金融機能強化法に関する件(2011.6.8) 財務金融委員会 質問議事録

財務金融委員会 質問議事録
(平成23年6月8日)


山本(幸)委員   自由民主党の山本幸三でございます。

 このたび、ひょんなことから理事になりまして、野党筆頭理事という重責を担うことになりまして、浅学非才の身でありますが、指名された以上は誠心誠意務めたいと思いますので、よろしくお願いします。

 きょうは、金融機能強化法の審議でありますが、私は二重ローン問題というものを取り上げたいと思っております。

 この問題を考える上で、いわゆる不良債権問題そのものなんですね。我が国では、九六年の住専国会から始まって、そして、最終的には九七、八年、金融国会で不良債権問題の処理について一応の道筋をつけたわけでありますが、その流れがこの金融機能強化法につながっているわけです。

 私は、振り返ってみて、必ずしも日本の不良債権問題というのはすんなりと解決されたわけではないなというふうに思っているんです。それはどうしてかというと、これは非常に難しい要素を含んでおりまして、何かというと、いわゆる経済合理性と倫理の問題がぶつかるんですね。ここをどう判断し、決断を下すかというのは、これはもう政治家しかできない。そのことがきちっと整理されていないと、本当の問題解決に至らないんですよ。私はそう思っているんです。

 これまでの一般質疑、それからきょうの審議を聞いていても、どうもまだ皆さん方、大臣、副大臣、政務官等の間ではそこがすっきりしていないなという印象を持っていますので、これをぜひきちっとしたい。

 その点について、最終的には両大臣の判断になるわけでありますので、最後にその辺の判断と決断を聞きます。細かい話で難しい話は両大臣には聞きませんけれども、その重要なポイントだけはお聞きしますので、ぜひよろしくお願いします。

 その前に、少し、細かい技術的な話をちょっと済ませておきたいんですけれども、不良債権問題があったときに、私は、金融機関の不良債権問題というのは二つの面がある。一つは、貸し手の金融機関のバランスシートをよくするということです。これは、今回の法案もそれですよ。

 ところが、それだけでは問題は解決しないんですね。借りている方、債務者の企業なり個人なりのバランスシートをきれいにしてやるということがなければ、幾ら金融機関だけ助けたって、経済全体としてはよくならない。不良債権問題というのは、この両者を一緒に解決してやらなければうまくいかないんですね。そのときに経済合理性と倫理の問題がぶつかるんです。

 かつての金融国会のときに、当時の民主党さんといろいろなやりとりがありまして、最終的に健全化法案を丸のみして通したわけですね。あのときに一つだけ通らなかった法律がありまして、不動産関連権利等調整法という法律を出したんですが、それは、不動産担保で融資していたものを、だめになっちゃったら、内閣に委員会をつくってそこで協議して、債権放棄してやろう、そして無税償却も全部自動的に認めるというような法律だったんです。これが非常な不評でありまして、徳政令ではないかとか、あるいは、裁判所が絡まないでそんなことを行政でやっていいのかというような批判がありまして、実は金融国会のときに通らなかった法案がこれ一つでした。

 その後、私は、いや、やはり債権者の金融機関だけきれいにしたってだめだという問題意識をずっと持っておりまして、債務者の方を救わなきゃだめだということで、執念を燃やして、次の国会に、特定調停法という法律をみずから立案いたしまして、その批判を全部埋めるような形でつくり上げて、最終的には全党の賛成をいただいて通すことができたわけであります。

 その基本的な考え方は、当時は、日本の債権債務関係というのは、債務者が一〇〇%責任を持つというやり方ですね。借りた金は返さなきゃいけないという原理原則があるということで進んでいます。それが基本的な哲学で日本の法制度はでき上がっている。それに対して、私は、貸し手責任というのもあるじゃないかという問題提起をして、海外の例を調べてみると、確かにそうだと。貸し手が責任を負うところもあるだろうということで、お互いに譲り合うようにしないとうまくいかないよということで、そこで債権放棄ということを出してくるわけですね。

 債権放棄をやれと金融機関に言いますと、金融機関は二つの理由からちゅうちょいたします。一つは、勝手に債権放棄をやったということは、利益の機会をなくしたということで、株主代表訴訟を起こされるかもしれないという不安があります。これが金融機関の一つの理由。それからもう一つは、債権放棄したときに、その部分について無税償却を認めてくれるかどうかという税法上の問題があります。この二つがネックになって、なかなか金融機関はうんと言わなかったんですね、従来。

 これを解決してやろうということで、特定調停法では裁判所でやると。裁判所が絡んでいて公平公正じゃないということはあり得ないということで、株主代表訴訟の心配はない。それから、そのとき国税庁と話をつけて、ほぼ自動的に無税償却を認めるという国税庁、当時の課税部長の答弁をいただいて、そういう方向で進んできました。

