方面から注目されていま

す。特に、産休取得の支援や短時間勤務などへの対応の他、重筋作業の軽減・危険回避のため電動

リフター等の導入、女性の力でもボルトを締められるロングレンチの利用など、女性が働きやすい

職場環境を追及されています。このほか、経験やカンなどいわゆる「職人しかできない」作業があ

ってはいけないと、難しい作業でも、上記のロングレンチにはじまるような技術革新等を行い作業

の一般化を行うなど生産性の向上につなげています。

また、こちらでも内閣府プロフェッショナル人材事業を活用しており、その状況についてもお話を

お伺いしました。

 

 

 

ー 磐田市 ー

・株式会社スマートアグリカルチャー磐田

(同社生産技術部長・野口雄理様(左)と代表取締役専務・伊藤勝敏様(右)よりご説明頂きます。)

株式会社スマートアグリカルチャー磐田は、ICT等の先端技術を農業分野に展開する富士通株式会

社、農業品の生産・販売を進めるオリックス株式会社、国内有数の遺伝資源を有する株式会社増田

採種場の3社が株主となり、農業を基点とした地方創生の実現に向け、私もこれまで、愛媛県の株

式会社 早和果樹園や宮崎県の有限会社新福青果などで見てまいりました「Akisai」システムなどIT

を駆使して生産を効率化する「スマートアグリカルチャー事業」を展開しています。

例えば、金融サービスなどを通じて全国に顧客ネットワークを築いているオリックスには、外食産

業や小売業などのニーズをじかに汲み取れる強みがあります。この強みは、顧客の需要に基づいた

計画的な生産を行うマーケットインの発想に役立てられるほか、小売店などを介して消費者が野菜

に求める機能性や独自性などが明確になり、その情報を活かして新しい品種の栽培に挑戦するとい

った効果も期待できます。

このことは農業における研究開発機能を担う種苗メーカーにもメリットがあります。日本の種苗メ

ーカーは世界屈指の品種開発力を持つといわれますが、市場との直接的な接点がほとんどなかった

ため、せっかく開発した新品種の多くが日の目を見ずに埋もれてしまっているのが現状です。しか

し、新事業が市場と生産者、種苗メーカーを媒介することで、課題を解消できる可能性が高まると

いうのです。共創の場がもたらすこうした利点は種苗メーカーの共感を生んでおり、既に複数社が

増田採種場の呼びかけに応える形で新事業のパートナーに名乗りを上げているそうです。

それぞれ、3社の専門性に加え、磐田市や農業生産者、流通・食品加工会社や学術機関、農業機

械・資材メーカーなど様々な業種・業態のパートナー企業の知見を融合させ、食・農全体のバリュ

ーチェーン(種苗・生産・加工・出荷・販売など)において、新たなビジネスモデルの共創をはか

り、まさに、農業の「六次産業化」強い農業づくりの実現を目指しています。

 

(Akisai農場の実証イメージ。)

同社は、センサーやネットワーク、クラウドといったデジタル・テクノロジーを最大限に活用する

新しい農業のスタイルを確立するべく、「Akisai」を導入しているわけですが、具体的には、年間

の日照量が全国平均より15%程度多く施設園芸に適した静岡県磐田市に、複数の大規模なビニー

ルハウスで構成する植物工場を建設し、ビニールハウス内に温度や湿度、二酸化炭素濃度、水耕栽

培の溶液濃度のセンサーを配備しています。そして、以上のセンサーで計測した各種データをネッ

トワーク経由で「Akisai」に蓄積していきます。ビニールハウス内の状況をリアルタイムに監視し

ながら、必要に応じて遠隔操作で窓の開閉や換気扇の稼動/停止、暖房の調整をするなど、野菜の生

育に最適な環境を維持するノウハウを蓄積していくのです。

将来的には、「Akisai」に蓄積した栽培実績データに基づいて、種苗の品種ごとに最適なセンサー

の設置方法や室内環境の制御方法をパッケージ化し、安定した品質・収量を実現する品種ライセン

ス事業の展開も視野に入れていくそうです。

現在、小規模事業者が大半を占め、農業従事者の高齢化の進行など構造的な問題がある中ですが、

このように農業をデータ化・見える化し、長年のカンや経験に頼らない若い農業の素人でも生産性

向上が期待できるようにしていくことで、法人化など将来的に週休二日で稼げる枠組みも可能にな

り、国際的に競争し打ち勝って、世界でも優れた農業国家になるのではないでしょうか。世界で

は、オランダが相当進んでいるようですが、それに負けないようなものをぜひつくってもらいたい

と思います。

 

 

 

以上。

 

 

 

(追記)

この8月、 農食健を総合した科学技術・産業において、産学官金・農商工連携のオープンイノベー

ションにより、新たな価値を創造する拠点・「AOI-PARC」が静岡県沼津市にオープンしていま

す。(Agri Open Innovation Practical and Applied Research Center)

静岡県は、先端農業の推進のため「世界の人々の健康寿命の延伸と幸せの増深」をスローガンに、

先端的な科学技術やものづくりの技術を農業分野に応用し、農産物の高品質化、高機能化、高収量

化、低コスト化の実現を目指す先端農業プロジェクト「AOI-Project(アオイプロジェクト)」を推

進しています。今後、こうした取組をさらに発展させ、本県農業全体における生産性の飛躍的な向

上につなげていく方針ですが、その拠点が今回の「AOI-PARC」になります。

同施設は、旧東海大開発工学部の地上5階地下1階建て校舎の1、2階を改修したもので、県農林

技術研究所、県と連携協定を結んだ慶応大、理化学研究所など計14事業者・機関※が入居してお

り、農業の生産性を飛躍的に高めるとともに、農業を基軸とした関連産業の活性化を目指していま

す。1階には次世代栽培研究ゾーンを設け、温度や湿度、CO2濃度などを部屋ごとに固定して植

物の生育状況を検証する「栽培ユニット」を4カ所設けるほか、植物に照射する光の量や温度、湿

度などを変えて30万通りの環境条件が設定できる、同施設オリジナルの「パラメーターフル制御

式栽培装置」など、最先端の実験設備を備えています。

2階にはレンタルゾーンにて、各入居企業による研究が行われ、レンタルオフィスや会議室も整備

されています。全体的なプロジェクト管理は4月に設立されたアグリオープンイノベーション機構

(AOI機構)が中心となって、オープンイノベーションとビジネス展開を支援していきます。

そして、この拠点を活用して民間事業者が自ら行う研究開発テーマを公募し、12件採択したので

すが、このスマートアグリカルチャー磐田から提案のあったテーマ「マーケットイン型の高機能作

物開発を通じた地域ブランドの創造」についても採択し、同社が9月から入居する予定との事で

す。このように拠点入居者を中心に産学官金の多様な参画を得て、革新的な栽培技術開発や品種開

発に取り組み、その成果を農産物生産のほか、食品や健康などの幅広い産業分野におけるビジネス

へつなげるなど、オープンイノベーションと「農・食・健」連携による新事業の創出を積極的に推

進していくといいます。こうした静岡県主導の拠点創出による知の集積は、新産業や新事業の創出

とともに、農業所得の向上や地域所得の向上にも期待ができそうです。

※他には、鈴与商事(株)、(株)アイエイアイ、(株)石井育種場、(株)スマートアグリカルチャー磐田、(株)イノベタス、富士フィルム(株)富士宮工場、富士山グリーンファーム(株)、東海大学、NECソリューションイノベータ(株)、(株)ファームシップと、錚々たる事業者・機関が入居します。