日本銀行 通貨及び金融の調節に関する報告について(2011.7.13) 財務金融委員会 質問議事録

財務金融委員会 質問議事録
(平成23年7月13日 午後の部)

答弁者:財務大臣・日本銀行(白川方明総裁)
日本銀行 通貨及び金融の調節に関する報告について


白川参考人  日本銀行は、毎年六月と十二月に、通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。最近では、本年六月十日に、平成二十二年度下期の報告書を提出いたしました。今回、日本経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚くお礼を申し上げます。

最初に、我が国の経済金融情勢について御説明申し上げます。

我が国の経済は、三月十一日に発生した東日本大震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態に陥りました。震災の影響で、広範囲にわたる地域において生産設備が毀損されたほか、被災地の工場で生産されていた部品や素材の供給に制約が生じたことなどから、サプライチェーンにも障害が生じました。さらに、発電設備が大きく毀損されたことに伴って、電力供給面での制約も生じました。これらの供給面の制約などから、生産活動が大きく落ち込み、輸出も減少しました。また、企業や家計のマインド悪化もあって、民間需要にも相応の影響が及びました。

震災発生後四カ月を経て、現在、我が国の経済は、震災の影響による供給面の制約が次第に和らぐ中で、持ち直しています。生産活動は、サプライチェーンが当初の見通しを上回るペースで着実に修復されてきていることなどから、このところ持ち直しの動きが明確になっています。電力問題も、この夏場については、電力会社の供給能力の増強に加え、企業及び家計における節電や需要平準化の工夫などによって、当初懸念されていたほどには、経済活動の大きな制約とはなっていないと見られます。輸出は、生産活動の持ち直しを受けて、増加に転じています。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつあります。

日本銀行が今月初に公表しました六月短観の結果を見ますと、企業の業況判断は、震災の影響がほとんど織り込まれていなかったと見られる三月調査対比では悪化しましたが、先行きについては、製造業を中心に、多くの企業が改善を見込んでいます。また、設備投資計画を見ましても、製造業を中心に三月調査対比で上方修正されるなど、しっかりとしたものとなっており、民間企業の設備投資が持ち直しつつあることが示されています。

先行きの我が国経済については、供給面での制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれて、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、復興需要の顕現化などから、本年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。

金融環境を見ますと、コールレートが極めて低い水準で推移する中で、企業の資金調達コストは低水準で推移しています。企業から見た金融機関の貸し出し態度は、引き続き改善傾向にあります。CP市場では、良好な発行環境が続いています。社債市場では、電力会社が発行する社債については、発行条件をめぐり、発行体と投資家の目線がそろいにくい状況が続いていますが、全体として見ますと、良好な発行環境となっており、発行体のすそ野にも広がりが見られています。こうした中、企業の資金繰りについては、中小企業を中心に一部で資金繰りが厳しいとする先が見られていますが、総じて見れば、改善した状態にあります。

物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、四月に、二〇〇八年十二月以来二年四カ月ぶりにプラスになった後、五月も、四月と同様、プラス〇・六%となっています。先行きも、消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移すると見ています。ただし、本年八月には消費者物価指数の基準改定が予定されており、前年比のプラス幅が下方に改定される可能性が高いことも認識しています。

以上を踏まえますと、日本経済は、やや長い目で見ますと、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられます。

続いて、以上の見通しをめぐるリスク要因について御説明します。

景気については、サプライチェーンに関する懸念は和らいでいますが、震災が家計マインド等を通じて及ぼす影響には、なお注意する必要があります。また、この夏を越えて、やや長い目で見た電力の供給制約については、不確実性が幾分増していると考えられます。海外経済をめぐるリスクに関しては、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要です。新興国、資源国については、金融引き締めが続けられているにもかかわらず、高成長が続く中、インフレ圧力は鎮静化していません。このため、物価安定と成長が両立する形で経済がソフトランディングできるかどうか、不確実性が大きいと考えています。

物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、我が国の物価が上振れる可能性があります。一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもあると見ています。

最後に、日本銀行の金融政策運営について御説明申し上げます。

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という三つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けています。

強力な金融緩和の推進という点では、まず、オーバーナイト物の金利を、ゼロから〇・一%程度という実質的にゼロの水準にしています。その上で、この実質的なゼロ金利政策を、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで継続することを約束しています。また、短期金利の低下余地が限界的となっている状況の中で、金融緩和を一段と強力に推進するために、長目の市場金利の低下や各種リスクプレミアムの縮小を促す措置を講じています。具体的には、資産買い入れ等の基金という新しい枠組みをつくり、その基金を通じて、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーションと多様な金融資産の買い入れを行うというものです。この買い入れの対象としては、長期国債、国庫短期証券のほか、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J―REIT)といったリスク性資産も含んでいます。震災直後には、不安心理の広がりやリスク回避姿勢の強まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止するため、基金を通じた金融資産の買い入れを、リスク性資産を中心に増額しました。この結果、当初三十五兆円程度の規模で開始した資産買い入れ等の基金は四十兆円程度まで拡大しています。

こうした強力な金融緩和の推進に加え、日本銀行は、日本経済の成長基盤強化を支援するための資金供給を実施しています。

日本経済は、震災前から、成長力の趨勢的な低下という課題に直面していました。こうした成長力の低下は、長期にわたる経済の需要不足をもたらし、デフレの根源的な要因にもなっています。今回の震災を経て、この成長力の引き上げという問題は一段と重要性を増しています。

以上のような認識に基づいて、日本銀行は、日本経済の成長基盤の強化に資する融資や投資を実施した金融機関に対し、国債等の担保を裏づけとして、最長四年間、極めて低い金利で資金を供給しています。さらに、先月の金融政策決定会合では、本資金供給について、新たに貸付枠を設定することにしました。新たな貸付枠では、金融機関による出資等の資本性を有する投融資や、在庫や機械などの動産、あるいは売り掛け債権などの債権を担保に行う融資、いわゆるABLなど、従来型の不動産担保や人的保証に依存しない融資などの取り組みを対象としています。これにより、金融機関が金融面の手法を一段と広げ、我が国経済の成長基盤の強化に向けてさらに活発に取り組むことを期待しています。

