アベノミクス仕掛け人とハウステンボス再建社長の「観光立国」提言

2013年10月21日 月刊美楽11月号「美談百話」

日本経済再生のモデルの一つは、訪日観光客を倍増させること。政府は訪日外国人を2016年に1800万人、20年に2500万人に増やす目標を掲げている。今年上半期の実績は495万人(前年比23%増)。年間1000万人がようやく視野に入った状況だ。

今後、訪日観光客を増やすにはどんな政策、サービス拡充が必要なのか。アベノミクスの仕掛け人で、自民党観光立国調査会の山本幸三会長(衆議院議員)と、赤字続きだったハウステンボスを再建させた澤田秀雄ハウステンボス代表取締役社長(CEO)が都内のホテルで対談した。

 

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 外国人観光客が訪れる国のランキングがある。2012年のナンバー1はフランスで年間8300万人。2位が米国で6600万人。3位中国は5770万人。日本同様観光客誘致に力を入れている韓国は23位で1110万人。これに対して日本は835万人で33位となっている(世界観光機関のデータ)。日本はアジア全体でも8位にとどまっているのが現状である。富士山、京都、日光、北海道と世界有数の観光地を抱えながら、なぜ日本を訪れる観光客を増やすことができないのか。

 

山本 世界の観光需要を取り込み、訪日観光客を増やすことで経済の活性化や雇用促進につなげるため、党の観光立国調査会ではさまざまな提言を議論しています。まずは、何といっても観光関連の予算が少な過ぎます。外国人観光客の取り込みに力を入れている韓国の観光関連の年間予算は700億円。これに対して日本はわずか100億円。せめて5倍にしていかないと。あとビザの大幅緩和により、より日本に来やすくすることも必要。タイ、マレーシア、インドネシアのアジア3国に対しては取得免除になります。

 

 日本を訪れた外国人観光客へのサービス拡充も欠かせない。

 

山本 たとえばWIFIの拠点があまりにも少ない。銀座でも満足に使えない状況ですからね。外国人が使えるATM(キャッシング)やクレジットカードも拡充が必要です。いま、カードでキャッシングができるのは限られた銀行のATMだけで、不自由極まりない。WIFI、ATMいずれも海外の観光国に比べはるかに遅れています。

 

 民間レベルの誘致に向けた動きも始まった。深田氏はHISの会長でもあるが、HISはこの夏から積極的に外国人観光客の取り込みに動いている。

 

澤田 タイにチャーター便専門の航空会社「アジア アトランティック エアラインズ」を設立しました。この夏以降、毎日タイから日本ヘチャーター便を飛ばします。ビザ免除ということで、需要は確実に高まりますからね。

 

 観光客を受け入れるホテル業界のサービス対応も改善の余地がある。

 

澤田 世界的に増えているイスラム圏からの観先客への対応が急務ですね。関西の一部のホテルではイスラム対応を取り入れていますが、大半はまだまだです。食事の内容、コーランのための施設などただちに手を付けなければいけないでしょうね。

 

 旧大蔵省の官僚時代にホテル経営の世界的権威である米コーネル大に留学しMBAを取得した山本氏は、サービス業の哲学を今一度見直すべきだと言う。

 

山本 コーネル大で学んだのは。”サービスとは在庫の効かない財を売るんだ“という考え方です。たとえば食事は、いくら内容、昧が素晴らしくても提供すべき時から30分以上遅れたら意味、価値がない。許容範囲のタイミングがある。それが本質だというわけです。

もうひとつ、分かりやすい話をしますとレストランの食事の写真がある。日本のホテルは食事がいかにおいしそうかを強調する。でも、それだけではダメ。お客がどういう服装、雰囲気で楽しんでいるかを写して伝えなくては。お客はそこが気になるんですよ。

世界に通用するホテルマンを育成し、サービスを点火していくためには、日本にも観光学部をきちんと備えた大学が必要でしょうね。

 

 このほか2人の間では日本ブランドの発信の仕方、女性を活用した対外PRの必要性、外国クルーズ船の日本寄港促進と入管手続き簡素化など、外国人旅行者に向けた魅力発信と、訪れる観光客の利便性向上の提言が数多く語られた。

 

(対談は5月下旬都内のホテルで行われました)