今の日銀の金融政策は間違っている!  (2007.10.9)

今の日銀の金融政策は間違っている!  (2007.10.9)

衆議院議員 山本幸三

1 低姿勢の福田政権の滑り出しは順調のようだ。いよいよ今日から予算委員会が始まるので、その様子を見ないとまだ本当のところは分からないが。予算委員会では、テレビ放映もあるので政調会長、幹事長代理、筆頭理事とお偉方が質問に立つ。私にも質問させろと要請したのだが、今回は叶わず次回送りとなった。気になるのは、質問の多くが「テロ特措法」や「政治と金」の問題に費やされそうで、経済や地方の悩みといった問題に焦点が当っていないことだ。私は、国民の最大の関心事項は毎日の生活と将来への不安であり、「テロ特措法」や「政治と金」などは余り身近な問題とは感じていないのではないかと思うのだ。国民の意識と政治家の感覚が乖離するから参議院選のような結果が生ずるのではないかと心配している。
正直言って今の政治に経済政策が全く無いのは、驚くべきことだ。その結果、日本銀行は好き勝手な金融政策をやっている。この一年、量的金融緩和政策を解除しただけでなく、二度にわたり金利を引き上げた。そして次の金利引上げはいつやろうかと狙い続けている。幸か不幸か、サブプライムローン問題で欧米の中央銀行が資金供給を拡大したり金利を引下げたりしたので、その野望を果たせないでいるが、虎視眈々と金利引上げを狙っているのは福井総裁や側近審議委員の発言で明らかである。しかし、日本経済は本当に金利引上げを必要とするような状況なのだろうか?私は、そうは思わないのだ。何故なら、CPI(消費者物価)やGDPデフレーターは依然としてマイナスが続きデフレから脱却出来ていないこと、景気がよいといっても輸出関連の設備投資や生産がよいだけで消費や中小・零細企業はちっとも冴えないからだ。また、サブプライムローンや原油価格高騰の影響で欧米経済の落ち込みが予想される中では日本経済の先行きは要注意で、金利はむしろ引下げることを考えるべき状況にあると思うからだ。
相も変わらず「日銀は、また間違いを犯しつつある。」というのが、私の判断である。このことを私は予算委員会で追及したかったのだが、叶わないのでこのメルマガで擬似追求をしたいと思う。

2 まず日銀が嘘ばかりついているということを指摘しておきたい。
昨年(2006年)3月、「量的金融緩和を解除」したときに、日銀は何と言っていたか?「量的金融緩和解除は、CPIがゼロ以上となることが数ヶ月続き、その後マイナスに戻ることがないと確信出来るときに行う。」、そう言っていたのだ。その後7月には、ゼロ金利さえ止めてしまい基準金利を0.25%に引き上げた。私は、「8月末にはCPIの基準改定があるのでせめてそれまで待つべきだ。」と主張していたのだが、完全に無視された。ところが、8月末のCPI基準改定で日銀の予想を上回る下方修正がなされ、4月のCPIはマイナスであったことが明らかとなった。日銀の予想はいつものように間違い、私の懸念の方がいつものように正しかったのである。CPIはその後プラスにはなるが勢いがなく、今年の2月からはまたマイナスに戻ってしまった。明らかに「量的緩和解除の条件」に外れる訳で、日銀は完全に読み間違えたのである。まずこのことについての説明責任を十分に果たさせなければならない。しかし、日銀は一切知らん振りしたままで、到底許せない態度だ。私は、このことをまず徹底的に追及したいと思う。