以上に加え、震災発生後、日本銀行は、我が国の金融機能の維持と資金決済の円滑を確保するため、民間金融機関とも協力しながら、被災地への現金供給や日銀ネットを初めとする主要な決済システムの安定的な稼働の維持に努めました。また、金融市場の安定化を確保するため、連日、市場の需要を満たす大量の資金を供給しました。さらに、四月には、被災地の金融機関を対象として、復旧復興に向けた資金需要への初期対応を支援するため、期間一年の資金を〇・一%の低利で供給するオペレーションを総額一兆円の規模で導入しました。同時に、被災地金融機関の資金調達余力を確保する観点から、被災地の金融機関が日本銀行から資金調達する際に差し入れる担保の要件を緩和するという措置も実施しています。

日本銀行としましては、今後とも、震災の影響を初め、先行きの経済、物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には適切な措置を講じていく方針です。

ありがとうございました。

山本(幸)委員  自由民主党の山本幸三でございます。

午前中も審議委員に質問させてもらいまして、午後はいよいよ総裁においでいただいて、質問させていただきます。

私は、総裁のいろいろ講演したものとか記者会見の資料をずっと読んでいるんですが、一番気になるのは、過去、GDPデフレーターでいえば十六年、CPIでいえば十三年、デフレが続いている。そして、その結果、日本の名目成長率は全く伸びていない、九二年と同レベルである。そういう状況をずっと続けてきて、そして今回、大震災という大ショック、デフレショックでしょう、そういうものも起こった。

そういう状況にあるにもかかわらず、一貫して総裁が講演とか記者会見で述べていることは、自分たちは全部やっているんだ、しようがないと。デフレがこれだけ続いて、しかし、成長率がどんどん落ちるというデフレスパイラルになっていないからいいじゃないかと。やることはみんなやっているんだというトーンで一貫しているわけですね。

これは私は非常に問題があると思っていまして、総裁は一体、過去十五、六年間のデフレを全く解消できない。僕はデフレの解消というのは日本銀行しかできないと思っていますよ。それについて、そのことがもたらす悪影響、失業者がどんどんふえた、倒産する人もふえた。泣いている人がたくさんいますよ。そういう人たちに対する申しわけないという気持ちが全く感じられない。そのことについて、総裁はどういうふうに考えますか。

白川参考人  お答えいたします。

私は二〇〇八年の四月に総裁の職を拝命いたしましたけれども、それ以来一貫して肝に銘じていますことは、日本銀行法の使命達成のために全力を挙げるというこの一点でございます。日本銀行の使命は、物価安定のもとでの経済の持続的な成長を図っていくということでございます。そのために日本銀行としてできることを最大限行っていくという姿勢で参りました。

日本経済の現状、過去十五、六年の経済の姿でありますけれども、残念ながら、デフレから脱却をできるという状況にはなっておりません。こうした状況について、日本銀行としてしっかり取り組んでいく必要がある、そういう認識は、これは山本議員の認識と全く同じでございます。

私の記者会見あるいは講演原稿をお読みになってお感じになった感想ということで、今お話をお伺いいたしましたけれども、私が申し上げていることは、日本銀行として最大限の努力を行っていきます、これからも行っていきますということであります。同時に、日本のデフレという問題の本質を考えていきますと、日本の成長力をしっかり上げていくというこの取り組みがないと、日本銀行の力だけでは解決をしないということでありまして、決して日本銀行の行うべきことについて認識がないということではございません。

日本銀行の努力と、それから民間の努力と政府の努力、これが相まって日本経済が持続的な成長軌道に復帰していく、そういう過程の中でデフレも脱却をしていくということだというふうに認識しています。

山本(幸)委員  その認識が非常におかしいんですね。つまり、あなたはデフレの責任は自分にはないんだと。私は、この十五年間のデフレを白川デフレと言いますよ。あなたは常に日本銀行の政策の中枢にいたんだからね。まあ、いろいろありましたよ、お互いによく知っているけれども。

それで、デフレは、あなたの理屈でいえば、成長力が落ちたからだと言い張って、自分たちの責任じゃないというんだね。本当にそうかね。成長力が落ちて、どうしてデフレになるのか。

白川参考人  人々が消費あるいは投資を行うというときには、これは、その時点での経済情勢ではなくて、少し長い先の経済を見て消費や投資の計画を立てていくということだと思います。

日本の経済が少し長い目で見ても十分に成長力を取り戻していかない、したがって、所得が十分にはやはりふえていかないということになりますと、これはどうしても需要が抑制されてきます。その時点の供給力に対してそうした低下した需要がぶつかってくることになりますから、当然、物価に対して下押し圧力がかかってくるということになります。その意味で、供給力を強化し、最終的に所得が今後ふえていくという力強い期待が生まれてきますと、その分需要もふえてくるということであります。

このことは、金融政策の役割を否定するわけでは全くございません。日本銀行としては、需要がしっかり満たされていく、そうした環境をつくっていく、そうした責任があるというふうに考えています。

したがいまして、先ほど、冒頭の説明でも申し上げましたけれども、日本銀行は包括的な金融緩和の枠組みの中で金融緩和を行っていますし、それから、成長基盤の強化という点では、日本銀行だけでできることは限られていますけれども、日本銀行の持てる手段を使って何とかこの面でも貢献していきたいというふうに考えております。

したがいまして、日本銀行の責任ということを十分に認識して、日本銀行のできることについては、これは今後とも最大限努力をしていきたいと思っています。

山本(幸)委員  将来、少し長い先を見て、それで、投資をするか消費するか。それはそうでしょう。だけれども、それは何で決まるんだと。それは、私は、デフレ期待があるときにはそんなものはあり得ない。デフレ期待があるときにだれが買いますか。もっと待った方が安くなるんだから買いませんよ。デフレ期待があるときにだれが投資するんですか。つくったって安くしか売れないんだったら投資しませんよ。

最大の問題は、デフレ期待を放置しているからですよ。成長力の期待がある、何だ、それは。具体的に定義できますか。それから、成長力が上がった、潜在成長力を上げれば供給がふえるんだから、むしろそれはデフレ要因ですよ。経済理論的にはそうじゃないですか。

