諸悪の根源デフレ脱却へ量的緩和を大胆に進めよ(2011.1.27)(日刊自動車新聞 持論談論)

諸悪の根源デフレ脱却へ 量的緩和を大胆に進めよ
 長引くデフレに円高が追い打ちをかけ、国民は塗炭の苦しみを味わっている。なのに、政府は一向に有効な政策を打てず、日銀は世界の常識から外れたガラパゴス状態を呈している。そんな中でデフレ退治に向け、国会で舌鋒を振るう自民党代議士がいる。山本幸三議員。大蔵官僚出身の論客で、白川方明日銀総裁とも激論を交わす。山本氏に日本経済の病根と治療法を聞いた。

山本幸三・自民党衆議院議員
聞き手・編集局長 鼎 哲哉


要旨
・日本は10年以上前からデフレに陥っている
・円高是正のために為替介入と同時に量的緩和が不可欠
・補助金は産業を弱める。税制支援で技術革新促せ

――日本は先進国で唯一デフレに陥っています。しかもリーマンショック後は震源地の米国よりも実体経済が悪化しています。これはどういうことなのでしょう。

山本 「要するに日本はリーマンショックの前からデフレが続いていたからだ。指標によって取り方が変わってくるが、企業物価指数で見ればデフレは1991年からで、GDPデフレーターなら95年から、消費者物価上昇率でいえば98年から始まっている。いずれにしろ、日本は10年以上前からデフレに陥っている。つまり、リーマンショックの前から経済は落ち込んでいた。その原因は日銀の金融政策にあるわけで、とくに2006年3月に量的金融緩和を解除し、7月には金利を引き上げ、デフレを深刻化させた。その結果、とたんに07年から中小企業の景気指数が落ち、続いて大企業の景気指数も落ちた。そこにリーマンショックが襲ったので、一気に崩れたんだ。結局はデフレを解消しないうちに、金融を引き締めたのが最大の原因だ」

――デフレ脱却の方策については
山本 「簡単なことで、お金をたくさん供給すればいい。ところが、日本銀行というのは日銀理論というのがあって『日本銀行はお金の流れを積極的にコントロールできない』と、世界の中央銀行とかけ離れた主張をしているんだ。リーマンショックへの対応でも世界の中央銀行は金融を大幅に緩和したが、日銀はほとんど緩めなかった。それがリーマンショックからの立ち直りを遅らせている」
「デフレというものはモノの量とお金の量で決まる。今、モノの世界でGDPギャップが40兆円くらいあるのだから、その分のお金を出す必要がある。それをやらないとデフレは解消しない。そのことは欧米では常識になっている。だから米国は先月、再び生じているGDPギャップに対応して6千億ドル(約49兆円)の追加金融緩和を実施したんだ」

――デフレを脱却すれば、日本経済の展望は明るくなる
山本 「デフレを脱却するには、日銀に消費者物価上昇率を1~3%の間に持っていくよう義務付ける必要がある。そういうふうにして毎年物価が2、3%上がるのがはっきりすれば、消費者も企業も投資をするようになる。今はお金を持っているほうが得なのだから、消費者はモノを買わないし、企業も設備投資をしない。だからデフレ期待を早くインフレ期待に変える必要がある。そうなれば名目成長率も4%くらいになり、税収も増えるから、財政赤字問題も解消する。国債がいくらたまっていても、名目成長率が国債の金利より高ければ、将来的には財政赤字は収束していくのだから」

――デフレに加えて、円高が追い打ちをかけています。円高を是正するには
山本 「なぜ円高になるか。それはデフレだからだ。たとえばハンバーガーが米国で1ドル、日本で100円だったとして、米国は1ドルのままなのに、日本はデフレで80円になったら、1ドル=100円が1ドル=80円の円高になったということだ。つまり、デフレになると必ず円高になる。この根っこを解消しないと円高は是正できない。それと、よく円高メリットを言うムキもあるが、円高メリットがあるのは交易条件が上がっている場合だ。かつてのプラザ合意の時は原油価格が下がり、交易条件が良くなった。現在は円高の上に交易条件が悪くなっており、最悪の状態だ。これを是正するには徹底した為替介入と同時に、大規模な量的緩和を実施すべきだ」

――民主党の経済政策については
山本 「民主党には経済政策がないのでは。新成長戦略も官僚の作文だし。たとえばグリーン・イノベーションで50兆円の付加価値、140万人の新規雇用を創出するといっているが、労働分配率を7割として35兆円を140万人で割れば、1人当たり2500万円の所得になる。これだけでもダメだと分かる。今回の補正予算でも成長率は0.9%しか上がらない。GDPギャップが5%以上もあるというのに」

――自動車産業の経済波及効果は大きい。その支援策についてはどうですか
山本 「私は個別の産業を対象にした補助金政策というのはあまり好ましくないと思っている。補助金に頼っていると、むしろ産業として弱くなる。それよりも技術革新や設備投資がしやすくなる税制で支援するほうがよい。これからは電気自動車の時代になるから、この技術革新には政府もかなりお金をかけて支援するべきだ。税制上の優遇措置も設けるなど、重点支援をするべきだ」