3 次に、福井総裁が金利引上げの理由を説明するときの常套文句は、「GDPギャップがプラスなのでいずれCPIもプラスになる。低金利が長期に続くと判断されると将来経済に歪みを生じかねない。」というものである。
このGDPギャップというのが曲者だ。これほど当てにならない数値はないからである。GDPギャップを計算するには、過去の統計数値から推計されたコブダグラス生産関数(コブダグラス関数:コブとダグラスという2人の経済学者が生産関数の推計の際に開発した関数。*生産関数:企業などのある生産者が、生産要素をある量投入したときの、生産量を示す関数。)を用いて供給面が求められる。この時、完全雇用で資源の有効利用の状態であることが前提とされる。
問題は、この生産関数による数値が当てになるかということだ。一番の疑問点は設備投資で、これは需要側にも供給側にも含まれている。現在使われている設備投資というのは、過去のバブル崩壊後の冴えない期間の設備投資の数字である。従って、供給面の数値はこれを反映してかなり低くなっているとみるべきだ。それに比べて現在の輸出に引っ張られた高水準の設備投資を反映した需要と比べてみれば、需給ギャップがプラスになり易いというのは当然だ。内閣府も日銀も、需給ギャップ論のこの弱点を十分考慮すべきだ。
しかるに日銀は、この点は無視し都合のよい数字が出るので、こればかり強調するのである。 経済財政諮問会議の席で伊藤隆敏教授が指摘していたが、「実質経済成長率がプラスでも賃金が下がりCPIもマイナスが続くというのは、需要不足ということではないのか?」という疑問が成り立つ。
需給ギャップ論ほど当てにならない数字はない。これだけを錦の御旗に金利引上げを画策しようとしている日銀は、すこしおかしいのではないか。

4 もう一つの「長期の低金利予想が続くと将来の経済に歪みを生じかねない」という議論も説得的でない。まず一体何を言っているのか分からない。デフレが長期にわたり続きいつ脱出出来るか分からないようなときに将来のバブル状況を心配するという姿勢が異常である。意味不明の予想を立てる前に、まず現実のデフレを解消してみろと言いたい。就任直前の福井総裁に、私は「貴方は、デフレを数年以内に解消出来る自信があるのか?」と聞いたところ、福井さんは「ある。必ず解消する。」と確答したのだ。にも拘わらず、4年半経ってもデフレは解消していない。来年3月の任期切れまでに解消出来る目途も立っていないのではないか。公約違反である。
「歪み」というのは、おそらくかつてのような地価上昇を考えているのだろうが、その危険性は高いのか?私は、「ノー」と考えている。まず、歴史的な地価の推移だが、日本の住宅地の価格は長期で見れば決して上がっておらず、むしろ緩やかに下降している。これと正反対なのがイギリスの住宅価格である。近年大幅に値上がりし一向に落ちる兆しがない。金利を引き上げても下がらないのだからバブルとも言えない。バブルというのは、事前に分かるものではない。破裂して初めて、バブルだったと知ることが出来る代物だ。なのに、水野温氏審議委員は、「バブルになる前に金利を上げるべき。」などと訳の分からないことを言っている。この審議委員は、これまでも金融理論など分かっているのかと疑わせるような発言を繰り返しており、その適格性に問題がある。どうしてこんな委員を選んだのか、選考過程に問題がありそうだ。

5 今回のサブプライムローン問題でもそうだが、資産価格の高騰と金融政策、特にインフレターゲット政策との関係をどう考えたらよいかという問題が、今日の最大の課題だ。
インフレターゲット政策を採用している国々の方が格段に経済運営が上手くいっており、この政策の優越性は明らかとなったと思われる。問題は、資産価格高騰に際し、どのように対応するかだ。資産価格高騰に対し、金利引上げで対応すべしという意見もあるが、米欧での経験から、やはり「資産価格高騰があるから直ぐに金利を引き上げるのではなく、あくまでも中長期的(一年半から2年)に一般物価が上限を超えるかどうかで判断すべきだ。」というのが行き着いた結論である。逆に「資産価格暴落の際には、金融システム安定化のために直ちに流動性供給と金融緩和を急ぐべきだ。」ということもある。平時の金融システム安定化については、リスク資産の評価を正確にするなど銀行監視政策が重要である。
こうしたことから考えると、今の日銀の政策は、一般物価水準を無視して、当てにならない数値を基に政策判断をしようとしており、また資産価格上昇のリスクだけを強調しこれを予防して金利引上げをやろうとしているなど、まともな金融政策運営の点から鑑みて「間違いばかり」を犯している。これでは、日本経済がデフレから脱却し、国民に安心・安全を感じさせるような状況を作りだすのは不可能に近い。このことを政治家は、しっかり認識しなければならない。「テロ特措法」や「政治と金」の議論に明け暮れている間に、土台の日本経済が頓挫しかねないのだ。金融政策小委員長としての私の責任大たるものがあると覚悟を固めているところである。

(以上)