白川参考人  まず、デフレ期待あるいはその逆のインフレ期待も含めまして、人々が将来を予想していろいろな経済決定をしていく、経済的な意思を決めていくというときには、これは少し長い目で見た予想インフレ率、予想物価上昇率であります。この点に関しまして、エコノミスト等のたくさんのアンケート結果というのがございますけれども、長い目で、例えば五年というタームで見て、今デフレ期待が定着をしているということではなくて、さまざまなアンケート調査を見ますと、大体これは今一%程度ということでございます。

したがって、今デフレ期待が定着をしているというふうにおっしゃいましたけれども、必ずしもエコノミスト等の予測はそういうふうには現在なっていないということでございます。

そのことを申し上げた上で、供給力の話でございますけれども、現時点での需要と供給のバランスだけを考えて、供給がふえた場合に物価が下がるという点については、今議員御指摘のとおりであります。

私が申し上げましたのは、現在のこの供給力に対し将来所得が十分にふえていかないという期待が形成されますと、その段階で将来の期待が低下し、所得期待が低下し、需要が低下をするということであります。その結果、需要、供給のバランスからして物価が下がってくるということであって、これは私自身のユニークな議論ということではなくて、ごく普通に経済学でも議論されている議論でございます。

山本(幸)委員  いや、納得できない。

まず、エコノミストたちが期待を言っているのを見ると、中長期的にはプラスのインフレ期待になっていると。今や物価連動債というのがありますからわかるんですよ、市場の連中がどう予想インフレ率を見ているか。震災前はマイナス〇・三ですよ。震災後は少し上がってきたけれども、それでもマイナス〇・一ですよ、三年後が。マイナスですよ。デフレ期待がまだ定着しているんだ。それで将来の投資や消費がふえますか。ふえるわけがない。それが一つ。

それから、あなたの言っている所得期待がふえる、それはどういうことなんだ。所得期待がふえるというのは、それは僕に言わせれば、デフレ期待が解消して緩やかなインフレ期待になったときにはあり得るかもしれぬよ。そういうことじゃないんですか。

白川参考人  まず、物価連動国債の方からお答えいたしますけれども、議員御存じのとおり、物価連動国債については発行額がもともと非常に少ない上に、新規の発行額が減ってきていまして、市場自体の流動性が極端に低下をしております。したがって、物価連動債からいろいろな情報を読み取ることが非常に難しくなっているという状況でございます。

私が先ほど申し上げました数字は、この予想数字が正しいかどうか、これは五年後になってみないともちろんわからない数字でありますけれども、いろいろな客観的な機関が出しているエコノミストの予測の数字を集計したものでございます。エコノミストがそういうふうな予測を出しているからといって、安心していいわけではもちろんございません。我々としては、デフレ期待が定着しないようにしっかりと政策運営を行っていきたいと思っています。

それから、将来の所得の期待、長い目で見ますと、これは、釈迦に説法でございますけれども、所得というのは最終的に生産と裏腹の関係でございます。

したがって、経済が十分な生産能力を持つ、供給能力を持つ、そういう中で所得もふえていくということで、これは、多少分解していきますと、労働人口の伸びとそれから一人当たりの労働の生産性の伸びというものに規定されてまいります。経済の実力が上がって生産能力も上がっていく、したがって所得もふえていくという期待は、そういう形で実は裏腹の関係にあるというふうに思っております。

山本(幸)委員  物価連動債、だって、今や客観的に見られるのはそれしかないんだから。あとは人の単なる予想だけじゃないですか。物価連動債から見ればマイナスですよ。それは確かに、ずっとデフレは続いているから、今マーケットは小さくなっているんだ。だけれども、それは、おたくらがそういうことを続けているからだよ。

それから、所得環境云々と、あなたは潜在成長率を上げることを言っていますね。潜在成長率が上がれば供給はふえるんだから、デフレ要因でしょうが。違いますか。

白川参考人  先ほど来申し上げていますとおり、経済の実力が上がり、先々、供給能力がふえてくる、所得がふえてくるという期待が生まれてまいりますと、これは需要もふえてまいります。

それから、先ほどの潜在成長力という中でもう一つ申し上げた方がいいことは、その中身を分解していった場合に、これは、現在の急速な高齢化の問題ということがございます。高齢化の進むもとで、財政のバランスも、これは全体に悪化する方向にございます。

若い世代あるいは現役世代からしますと、これは、所得の中でみずからの支出に充てる部分が相対的に少なくなってくる。今のままの仕組みでいきますと、だんだんに、若い世代、現役世代の支出がなかなかふえにくい環境になってまいります。

そういう意味で、日本の潜在成長率の低下の背後にある要因を考えてみますと、そのことは需要の減少要因として働いているということでございます。

私は決して、供給力の低下、例えば労働人口の減少によるデフレ圧力は、これは政策的に対応できないということを言っているわけではございません。

例えば、高齢者がふえ、若い人が、労働人口が減る場合でも、しかし高齢者の需要自体はふえてくるわけでございます。医療にしても介護にしても、さまざまな需要がふえてまいります。そうしたふえていく潜在的な需要をうまく現実の需要に取り込んでいく、そうした努力をしていけば、これは、一人当たりのGDPの伸び、つまり生産性の伸びにも反映されてまいります。

そうした努力を重ねていくことによって、供給力もふえ、需要もふえ、物価はその中で少しずつ上がっていくというバランスになっていくというふうに思います。

山本(幸)委員  全然説得力がないと思うんですね。

潜在成長率が上がれば供給はふえますよ。そのときに、どうして自動的に需要がふえるんだ。需要がふえるためには、デフレ期待がインフレ期待に変わらなきゃふえませんよ。それがポイントなんだ。

世の中の、世界じゅうの中央銀行で、デフレが中央銀行の責任じゃないなんて言ったのは、あなたしかいませんよ。ほかの中央銀行の総裁は、物価についてはインフレもデフレも中央銀行でコントロールできると言っていますよ。

つまり、あなたの書いていることとか言っていることは、自分の自己弁護ばかりやっているんだ。それに役立つようなデータばかりを使って、極めてふまじめだと私は思っているんだ。

