「アベノミクスを成功させる会」提言

消費税率再引き上げ等についての提言

2016年5月20日
「アベノミクスを成功させる会」

1. 現下の日本経済の最大の問題は、消費の低迷にある。消費は2014年4月の消費税率引上げ(5%→8%)で落ち込んで以来、一向に回復の兆しを見せず、2015年10‐12月期にはトレンドから底割れするという事態にまで陥った。消費の底割れが生じたのは、リーマン・ショック直後以来である。

GDPの6割を占める消費の低迷を受けて、実質GDP成長率も2015年10‐12月期に年率▲1.7%とマイナス成長に陥った。2016年1‐3月期には、これが年率+1.7%となったが、「うるう年効果」(プラス1.2%と推定されている。)を勘案すると回復力はまだまだ弱い。しかも、4-6月期には熊本地震の悪影響も顕在化することから、日本経済は依然厳しい状況にある。

こうした状況を放置していると、GDP(名目)600兆円どころか、デフレ経済への後退、アベノミクスの失敗にまで追い込まれてしまうことになりかねない。直ちに思い切った手立てを講ずる必要がある。その中心は、日銀の力強い金融緩和政策と相俟った政府による思い切った財政拡大策であろう。勿論、成長戦略も必要だが、基本的に成長戦略は供給能力拡大策であるので、需要不足でマイナス10兆円近くのGDPギャップが存在する下では、まず財政・金融による需要拡大策によってデフレ圧力を回避することが先決であろう。

2. その一方で、来年(2017年)4月には、消費税率の再引き上げ(8%→10%)が予定されている。現下の経済状況を考えれば、これを再延期すべきだという主張が出てくるのは当然であり、有力な選択肢であることは間違いない。

ただ、単純に延期を表明するだけで経済が好転する訳ではないことは、一昨年の延期決定から今日までの状況を見れば明らかである。恐らくその要因は、当初の引上げ(5%→8%)時の財政出動が十分でなかったこと、年金生活者や低所得者の実質所得が低下したこと、そして「いずれ消費税率は上がるのだから」という予想から消費が抑制された面があること等にあったと考えられる。また、単純延期する場合、前回延期の際に安倍総理が表明した「リーマン・ショックや大震災といった事態が生じない限り、必ず実施する。」との公約との関係が問題となる。更に、「アベノミクスは失敗した。」との野党の批判に上手く反論できるのかどうかも問われることになる。

今一番大事なことは、一日も早くデフレ完全脱却を果たし、GDP600兆円軌道に確実に乗せることである。このためには、各方面の不確実性を出来るだけ取り除き、不足している需要を一気に創出するような方策が必要だ。その意味で、消費税率についての不確実性が今後とも延々と続くのは、経済にとっても政治にとっても好ましいことではない。

3. そこで今回我々は、公約は守りつつ、しかも実質的には引上げ延期と同等になるような措置を含めた財政出動によって経済を必ず好転させるという責任を財政当局に背負ってもらうという選択肢を提案する。具体的には、次のような政策パッケージの提案である。

① 消費税率引上げ(8%→10%)は、予定通り2017年4月から実施し、当面10%で打ち止めと宣言。

② 今年度(2016年度)の補正で、デフレギャップ解消を目指した10兆円の景気対策と5~10兆円(被害状況に応じ)の熊本地震対策基金の創設。

③ 2017年度には10兆円、2018年度は7兆円を通常予算に追加して計上。その内訳は、消費税率引上げ分は全て還元するという意味での給付金等約4兆円強、残りは日本経済の将来の持続的成長、体質改善につながるような公共投資等。

④ 給付金等の基本的考え方は、年金生活者・低所得者・子育て世帯を中心に所得再分配政策としての給付。住宅と自動車の購入者に対しては2%分の還付。

⑤ 財源は、マイナス金利を活用する意味で原則国債発行による。

4. こうした政策の実現に当たって重要な役割を担うのが財務省である。財務省は、本来、予算査定や税制改正を通じて、健全財政を確保することは勿論、景気循環の平準化や、経済成長に資する施策の検討・実行が期待されている。しかしながら、昨今の財務省は、目先の歳出削減・増税に重きを置き過ぎて、マクロ経済の安定という大きな視点を見失なっている。2014年4月の消費税率引上げ時においても、3%引上げで7.5兆円分のネガティブなインパクトが経済に与えられる以上、大規模な経済対策が「真水」で必要であったにも拘らず、5.5兆円の経済対策に数兆円規模で復興予算を紛れこませ、対策の効果を骨抜きにしてしまった。結果、経済が予想以上に落ち込んでしまったのは衆知の事実である。

経済対策の策定は、様々な予算措置の積み上げとなるため、大まかな提案を政治の側で行うことが出来ても、そうした提案が実際に効果を発揮するようになるための詳細な制度設計は、予算策定のスペシャリストである財務省に任せざるを得ない。そこで、今回は、財務省の永年の悲願である「消費税率の引上げ」を認める以上、財務省としても責任を持って「早急なデフレ完全脱却の実現」、「持続的成長と経済体質の改善」、「GDP600兆円目標達成」を確実なものとすることにコミットしてもらう必要がある。そうでなければ、消費税の負担を最終的に負うことになる国民の理解は、到底得られないだろうからである。

(以上)