 その後、この特定調停法だけじゃなくて、いわゆるADRというものとか債権処理の私的ルールみたいなものが出てきましたけれども、私は、基本的には裁判所を絡めるのが一番いいんじゃないかと思っているんですね。

 この特定調停法と、あとの民事再生法とかほかのものはどう違うかというと、民事再生法とかになると倒産の部類に入っちゃうんだ。特定調停法までが倒産じゃないんだ、合意ベースで話が進むからね。だから、企業というのは、一回倒産という烙印を押されると、これは将来にわたっていろいろな支障が生じるんですけれども、倒産の形じゃなくて再建する、そこに債権放棄を入れてやれば非常に助かるということであります。

 まず法務省に聞きたいんですけれども、私は、今回の災害で、金融機関も傷つき、あるいは債務者も傷ついているんですが、そういう場合には、債務者を救ってやるという意味で、この特定調停法なり、そのほかの民事再生法でもいいんですけれども、一番いいのは特定調停法じゃないかと思っていますが、そういうことをやって、どんどん処理をしてやらないと、次の事業に進めない。そういう点について、新聞等では、裁判所は特別の体制を組んでそれに応じるようにしているということでありますが、その辺の実情と方針について法務省からお伺いしたいと思います。

團藤政府参考人   

ただいま委員御指摘のとおり、法的な債務整理方法として、特定調停手続というものが既に用意されてございます。今回の大震災におきましても、被災した企業等の再建を図るためのものとして活用されるべき手続の一つであると私どもも考えておるところでございます。

 私どもは、この特定調停法を所管するという立場から、裁判所等の関係機関との間で必要な情報交換を行っておりますほか、今回の大震災に対する特例措置といたしまして、民事調停の申し立て手数料を免除するという措置をとることによりまして、この特定調停手続の申し立て手数料も免除するということとしたところでございます。

 また、裁判所のホームページや各裁判所に備え置かれておりますパンフレット等により、この制度の周知も図られておりますほか、法テラスにおきましても、利用者からの問い合わせ内容に応じた適切な情報提供が行われていると承知しているところでございまして、これらの取り組みによりまして、今後、この手続の活用というものも図られてまいるのではないかというふうに考えておる次第でございます。

山本(幸)委員   

ありがとうございます。ぜひ、そういう体制をしっかり組んで、使いやすいようにやってもらいたいと思います。

 ただ、今回は、貸し手責任とかなんとかいう話じゃないんですね。地震と大津波と放射性物質の拡散とかいう問題で、あっという間に意図せざる不良債権ができ上がっちゃったわけですね。しかも、その量たるや、ちょっとやそっとのものではない。金融機関も、相手がしっかりしていて、あるいは帳簿もある程度そろっていれば、そういう債務者も、免除をしてもらおうと思ったら特定調停なりに持ち込むということで金融機関も応じるという話があるかもしれませんが、実は、そんなことをやっているような暇も、手間暇もかけられないというのが現実だと思うんですね。

 そこで、今、与野党で二重債務問題についてのプロジェクトチームができて、打ち合わせをしていただいているというふうに聞いておりますが、私も参議院の片山さつき先生からも聞いているんですけれども、とにかく、そんな個別のことをやっているうちに、銀行も債務者もみんなつぶれちゃう。したがって、まず、とりあえず冷蔵庫にばっと、銀行から外してやらないと、銀行が立ち行かない。そして、その冷蔵庫に入れた中で債務免除なりをやってやろうという形でしかできないんじゃないかということで、それはそうだねと思って、そういう二重債務問題の処理のスキームというのをぜひ進めていただきたいなと思っているんですね。

 だから、事業者については、とりあえず銀行から買い取る、そして冷蔵庫に入れる。そこから先は、債務者とのいろいろな話をしていく。最終的には債権放棄ということも当然考えなきゃいけません。あるいは、個人の住宅ローンについては、自動的に債務免除ということでいく。そういう大きな方針を打ち出していかないと、これは進まないと思いますね。

 その場合に問題になるのは、税制の問題であります。そういう形で債権放棄した場合の国税の取り扱いについて、お伺いいたします。

田中政府参考人

お答えさせていただきます。

 今、先生の方から御指摘、御提示のございましたような形が具体的にどういうスキームになるかということが私どもとしては肝心でございまして、現在、今回の震災で被災された方の既存のローンに関しまして金融機関が債権放棄を行う、その場合の無税償却等が可能となるように金融庁等と協議を行っているところでありますが、その際のスキーム自体が具体的にどういうスキームになるかということが私どもの関心でございます。