一つ例を言いましょう。これは五月二十八日の日本金融学会の講演で、いろいろなことを言っているんだが、勝手なことをよく言っていますよ。

その中で、とんでもないと私は思っているのが、「過去二十年間の日本のデータをみると、歳入の増減率と物価上昇率の間にはほとんど有意な関係は観察されません。」そして、「歳入が増加しているのは実質成長率が高まっている時です。」ということを言って、それで、データで、GDPデフレーターと歳入の関係では横にフラットだ、しかし、実質成長率を見ると歳入は少しプラスになっているというグラフを出して、いかにももっともらしく言っているんですね。

私は、こういう分析を見ていて、あなたは本当に京都大学の経済学の先生をしていたのかと思うんですよ。これは素人経済学的なアプローチじゃないですか。何か二つを並べて、関係ないと言えればそれでいいやと。大体、歳入という名目の数値と実質成長率という数値を比べることにどんな意味があるんだ。

本来の経済学の理論というのは、そんな帰納的な、幾つかの類推的なものから結論を導くんじゃなくて、あなたは経済学者だったら、そんなものじゃ経済理論というのは説明できない。経済理論というのは、仮定と演繹的な論理構成があって、そして説明できるという演繹的なアプローチをしなきゃ、経済理論にならないんじゃないですか。つまり、経済モデルとしては、名目の歳入というのは名目成長率、名目GDPに一番関係するというのが本来の理論でしょう。

あなたはこんなことを言っている。だって、こんなことをGDPデフレーターと比べたって、どこで税制改正をやって、どこで成長率と一緒に絡んでいるかわからないじゃない。

それに比べて、もっとはっきり、私がその反証を示してあります。私の配った表の、これはちょっとページを打つのを忘れちゃったので申しわけないんだけれども、グラフとしては二つ目。このグラフを見れば一目瞭然なんですよ、増税とか減税したときも含めて。

デフレで名目GDPが減ると、増税したって税収はふえないんですよ。逆に、減税しても、名目GDPがふえれば税収は上がるんですよ。これが基本的な経済理論に基づく演繹的な議論の仕方でしょう。

あなたが言っているような、物価と税収が関係ないとか、実質成長率だけが意味があるんだ、そんなばかな話はありませんよ。どう思いますか。

白川参考人  私の、講演も含めて幾つかの場で、今議員がおっしゃった物価あるいは実質成長率とそれから歳入の関係について考えを申し述べております。

私がそういう場で繰り返し申し上げていることは、名目の成長率が高まる場合に歳入がふえるということはそのとおりでございますけれども、名目GDPというのは、分解しますと実質成長率とそれから物価の上昇率でございます。それで、どちらが上がったときに税収の増加につながっているのかということを考えてみたいということであります。

理屈の上でいきますと、名目GDPがふえますと税収がふえるわけですけれども、物価それから実質成長率について分けて考えてみるということは、これはこれで一つの作業の出発点としては意味のあることかなというふうに思います。

先生のお配りになられましたこのグラフも、名目GDPとそれから税収の関係を見ておりますけれども、しかし、これも経済のさまざまな変数の中の二つの関係を見たということで、実際にはこの間にいろいろな変化がもちろん起きております。したがいまして、完全にすべての変数を考慮した分析というのがもちろん望ましいわけですけれども、これは先生の分析も私の分析もそういう面ではもちろん限定はございます。

ただ、その上で、私の場合は、これは過去二十年間のデータを見たわけでございますけれども、過去二十年間を見てみますと、物価上昇率とそれから名目の歳入の伸びの間には実は余り関係がなかったということでございます。もちろん、この間にはいろいろな制度変更がありましたから、これは、いつもないというふうに言っているわけではございません。過去はどうであったかということであります。

一方、実質成長率が上がってくる、つまり経済の力が本当に上がってくるときには、このときには税収が上がっているという関係が過去にはありましたということであります。

しかし、私が申し上げたかったことは、名目の歳入もさることながら、一方で、名目GDPがふえるときには、これは歳出もふえてまいります。したがって、歳出歳入のバランスであります財政バランスというものは名目GDPとどういう関係にあるんだろうか、あるいは、その中で物価あるいは実質GDPとどういう関係があるんだろうかということで分析を行ったものであります。

もちろん、これは完全な分析ではございませんし、さらに、先生御指摘の点も含めて、詳細な分析を今後ともしてまいりたいと思っています。

山本(幸)委員  要するに、あなたは、とにかく日銀には責任はないと言いたいから、実質GDPさえ上げるような成長戦略だけやっていればデフレはなくなるんだと言いたいから、こういうことをねじ曲げてつくるわけですよ。おかしいんだ。理論的に、名目の歳入と実質成長率を比べて何の意味があるんだ。それはいろいろ、経済はほかにもありますよと言ったら、じゃ、その次の、この裏のページを見てください。

いろいろあるけれども、統計的に有意なというのは、もう結論が出ているんだ。名目GDPが一%ふえると、歳入、これは国と地方と社会保障基金すべて合わせると一・四%ふえる、九七年から二〇一〇年にかけての数字で見ると。そして、回帰分析すればこういう結論が出る。国税については物すごく大きいですよ。国税については、名目GDPが一%ふえると三・六八%ふえるんだ。これが大事なんだ。

だから、私は、何か自分の保身で、自分たちには責任はないなんというような言いわけをするんじゃなくて、素直に、名目GDPを上げるようなことをやることが大事だということを認識すべきだと。それはデフレの脱却ですよ。そして緩やかな物価上昇。私は、コアCPIで二、三%ぐらいが世界の常識だと思っているんだけれども、それぐらいに持っていくという政策を、日本銀行しかできないんだから、これは。

日本銀行で潜在成長率なんて上げられませんよ。それは政府の仕事だ。日本銀行は、通貨の供給量を調節しながら、あるいは通貨の出し方を工夫しながら、デフレ期待をインフレ期待に変えていく、そしてそのことによって実際に安定的な物価上昇に持っていくということが大事で、その結果、名目GDPがふえていくんですよ。

ところが、あなたは、GDPデフレーターは関係ないから、成長率を上げない限りデフレは解消できませんよと言いたいがために、こんなことばかりやっているんだよ。

そんな言いわけをするんじゃなくて、早くデフレを脱却すると。あなたは、理事のときからずっと考えると、もう既に脱却していないとおかしいんだよ、今まで言ってきたことをずっと見ていたら。

