山本幸三地方創生探訪記録@東京、神奈川  (2017.7.7)

 

去る7月7日は、東京都の日野市、神奈川県は秦野市を訪問してまいりました。一部抜粋

し、本HPでご報告致します。

 

 

ー 秦野市 ー

・元湯陣屋

(旅館前で、4代目社長・女将と。元職、車のエンジニアとOLというお二人は異色の経歴です。)

元湯陣屋は、鶴巻温泉に位置する創業1918年の老舗旅館です。2009年のリーマンショック

後の売上低迷で倒産の危機に直面していた中で、4代目の現社長が引き継いだことをきっかけに、

現状の課題の「見える化」をはじめとして、経営改善方針を決定し、業績を数年間で急回復させ、

利益率も大幅に改善させています。

例えば、クラウドを活用した情報共有システム(陣屋コネクト)で全体・部門別売上、稼働率、人件

費等の経営情報や顧客情報を全従業員に「見える化」させています。いままで、売上を上げようと

しても、「顧客情報は女将の頭の中」、「営業情報は営業担当の手帳の中」、「パソコンを使える

人は一人だけ」など情報の共有ができておらず、経費を削減しようとしても、「毎月原価率が上下

する原価管理」、「パート比率が高く月末まで人件費が不明」、「予算が従業員に知らされず売り

上げ実績もブラックボックス」などという実態が現場にはあると、問題が見えてきたそうです。

 

そこで…旅館経営を支える基幹システムの導入が必要と判断し、

旅館業に特化したクラウド型基幹システム「陣屋コネクト」を独自開発したのです。例えば、「予

約・顧客台帳、料理台帳の電子化」「嗜好・行動パターンなど顧客情報」「勤怠管理・会計・経

理」「経営・マーケティング」等々を全て「陣屋コネクト」に集約しています。それは、従業員の

携帯するデバイスに対応しており、いつでもどこでも何度でも最新情報に触れることができ、現場

レベルでは「言った・言わない・聞いていない」というトラブルがなくなり、組織としての一体感

が出てくるほか、サービスにしても受け身から積極的かつ細やかなサービスができるようになった

といいます(居さんが背中の帯からタブレット端末を取り出す仕草は、初めての方は大変驚かれ

ると思います)。始めてばかりの頃は、現場では「使い方がわからない」などと反発はあったそうで

すが、その効果が表れてくると、皆さん一生懸命練習して慣れていったそうです。

また、これだけではなく、お風呂の温度や清掃頻度の最適化のため「見張り」を自動化するほか、

マイクによって従業員一人一人の声とそれをおこした文字がクラウド上に共有され、広い敷地を走

る必要がなくなったそうです。

こうした、「陣屋コネクト」による経営改革により、客単価を2009年の改革初期段階から3倍

にするなどして、売上は2010年から54%アップし、利益率もマイナスから、25%以上大幅

に改善しています。そして何よりこうした経営改革とともに、こちらでは、昨年度より週休3日制

度を導入しているのです(3年前から週休2日制度)。こうした従業員を大切にする「働き方改革」

をしながらも、この経営の大幅改善は素晴らしいものがあります。(もちろんその客単価を実現でき

る体制も素晴らしいのですが。) そして、懸念であった人件費もこの7年間で27%も削減できて

いるほか、離職率も33%から4%まで減らしています。(パート社員の数は、約80名ほど減らし

ている一方で、正社員は5名増やしています。)

こうした試みの結果、社員の平均年収も38%上昇し、ホテル旅館の全国平均も大きく上回る結果

になっています。

 

(忙しい厨房にも大きなスクリーンがあり、一瞥で情報が共有できます。)

 