 私どもは、基本的に、先ほど先生からも御紹介がございましたように、既に過去において同様の債権放棄がなされたような場合に、現行の税制の解釈として、こういう場合には銀行の経理におきまして損金に算入できるというのを幾つか示しておりまして、この基本的考え方にのっとった形で対応いただければ、その範囲内で対応ができるというふうに考えております。そこを金融庁等に提示しながら、今議論をしているところでございます。

山本(幸)委員

私は、従来の、国税庁もかなり柔軟にやってもらっていると評価しておりますけれども、それでうまくいくかどうかというのは、今回、ちょっと心配しているわけですね。

 国税庁、法人税法と共通だとか、いろいろありますが、基本的に、こうした災害について債権放棄した場合には無税償却になるというふうに理解していいですか。

田中政府参考人

今までの考え方の概略を申し上げますと、御指摘のような形で債権放棄等をする場合に、そういう債権放棄をしなければ今後より大きな損失を貸し手の側がこうむるということが社会通念上明らかだと認められる場合には、損金の額に算入しております。また、そういう債権放棄等が合理的な再建計画に基づくものであるというふうに思料される場合にも、損金の額に算入しております。これは、どちらかといいますと、対象の法人の支援をする場合を念頭に置いております。

 それからもう一つは、そもそも、もう取れなくなってしまった、回収できなくなってしまったという場合に近い場合といたしまして、金銭債権の切り捨てに関しまして、当事者間の協議が行政機関とかあるいは金融機関とかその他の第三者のあっせんにより行われた場合であって、その協議により締結された契約が合理的な基準により債務者の負債整理を定めたものであるというふうに認められる場合には、貸し倒れ損失の額に算入するということにしております。

 今申し上げましたような基本的な考え方の範囲に、これから出てくるであろう、あるいは先生から御提示がありましたような内容が入るかどうかというところだろうと思っておりまして、我々は執行機関でございますので、従来の解釈の基本を動かすというわけにはいきませんけれども、具体的スキームが従来の解釈の基本の範囲に入っているかどうか、それがポイントだろうと思っております。

山本(幸)委員

国税庁の法人税法基本通達は、この法律をつくったときに変えてもらったのでよく了解していますが、今回のスキームに入るかどうかという、その入るかどうか次第だというのがちょっと心配なのです。入るようにしなさい、そういうことを言っているんですよ。お願いします。

 それで、次に、今度は免除された方の免除益の話がありまして、これは恐らく、今の国税庁の通達の解釈だけでは十分にできないと思いますけれども、その辺どうですか。

田中政府参考人

これも、今回、これから定めていくスキームの中身を見ながら考える必要がございますけれども、仮に、免除された方が個人事業者あるいは給与所得者というような場合につきましては、現在、国税庁における通達におきましては、そういう債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合に、そういう方に対して行われた債務免除については、これは所得の計算上収入金額に算入しないという取り扱いをしております。

 それから、仮に、免除を受けた方が法人であるという場合もあるわけでございますけれども、この場合においては、一応、債務免除益というのが益金の額に算入されますが、ただ、災害により資産に生じた損失の額が損金の額に算入されるわけでありますし、それから、過年度に生じました欠損金につきましても、一定のルールのもとに損金の額に算入されるわけでございまして、通常、課税所得というのが発生する例は極めて少ないのではないかというふうに考えております。

山本(幸)委員

  災害の部分が損金に算入される、それから過去の利益との相殺ができる。あれは年数は六年だったんだけれども、今は変わったのかな。ただ、それは青色申告だけですよね。白色申告も含めて、今回はこの部分については免除益は取らないという方法にしなきゃいけないし、必要だったら税法を改正してもらわないかぬ。あるいは、今回新しく二重債務問題についての法文にそういう条文を書かなきゃいけないと思っていますけれども、そこの点についてはどうですか。

古谷政府参考人

ただいま国税庁の方から答弁がありましたように、今検討されておりますスキームによって、現行の所得税法なり法人税法の考え方の範囲で対応できるということであれば、先ほど国税庁からの答弁があったとおりであると考えますけれども、スキーム次第で、現行の考え方の範囲で対応できない場合には立法措置が必要になろうかと思います。

 ただ、そこはスキーム次第でございますので、現時点では、今、金融庁と国税庁との間で、立法措置は特段前提としませんで検討が進んでいるということで承知をしてございます。

山本(幸)委員

ぜひ、そういう税法改正も含めてやらないと、私は今回うまくいかないと思っているんですね。

 そこで、両大臣に決意のほどをお伺いしたいと思いますが、なぜそういうことを言うかというと、つまり、経済合理性からいえば、金融機関の償却に対して資本注入して助けたら、これでバランスシートはきれいになる。しかし、それだけじゃ終わらない。債務者の方もしてやらなきゃいかぬ。そのときには、どうしたってモラルハザードとかそういう問題が出てくる。そういう面が出てくるんです。これはしようがない。