ところが、市場は、白川デフレと、日銀はデフレターゲットでやっていると認識しているんですよ。そういう意味でのデフレについての日銀の信認はある。

名目成長率を上げるということで物価を上げるということを何で早くやらないんですか。

白川参考人  たくさんの御指摘をいただきました。

まず、データでありますけれども、私どもにとってデータというのは、これは命でございます。したがって、データについては、いろいろなデータを虚心坦懐に見ております。したがって、あるデータだけを都合よく見ていくということじゃなくて、さまざまなデータを使って分析をしていきたいということで、決して、都合よくデータを使うということは、こういう事実は全くございません。

それから、名目GDPとそれから歳入の間に関係があるということを私は別に否定しているわけではございません。これは先生のグラフにあるとおり、名目GDPと歳入の間には関係がございます。

ただ、名目GDPというふうに言いますと、例えば、実質の成長率が増加しなくても、物価上昇率だけがどんどん上がっていく。例えば、二%、五%、一〇%あるいは二〇%上がっていっても、その場合でも、あるいはそうではなくて、物価上昇率は上がらないけれども、実質成長率だけが上がっていくケースと、これは全く同じように歳入がふえていくんだろうか、そのあたりの関係はどういうふうになっているんだろうかというのが私の問題意識の出発点でございます。

したがって、決して、名目GDPと歳入の伸びについて私は否定しているわけでは、これはもとよりございません。

それから、日本銀行のデフレ脱却に対する構えでございますけれども、冒頭も申し上げましたけれども、日本銀行にとって、できるだけ早くデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが、これは極めて大事であるというふうに思っております。

そうした思いは、これは私だけではなくて、日本銀行の政策委員会のメンバー九人全体の合議で決めております。先ほど、私の名前を冠したお話がございましたけれども、私一人が決めているわけではございません。これは九人で、知恵を集めながら、責任を持って、できるだけ早くデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰したいというふうに思っております。

そのための政策手段について、先ほどは簡単に申し上げましたけれども、金融市場に対して潤沢に資金を供給しております。この席でも何度となく先生に対して御説明をいたしましたけれども、日本銀行は潤沢に資金供給を行っております。

それから、資産買い入れの基金を設けて、今行っておりますけれども、例えばリスク性の資産、CP、社債、REITそれからETFを買う形で、現在、積極的な金融緩和政策を行っている中央銀行は、これは日本銀行だけでございます。中央銀行としては異例でございますけれども、しかし、こうした異例な政策を使っても、我々の目的を実現したいということでございます。

それから、現在、実質的なゼロ金利政策を継続しておりますけれども、この継続する時期についても、物価安定が展望できるというふうに判断される時期までこの政策を続けるということを既に約束しております。中央銀行が将来の政策をあらかじめ、みずからの手を縛って約束するというのは、これはかなり異例のことでございますけれども、これも、そうした政策を物価安定が展望できる時期まで続けるということを示しています。日本銀行は、みずからの責任、みずからの日本銀行に定められた目的、これを決して放てきしているわけではなくて、責任を持ってこの問題に取り組んでおります。

そう申し上げた上で、しかし、この日本経済が直面している問題に取り組むために、これは、みんなが力を合わせていく必要があるということも、責任ある中央銀行としてやはり申し上げる必要があるということで、先ほど来のことも申し上げております。

山本(幸)委員  何が潤沢な資金の供給なんですか。結果が出なきゃ、潤沢でも何でもありませんよ。だって、これはリーマン・ショック以降のほかの中央銀行と比べればすぐわかるわけですよ。ほとんど何もしていないんだ。だから円高になっているんだよ。それを潤沢にやっているなんという、言い逃ればかり言っているんですよ。結果が出なきゃ、潤沢でも何でもない。

そこで、もうちょっと聞きます。

あなたは同じ講演の中で、金融政策の話はするんですが、中央銀行のバランスシートの拡大の話があって、「量が拡大しても物価上昇率が上がる訳ではありません。実際、日本でも米国でも中央銀行当座預金やマネタリーベースが著しく増加しても、物価上昇率は上がっていません。」と言って、図表を示していますね。そんなことがあるんですか。

白川参考人  中央銀行が発行します通貨、これは、銀行券とそれから中央銀行に民間銀行が預けています当座預金でございます。この二つを合わせて、よくマネタリーベースという言葉が使われますけれども、このマネタリーベースというものの増減率とそれから物価の上昇率の関係を見てみますと、これは少なくとも、日本の物価がマイナスになった一九九七年以降、あるいは、今回アメリカでリーマン・ショックが起きて、FRBがバランスシートを拡張させた時期、こうした時期について、マネタリーベースの伸び率とそれから物価上昇率の関係を見てみますと、先ほど議員が御指摘の講演のとおり、両者の間には関係が見られていないということであります。これは、関係が見られていないとしても、将来さらにふやせばどうなのかという議論、これはもちろん、議論としてはあり得ると思います。

この中央銀行の出す量とそれから物価の関係でありますけれども、バーナンキ議長、FRBはどうなのか、海外の中央銀行はどうなのかという意味での御質問だと思いましたので、お答えいたしますけれども、中央銀行のバランスシート、あるいは量とそれから金融政策の刺激度を結びつける考え方は、バーナンキ議長自身、繰り返し、これは適切ではないというふうに言っております。

私は、中央銀行の通貨と物価上昇率がいつも無関係だということをもちろん言っているわけではございません。これはもちろん、両者には関係がございます。

現在のように、アメリカもそうですし、日本もそうですけれども、金利がゼロのもとで中央銀行が幾ら通貨を出しても、これは、一方で通貨を保有することに伴うコストも、これはゼロに近いわけですから、同時に通貨の需要もふえる。したがって、通貨の供給もふえるけれども通貨の需要もふえるということで、ゼロ金利の環境のもとで、これだけでなかなか物価は上がりにくいということになっております。

この点、例えば、非常にインフレのときに通貨量を絞っていくと、これは、いや応なしに人々が支出ができなくなりますから、当然、物価上昇率は下がってまいります。したがって、インフレ期に中央銀行が通貨の供給量を絞れば、これはもちろん物価上昇率は下がってきます。

