定点観測で言い当てた安倍首相の誕生(菅下清廣氏著作より引用)

『一生お金に困らない「未来予測」の技術 これから10年、経済はこう読む!』

菅下清廣氏著(PHPビジネス新書)108~112ページより引用

9784569820392

 

 

定点観測で言い当てた安倍首相の誕生

 

二〇一二年の春のことです。

その年の一二月に起こることになる民主党から自民党への政権交代は、誰でも予測できることでした。選挙を行えば、民主党が負けることは明白だったからです。

仮に解散が行われなくても、衆議院の任期は二〇一三年の八月までです。どんなに遅くても一年半後には総選挙が行われ、その場合は自民党が政権に復帰することは既定路線でした。

ここまでは、普通に教育を受け、普通に情報を集めている人であれば誰にでもわかることです。では、誰が新しい首相になるのか。

この時点では、安倍さんのアの字も出ていませんでした。

しかし、私は安倍さんが首相になることを察知していました。おそらく、八割以上の確率だと読んでいたのです。

その証拠に、徳間書店から「2014年までにお金持ちになりなさい」という本を二〇

一二年六月に刊行し、二〇一三年にはデフレの終わりが始まると、アベノミクスの到来を予測しました。

 

その根拠は、定点観測から生まれたものです。

自民党が野党時代、デフレ脱却の勉強会をやっていました。この勉強会の事務局長をやっていたのが、自民党の山本幸三という政治家です。彼は、アベノミクスの仕掛け人と呼ばれていますが、私とは長年の交遊があります。

山本代議士は旧大蔵省出身で、私の見る限り政治家の中では最も金融・経済に精通している人物です。ハーバード大学で講義をするほど、英語はもちろんのこと、金融・経済の専門知識を待った方です。大蔵省時代からお付き合いが始まり、今でも定期的に情報交換をさせていただいています。

二〇一二年の四月ごろ、とあるホテルのレストランでお会いしました。

いつも通りの情報交換でした。ひとしきり話が終わると、山本代議士はこう切り出しました。

「菅下さん、自民党が政権を取ったら、安倍さんが首相になりますよ」

当然のことですが、当時、安倍さんが首相になると宣言していたわけではありません。

 

九月に行われることになる、自民党の総裁選挙の情報もまだ出ていないころです。

山本代議士が内密に安倍さんから打ち明けられ、それを勝手に私に漏らしたわけでもありません。あくまでも、山本先生の予測の範囲のお話です。

「なぜそう思うのですか」

山本代議士は、私の疑問にこう答えました。

「安倍さんがわれわれの勉強会に参加し、デフレ脱却のためには異次元の金融緩和を絶対にやらないといけないとおっしゃったのです。それを聞いて確信しました。おそらく政権を取ったら、脱デフレの政策を打ち出すはずです」

 

これは貴重な情報です。マスコミも気づいていません。山本代議士の発言に信憑性があることは、今までの定点観測の結果、私にはわかっていました。

とはいっても、山本代議士の情報だけを妄信するわけにはいきません。そこで私は、定点観測を続けている100人の賢人のなかから、安倍さんに関係のありそうな人の言動をそれぞれチェックします。

ほかの政治家にも親しい知り合いがいますから、彼らにもそれとなく当たります。マスコミの政治担当記者にも知っている人がいるので、水面下で情報を集めます。

すると、当時の自民党では安倍さんが最有力というデータがどんどん入ってきて、裏付けが取れていきます。

やがて、安倍さんの対抗馬は石破さんで、安倍さんを応援しているグループのメンバーと石破さんを応援しているグループのメンバーをだいたい把握し、数のうえで安倍さんのほうが有利ということまでわかりました。

「安倍政権の誕生は、ほぼ確実だ……」

そう予測した私は、ほぼ100%の自信をもって、二〇一三年には株価が上がると読んだのです。注目している政治家の行動や発言は、定点観測で見ています。今の話で、安倍さんと石破さんの経済政策の違いがわかっていなければ話になりません。

経済政策にそれほど明るくない石破さんが首相になったら、デフレ脱却の政策に本腰を入れていたかどうかわかりません。防衛関連の政策が中心になり、ともすれば憲法改正の議論が中心になっていた可能性もあります。そうなると、株価が上がるという予測は立てられなくなるのです。

政治と経済は表裏一体なので、政界の動きも読めないと未来予測はできません。

日本の景気が良くなったり悪くなったり、株価が上がったり下がったりするのは、結局のところ国策が要因となるからです。

どのような政党があり、それぞれの政策の違いを理解する。どのような政治家が日本の政治の中心にいて、それぞれの政治家のスタンスの差異を理解する。

ほとんどの人はやっていないと思いますが、政界の動きを興味をもってウォッチする必要はあると思います。それを踏まえて、政界の動きを人より先に読むことができれば、今がチャンスなのかピンチなのかわかるはずです。

そのためにも、新聞は複数紙、読むべきです。

「この政治家は、役職が高いわりに政界でまったく影響力がない」

「この政治家はまだ中堅だけど、かなり影響力をもっている」

そうした内情は、毎日、新聞を三紙ほど読むだけでも必ずわかってきます。

わかってくると面白い。だから、情報収集を趣味にしてしまいましょう。