さらに、こうした陣屋コネクトを含めた経営改革モデル「陣屋モデル」は、「日本の観光を元気に

する」ため、他施設にも提供されているといいます(現在、全国200施設以上)。

個人の利益だけではなく、業界の底上げにうってでる、こちらの取組は私がかねてより発信してお

ります、公益資本主義の考え方に近いものがあると感じます。

また、そのシステムだけの導入では、効果が単発になってしまうことから、「JINYA EXP

O」なる、備品や食材、料理人を含めた人材の「貸し借り」といった旅館・ホテル向けたすけあい

ネットワークサービスを全国に導入しています。

多くの旅館とつながってみて分かったのは、「単独の努力だけでは解決できない問題」が山積して

いることだったといいます。これにより、備品や労働力、食材の「貸し借り」という中で、特に経

営者や料理人の派遣によるコンサルティングによって、食材ロスを防ぎ、旬の食材を使用しメニュ

ーの改善が可能になったほか、人件費の削減や原価率の低下など素晴らしい結果をもたらしていま

す。中には、旅館同士で、お互いの特徴を前面に押し出し、その送迎も含めて顧客に「連泊プラ

ン」を提供しているなど出色の取組実績も出てきているようです。

陣屋グループのビジョンは、「旅館を憧れの職業に」というものだそうです。こうした取組は、全

国の旅館の経営改革、業界の底上げとともに、顧客の増加は、地方経済の活性化や質の良い雇用の

拡大につながる、まさに地方創生に資する画期的な取組であると感じます。

 

ー 東京都 ー

・ゆいま~る多摩平の森

 

また、東京都日野市では、株式会社コミュニティネットが運営する「ゆいま~る多摩平の森」※

視察し、築50年のUR(都市再生機構)の団地を改修して、地域に開かれた高齢者の住まいとして

見事に再生された様子を拝見いたしました。(※多摩平の森「住棟ルネッサンス事業」の一つで、下

図の右側黄色の部分です。)

 

こちらでは、築50年のエレベーターがない4階建ての住棟に、エレベーターと階段、廊下を新設

し、内外装、設備をリノベーションして、サービス付き高齢者向け住宅のほか、ケア施設とコミュ

ニティの場を提供しています。

(高橋代表取締役社長に施設内のお部屋を案内して頂きました。)

こちらでは、弱者や少数を切り捨て、提供者側の論理一方でつくられる大量生産大量消費システム

とは異なり、地域はもとより、地域の住まい手1人ひとりのニーズを重要視し、巻き込みながらま

ちづくりを実践されています。この「ゆいま~る多摩平の森」は、サ高住やコミュニティハウスで

すが、この団地内には多摩平の森「住棟ルネッサンス事業」として、ほかにもアクティブシニアや

子育てカップル向けに、農園付集合住宅「AURA237多摩平の森」、若い社会人や学生向けに

団地型シェアハウス「りえんと多摩平」が隣接しており(上図参照)、地域のコミュニティの拠点を

創造しています。中には、地域開放型の食堂も併設されており、こちらは、入居者のみならず、誰

でもが利用できるので人々の交流の場になっているようです。

24時間365日スタッフ常駐のもと地元協力医とも連携しており、自分のスタイルを守りな

がら元気なうちから入居をし、いざとなったら心身状態に応じた必要なサポートを受けることので

きる、「生涯現役のまち」がこちらにはあります。これまで、愛知視察などでも見てまいりまし

たが、まさに全世代型「ごちゃまぜ」のCCRCの素晴らしい好事例であります。

今回は、団地利活用型ですが、駅前再開発型や地方創生型などの多様なスタイルの開発があるよう

です。

 

併せて高橋社長と、既存の地域資源を活用した地域再生やまちづくりの取組等について、活

発な意見交換をすることができました。

今回は、地域コミュニティネットの遊休資産の活用事例を見させていただきましたが、こうしたプ

ロデュースの事例は、同社に限らず全国に多く存在しています。これまで、内閣府では「地方創生

に資する不動産流動化・証券化に関する意見交換会」というものを、民間有識者の方をお招きし開

催してまいりましたが、こうした事例をモデル化し、集約して発信していければ、全国的に波及

し、地方創生に資する効果が期待できるのではないでしょうか。私共も、こうした研究会を定例に

開催するなど、重ねて勉強していきたいと思います。

 

以上。