そういう意味で、中央銀行の通貨の量とインフレ率の関係、やや長い目で見た場合に、両者の間に関係があるということを否定しているわけではございません。バーナンキ議長が言っていることも私が言っていることも、これは現在のこのゼロ金利という環境のもとでの話をしているわけでございます。

山本(幸)委員  あなたはしきりに、バーナンキはバランスシートと関係づけるべきじゃないと言っていると言うんですが、調べましたよ。バーナンキはそういうニュアンスで言っていない。

バーナンキが言っているのは、アメリカは物すごい量の国債を買い切りして、バランスシートを大きくふやした、それに対して、議会で、そんなことをやればインフレになるじゃないかと言われたときに、そんな心配はありません、バランスシートをふやしたからといってインフレになる心配はありませんし、我々はそれをコントロールする能力を十分に持っています、そう言っているだけですよ。だから、バランスシートをふやしたって物価と関係ないなんて言っていない。

むしろバーナンキは、この前の質疑のときにあなたの発言とバーナンキの対比で示したけれども、バーナンキは、二%を落ちてきたらこれはもう危ないと言って、バランスシートをどんどん拡大すればいいんだと言ってやっているんですよ。だから、これはあなたの誤解ですよ、バーナンキの発言は。それが一つ。

それから、おっしゃったように、マネタリーベースと物価、それだけを比べると、すぐには影響は出ないんだね。これは、私は予算委員会であなたとやったときに、大阪大学の先生の研究論文を引用して、VARモデルでやったら、確かに物価については有意な関係というのは得られなかったけれども、しかし、明らかに株価は上がるし、為替レートには影響するんだ。

マネタリーベースと物価が一対一で対応するわけじゃない、量と物価が。それはすぐにはそうでしょう。しかし、大事なことは、実は、インフレ期待とデフレ期待の関係においては影響するんですよ、物すごく。

それを示すために、最後から三番目、予想インフレ率とマネタリーベースの増加率という表があります。

大事なことは、量と物価が一対一対応というんじゃなくて、そのやり方によって、人々のデフレ期待を緩やかなインフレ期待に変えるということが大事なんですよ。それは、マネタリーベースを拡大すれば、即影響するんだよ。

日本の場合は、二〇〇四年の三月から二〇〇六年二月に量的緩和を猛烈にやったときに、やはりこの予想インフレ率は、物価連動債との関係で見ていますが、上がりましたよ。逆に、それをやめて、解除すると、一気にデフレ期待に戻っちゃうんだ。

アメリカはもっと激しい。日本みたいにデフレをずっと続けていないからね。バーナンキは、はっきりと、二%になったら問題だと言っているから。

マネタリーベースをふやせば、一気にインフレ期待はどっと上がるんですよ。これが私は大事だと思っているんですね。いかがですか。

白川参考人  日本銀行は、量的緩和の時期にさまざまな政策を展開いたしました。

日本銀行のこの量的緩和というのは、この席でも何度も申し上げたことでございますけれども、潤沢に資金を供給することによって、金融システム不安から経済が落ち込むということを防ぐ上で、これは大いに効果があったというふうに思っております。私は、そういう意味で、量的緩和政策それ自体の効果について否定しているわけではなくて、今申し上げた意味でこれは効果があったというふうに思っております。

それから、日本銀行は、この時期には、長期国債を買い入れてマネタリーベースをふやすということ以外にもさまざまなことを行いました。

例えば、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を続けます、つまり、ゼロ金利政策を続けますという約束を行いました。そうなりますと、こういう約束がございますと、日本の景気が回復傾向に向かう中で、普通であれば、金利がゼロから少し離れてくるかなという予想が生まれるときに、そのときに日本銀行はそういう約束をしていますから、これは長期金利の上昇に一定の歯どめがかかってくるわけであります。こうしたことも、景気を刺激し、物価上昇率を上げていく上で効果がありました。

先生のお示しになっているこのグラフは、これはマネタリーベースと予想インフレ率、この二つの関係だけに絞っておりますけれども、先ほど先生の御指摘のとおり、経済は、いろいろな変数が同時に動いております。

日本銀行は、この間、マネタリーベースもふやしましたし、それから、先ほど申し上げたような約束も行いました。それからさらに、このグラフにはもちろん出てきませんけれども、例えば、金融機関が抱えているさまざまなリスクの中で、株式のリスクが非常に大きい、このことが経済を下押しする一つの圧力になっているということで、株式の買い入れも行いました。いろいろな政策を総動員して、この間、少しずつ予想インフレ率も上がってまいりました。

そういう意味で、私は、金融緩和によってマネタリーベースがふえることのその効果それ自体を別にすべて否定しているわけではありません。これもそれなりの効果はあったと思いますし、しかし、いろいろな政策を総動員して我々は取り組んだということでございます。

山本(幸)委員  このファイルはマネタリーベースと予想インフレ率を見ているわけだから、その関係でいえば、統計的に有意な関係はちゃんと出ている。

それから、あなたがおっしゃったように、ほかもやった、いろいろな約束をやったと。では、それをやればいいんですよ。それがインフレ目標政策でしょう、はっきりしているのは。それを、ゼロ%以上に、安定的になるまではというようなあいまいな言い方をするから、ちゃんときかないんだよ。二%から三%に、目標を持ちます、それまでは、考えられることはありとあらゆることをやります、株も買いましょう、長期国債も買いましょう、マネタリーベースをふやす。そういう政策運営、政策レジームというのだけれども、それをやれば、人々の期待感は変わりますよ。

ところが、あなた方は、ちょっとゼロを超えたらすぐやめちゃうんだよ。マネタリーベースも、量的緩和もやめちゃうし、それから、その約束がどうなったのかわからない。今度は、おかしくなるとまた、約束についてはやると。しかし、量的緩和については、震災対応でちょこっとやるけれども、それ以降はまた減らしちゃう。

行ったり来たりしたら、あなた方のねらいは何なんだと市場はずっと思っていて、それを見ているわけですよ。はっきりと目標が決まっていないから、市場は結局、白川さんの目標というのはデフレターゲットだ、そう信認しているわけですよ。

だから、こういうのできいたというなら、もっとはっきりと目標を決めて、インフレ目標、コアCPIで二、三%に決めて、そしてマネタリーベースの拡大をどんどんやればいいじゃないですか。どうですか。