 しかし、私は、そこでぜひ両大臣に考えてもらいたいと思うんですが、確かに、そんなことを免除したら、ほかの災害に遭った人と不公平じゃないか、あるいはほかの地域と、あるいは全然ローンを組まなかった人と不公平じゃないかという話が出てくるんです。しかし、その正義、私は小さな正義と言いますが、その正義を通してしまった後に何が起こるか。この地域はつぶれますよ。町はなくなる。事業も消えてしまう。そうすると、それが本当にいいのかという別の判断があり得るわけですね。私はそこは、大きな正義。その整理をきちっとしておかないと、この問題はすっきり解決できない。

 例えば日本の不良債権問題、紆余曲折がありました。アメリカもありました、失敗しましたね。リーマン・ショックの前、ベアー・スターンズというのをアメリカは救ったんです。そのときに非常に批判を受けた。それで、リーマンについては、私は当然リーマンも救うものだと思っていたんだけれども、つぶしました。その結果何が起こったか。世界的な大金融危機に至ったわけですね。私はやはり、あのリーマンを救わなかったのは失敗だったと思いますよ。

 それと同じように、日本でも、つぶしたときもあるけれども、結局、最後はりそなを救って、それで金融は安定したんです。確かに、小さな正義は通さなかったかもしれないけれども、大きな正義は、私は間違っていなかった、通した。これを、今回は特に政治家がしっかりと決断しなきゃいけない。

 だから、さっきの和田政務官みたいに、ああでもないこうでもないという、正義の話をするのかと思うとそうでもない話も。それじゃだめなんです。今回は、確かに小さな正義から見ると問題もある、しかし、この大震災というのを受けて、この地域を守ってこの地域を再興していく、企業なり人なりもまた戻ってきてもらってこの地域を再生してもらいたいという、大きな正義を守るという腹を固めないと、これはできないんですよ。

 その辺について、両大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。自見大臣から。

自見国務大臣   

山本議員、本当に、大蔵省出身で御専門でもございますが、お答えをさせていただきます。

 まさに今先生が言われた住専国会、私も、大変もまれた人間でございます。たしか、あのとき、大手行に三兆五千億の債権放棄をさせた、こう思っておりますが、その後の二次ロスの問題を、この前、この委員会で通していただいたわけでございまして、私も、ある意味で、政治家個人として大変感慨深いものがございました。

 まさに先生言われたように、金融危機、九七年、九八年、私がたまたま郵政大臣をさせていただいていたときに、北海道拓殖銀行が破綻いたしまして、それから山一証券が破綻する、それからだあっと金融危機が始まったわけでございますから、私も、金融機関というものが民主主義国家においてどういうものであるかということを、今もしっかり勉強中でございます。

 アメリカの歴史を見ますと、民主主義とは、大きな大手の金融機関、銀行家としばしば衝突いたしておりまして、あのアメリカですら、例えば、いろいろな有名な大統領、金融機関を非常に排斥した大統領もいますし、金融機関を助長したといいますか育成した大統領もいます。それくらい民主主義国家というのは、一人一人がみんな同じ権利でございますけれども、しかし、巨大な金融機関になると、非常に今度は大きな力を持つわけです、現実に社会的に。

 ですから、その辺を考えて、しかしまた同時に、今先生が言われたように、これはまさに千年に一遍の津波でございますから、まさに私は、災害有事だ、こう思っておりますので、有事には有事の判断が、やはり我々、選挙民から選んでいただけた人間にはそのことが必要だ、こう思っております。先生の言われるところはよくわかりますけれども、やはりそこは、まず基本が、国民の生命と財産を守るということがやはり政治の一番原点でございますから、そういったことを踏まえて、有事には有事の判断を私は主務大臣としてやらせていただきたいというふうに思っております。

野田国務大臣   

二重債務の問題は、どういう皆さんを救済するのか。一つは、事業者、個人、あるいは債権放棄した場合の金融機関という整理の仕方と、加えて、既存債務と新債務、それぞれどう対応するかという、ちょっとマトリックス的に考えていかなければいけないと思います。

 その中で、一つの大事な観点は、先ほど来、山本委員御指摘のとおりの、経済合理性、そして倫理、モラルの問題があります。と同時に、経済合理性も、あるいはさっき正義という言葉を使われましたけれども、やはり時間軸でも考えなければいけないと思いまして、その瞬間の合理性だけではなくて、やはり歴史観に基づいて、長期的に見た場合に何が合理的だったのかという、後からの検証にたえ得る、そういうスキームをつくるということが肝要だというふうに思います。

山本(幸)委員   

両大臣から非常に心強い答弁をいただきましたので、その気持ちでこれからのスキームをつくっていただいて、税法改正が必要なら指示をしっかりしてもらうということで、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。