白川参考人  繰り返しになりますけれども、日本銀行の金融政策は、私だけで決めているわけではございません。国会でお決めになった他の政策委員と力を合わせて、九名で、政策委員会でしっかり議論をして、この日本の経済にとって最適な金融政策を運営したいというふうに思っております。

今、そう申し上げた上で先生の御質問にお答えいたしますけれども、今先生がおっしゃった運営スキームは必ずしもインフレーションターゲティングではないかもしれませんけれども、インフレーションターゲティングということでお答えをしたいと思います。

現在の日本銀行の金融政策の枠組みは、既にインフレーションターゲティングの長所を取り入れた上で、その欠点にも対処し得る枠組みとしてこれを導入しております。

少し詳しく申し上げますと、日本銀行は、金融政策運営に当たって念頭に置く望ましい物価上昇率を、中長期的な物価安定の理解という形で明確にお示しをしています。また、この中長期的な物価安定の理解を判断の基準としまして、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、現在の実質的なゼロ金利政策を継続することを明確に約束しております。これらは、透明性の向上を通じて政策の効果を高めるというインフレーションターゲティングの長所を取り込んだものだというふうに思っております。

一方で、日本銀行の現在のこの枠組みは、金融面での不均衡の蓄積などのさまざまなリスクにも目配りするものとなっております。

今回の世界の金融危機の前を振り返ってみますと、先進国の物価上昇率は、非常に景気がいい中で、あるいは住宅価格が上がる中で、あるいは銀行の貸し出しが大きく上がる中で、物価上昇率は総じて安定をしておりました。そうした中で、低金利を長く続けたことがその後の先進国における大きなバブルを生む一つの原因になったという、これは大きな反省が先進国ではございます。

こうした反省から、物価の動き、これは非常に大事でございますけれども、しかし、この物価の動きだけに機械的にとらわれ過ぎますと、結果としてバブルなどのより大きな不均衡を見逃してしまう、そうしたリスクもあるというのが、このインフレーションターゲティングを行ってのまた一つの経験でもあります。

日本銀行としては、インフレーションターゲティングの持っている長所は最大限取り込み、それから欠点と呼ばれているものについては十分目配りし、その上で政策の透明性を高めた政策運営を行っておりまして、こうした政策運営のもとで、デフレ脱却し、物価安定下の持続的な成長経路をできるだけ早く実現したいと思っております。

山本(幸)委員  冗談でしょう。一番短所ばかりやっているんだよ。最大の短所は何か。責任がないということですよ。インフレ目標政策の最大のポイントは、目標をちゃんと示すから、達成できなかったら責任が生じるんですよ、中央銀行総裁に。オーストラリアでもイギリスでもそうでしょう。その責任が、だれが見ても、うまくいったかうまくいかないかわかるかという、責任の所在がはっきりしない限り、だれも信用しませんよ。あなた方は、わけのわからないような言い方で、責任は生じないようなやり方をしているんですよ。何が透明性ですか。

では、あなたは、どれができなかったらどういう責任が生じるんですか。

白川参考人  日本銀行法は、日本銀行の使命を明確に定めております。

日本銀行が使命を遂行する上で日本銀行の自主性を尊重しなければならないという形で、日本銀行法の規定はなされております。しかし、日本銀行の判断を尊重していく、いわゆる中立性あるいは独立性ということに伴う当然の責任として、中央銀行は、しっかりと説明の責任、なぜ日本銀行がこういう政策をとったのか、どういう判断のもとにどのような政策を行ったのか、これを明らかにしなさいということで、日本銀行に対して要請をしております。

そうした要請のもとで、日本銀行はさまざまな形で議論の過程を明らかにしています。決定会合の後にその日の決定内容を発表すると同時に、私自身、記者会見を行っています。それから、議事要旨それから議事録という形で、九名それぞれがどういう議論を展開したのかということを世の中にはっきり明らかにする、それから、国会の場でもこういう形で説明をするように努力をしております。

ほかの中央銀行の責任という、今お話がございましたけれども、多くの中央銀行への使命遂行に当たっての要請の仕方というのは、基本的には、金融政策の仕事の性格を反映しまして、しっかりとその議論の過程を明らかにしていく、そういう形で、我々自身、非常に大きな緊張にさらされております。そうした緊張あるいは責任感のもとで、しっかり政策を遂行していくということでございます。

山本(幸)委員  日本銀行法で云々と言って、日本銀行法で責任がはっきりわかる、書いていないんじゃない。これは日本銀行法に、あなた方にとっては一番いいんでしょうね。

だけれども、インフレ目標政策というのは、独立性には二つある。目標設定の独立性と政策手段選択の独立性があって、目標設定については、政府、ないしは、政府ないし中央銀行が決めるんだ、そこで目標が決められる。それの達成に対して、政策選択については、中央銀行に自由な選択権がありますよという仕組みでやっているわけだ。これがインフレ目標政策の最大の長所ですよ。

だから、あなたが何か、何年か約束するか、中期的には一年か二年だけれども、そこで決めた物価目標に達しなかったら、あなたは責任をとらなきゃいけないんですよ、イギリスだったら。責任をとって、なぜできなかったか言わなきゃいかぬ。それから、オーストラリアだったら首になるかもしれぬ。ニュージーランドか、ちょっとそこは、どっちか。それがない。明らかに透明性と責任の所在が不明確であるから、よくわからないんですよ。

さっきのあなたの説明だって、聞いていたって、ことしの後半から緩やかな回復経路に移行すると思われると。だけれども、ああでもない、こうでもない、リスクがたくさんありますよと。何の説明ですか、それは。こうなるかもしれない、だけれども、こんなリスクもあります。だれだってできるわ、そんな言い方だったら。責任のとりようがないじゃない。

はっきりとだれでもわかるように、あなたの政策運営、日本銀行の今の現体制の政策がちゃんとできたかどうか。だって、これは、要するに、さっき言ったように、名目成長率が一番大事なんだから、物価がちゃんと安定物価のところにいくかどうか。それをあなた方は、理解とかなんとかとごまかして、責任が生じないようにしているんですよ。

これは極めて問題で、これは立法府の話でもありますから、いずれ日銀法改正なり、ちゃんと我々がやらなきゃいかぬと思っていますから、時間が少しなくなってきましたので、もう一個聞きたいことがあります。

これは、五月二十五日に内外情勢調査会において講演されまして、要するに日銀引き受けについて否定的な話をしているんですが、「無から有を生み出す「打ち出の小槌」のような便利な道具は、そもそも存在しません。中央銀行による国債引き受けにせよ、民間金融機関による国債の市中消化にせよ、最終的には、企業や家計の貯蓄を原資として国債が発行されるという大きな構図は全く同じです。」と言っていますね。

私は全く違うと思うけれども、どういう意味ですか。

白川参考人  金融学会という金融論の専門の学者の学会でありますので、多少……(山本(幸)委員「これは内外調査会」と呼ぶ)

ごめんなさい、内外情勢調査会での会合でございます。失礼しました。

中央銀行が国債の引き受けを行えば、すべて財源を容易に調達できるという理論があると思いますけれども、しかし、日本銀行も、それから民間の金融機関も、これは金融機関であります。バランスシートを持っているわけであります。

民間金融機関の場合を考えてみますと、資産サイドに国債を持っている、負債サイドには預金があるという形で、つまり国民が貯蓄の中で預金をして、金融機関はその預金を原資に国債を買うということであります。

日本銀行自身は、これはもちろん国民から直接預金を受け入れてということではございませんけれども、しかし、中央銀行のバランスも同じでございまして、資産に国債があって、負債の方に、右側に銀行券があるわけであります。銀行券はだれかが持ってくれているから、持ってくれて、その銀行券と見合いに国債を買っているわけでございます。もし国民が銀行券をもう持ちたくない、つまり将来インフレになると思う、そういうときには、国債を自動的に持てる、つまり、インフレなしに持てるというわけではございません。

申し上げたいことは、中央銀行の出す通貨であれ、民間金融機関の出す預金という通貨であれ、これは最終的には、国民が貯蓄をしている、その中のある部分が、預金とかあるいは現金という形で回っているわけであります。つまり、国民の貯蓄を離れて、別途、最終的に国債の財源がずっと利用可能であるということではないということを申し上げているわけであります。

中央銀行が国債を引き受けた場合に、引き受けたその瞬間で直ちにインフレが起こるということではないと思います。しかし、中央銀行が財政のファイナンスを行っていく、いわゆるマネタイズを行っていくということに、そういうふうに中央銀行が行動しているというふうに市場で見られるようになりますと、これは将来に対するさまざまな不確実性が増してまいります。そのことは、長期金利が上がってくるということになって、もともと順調にいっている国債の発行自体もうまくやっていけないということであります。

そういう意味で、決して打ち出の小づちがあるわけではないというふうに申し上げたわけであります。

山本(幸)委員  私は、そこは、中央銀行理論、間違っているんじゃないかと思うね、あなたの。

一回、自民党本部で、東大の岩本教授と私と議論したことがあるんですが、そのときに岩本教授は、通貨発行益というのは国債の利子で決まるんだから、ゼロ金利のときはほとんどないし、金利が今度上がっちゃうと損が出るという議論で、通貨発行益というのは当てにすべきじゃないという議論をした。その議論を、岩田さんを初め経済学者ときたら、よくそれで東大の教授をやっているなと言っていましたよ。

それはどういうことかというと、日本銀行というのは民間の企業と違うんだ。民間の金融機関と違うんですよ。何が根本的に違うかというと、資産を持つ必要はないんですよ。資産がなくて負債だけ出せるんだ。つまり、管理通貨制度のもとでは、通貨発行権という権利に基づいて日銀券をどんどん出せるんですよ。それに見合う資産なんか持つ必要は別にないんですよ。だから、民間の企業とは全然違うんだ。その通貨発行権に基づいて日銀券を発行したものを財源に使えばいいんですよ。

政府の予算制約式というのは、財政支出は、増税で賄うか国債の市中消化で賄うか、あるいはこの通貨発行益、どれかを使えばいいんですよ。だけれども、通貨発行益については日銀も財務省も黙っているんだよ。だって、そんなことをしたら増税路線がとれなくなるからね。

通常は、インフレのときだったら、そのインフレが激しくなるということで限界があるかもしれぬ。しかし、今はデフレなんだ。しかも、またショックはある。ほかのことでも財政負担はたくさんある。こういうときに、この日銀の特殊性、つまり、資産を持たなくたって負債だけを出せるという中央銀行の特殊性を使って、これを利用すればいいんですよ。

大体、もともと中央銀行なんて独立する必要はないんだよね。政府と一緒にしちゃえば、同じことがどんどんできるんですよ。だけれども、便宜的に分けたんだ。それは、インフレとかあるからね、過去の例がある。だけれども、本質的には一緒にして、政府が通貨発行するのと同じことなんです、それは。資産を持たなくたって金が出せるんですよ。打ち出の小づちそのものですよ。これを使ってデフレ脱却と復興を一緒にやるというのが最大の責務だと思いますよ。

ちょっと時間がなくなったので、野田大臣、それについて最後の所見を伺って、終わります。

野田国務大臣  大変興味深くお二人の議論を聞かせていただきました。

最後の御質問のところでありますけれども、要は、日銀の国債のいわゆる引き受けというのは、これはやはり、日本の場合には、過去の経験、これを重く見なければいけないと思います。戦前戦中のあのハイパーインフレの経験というのがあって、それで今の財政法の五条ができたというふうに思います。そして、例えば一九八〇年代、九〇年代のブラジルも、そしてアルゼンチンも同じような失敗をしております。

加えて、今、国際社会の中で、主要先進国の中で、そういうやり方をしている国はございません。今、EUのソブリンリスクの問題が問題になっておりますけれども、ユーロ加盟国は、リスボン条約に加盟をして、中央銀行が国債を直接買い入れるということができないようにしている。そういういわゆる国際社会の一つの常識ができているというふうに私は思います。

山本(幸)委員  高橋財政の歴史についてはちょっと認識が間違っていると思うので、いずれゆっくりやりたいと思います。

そんなことを言ったって、世界じゅうでデフレは日本しかないんですよ。そういうときに、それを脱却する手をして、名目成長率を上げなくて、財務大臣として税収を上げられるんですか。私は心配ですね。いずれまた改めてやります。

終わります。