米国出張報告 (2003.4.29~5.5)

平成15年5月15日

■ワシントンの権力構造と次期大統領選について(インサイド・リポート)

~米国出張報告~

 

 2003年4月29日から5月5日まで訪米し、ワシントンとニューヨークで、連邦議会議員を始め、米政界事情に詳しい人達と意見交換をしてきました。その中で、ブッシュ政権と次期大統領選についてのインサイド・リポートをまとめましたので、御参考にして下さい。

 

自由民主党国会対策副委員長

衆議院議員 山本幸三

 

1、 ブッシュ政権内での本当の権力者は、チェイニー副大統領とジョシュア・ボルトン次席補佐官である。このことを、日本の外務省はよく理解しておらず、肩書きだけで判断している。

 

2、 チェイニー副大統領は、全ての情報を集中させ、自分が最終決定をしなければ気の済まない性向なので、決定が遅れたり、痒い所に手が届くような根回しが出来ないことがままある。今回のイラク攻撃で、仏独露と上手くいかなかったのも、この権力集中の弊害で、十分に面倒を見切れなかったからだ。

 

3、 ブッシュ大統領は、物事が良く分かっていないが、表向きには、強いリーダーシップを発揮しているように見せることに長けたパフォーマーである。細かい中味については、チェイニーにすっかり頼っている。

 

4、 チェイニーは、人付き合いが余り良くないが、ラムズフェルドとは兄弟以上の付き合い。FRBのグリーンスパン議長も付き合いの悪い人間だが、チェイニーだけは例外で、昔から、毎日何度も電話をし合う仲。しょっちゅう、会ってもいる。グリーンスパン再任が決まったのも、チェイニーとの親密な付き合いのお陰。これから、経済が重要になる中で、FRBは、ホワイト・ハウスの手中にあるということ。景気対策には、積極的な手を打つはずだ。グリーンスパンは、歴史に残りたいと思っており、FRB議長最長記録が作れる2006年まではやるだろう。唯一の懸念は健康だが、万一の場合は、ニューヨーク連銀から会計監視委員長に行ったマクドナーが 第一候補である。

 

5、 チェイニーの今の最大の関心事は、イラクの石油とガスの利権をどうするかだ。今度、新たに任命されたブレマー文民行政官も、チェイニーにとって御し易い人物と見られている。

 

6、 次席補佐官のボルトンは、カード首席補佐官の下に位置するが、かつて上院の財政委員会のスタッフをしていたこともあって、議会や行政府の動かし方を熟知している。また、自分の気に入らない人間は飛ばしてしまうなど性格的にも激しく、ホワイト・ハウス内で猛威を振るっている。皆、チェイニーとボルトンに睨まれたら大変だと戦々恐々としている。

 

7、 もう一人、重要な人物は、リチャード・パール国防評議会議長(元国防次官補)である。パールは政権きっての軍事戦略家で、旧ソ連を崩壊させた人物として知られている。チェイニーやラムズフェルドの知恵袋と言って良い。アフガン戦争、イラク戦争いずれも、パールが戦略指導を行っている。パールは、キッシンジャーと違い、マスコミに出ることを余り好まないが、北朝鮮問題のことを考えると、注目すべき人物である。考えは違っても、その頭脳の回転の良さに舌を巻くはずである。

 

8、 国務長官のパウエルは、中枢から外されている。どこか外国にでも行っていたらよいとされている。パウエルも、意思決定から外されたくないので、出来るだけワシントンに居たがったが、立場上、そうもいかないことがある。

 

9、 ブッシュは、エコノミストが嫌いだ。CEA委員長のハバードは、背が高く、ブッシュを上から見下しているような感じがあった。それで嫌われて、追い出された上、CEA自体も、オフィスを移される羽目になった。今度、マンキューがCEA委員長で来ることになったが、元々マンキューは、ブッシュ経済政策を批判していた人物であり、大丈夫かという問いには、「マンキューがやることは、既に決めた政策を世間に売り込むだけ」というのが、中枢の答え。経済政策も、チェイニーとボルトンで仕切ろうということ。リンゼーの後任のフリードマンは線が細く、何も出来ない人物。

 

10、 今回のイラク戦争で、ブッシュが最も頭にきているのはシラク仏大統領である。露のプーチンとは、石油利権で話はつくし、独についても、各方面から「シュレーダーは、もう終りだから何とかしてくれ。」と言った声が届いており、そう深刻ではない。しかし、「シラクだけは許せない。」と言うのが、ブッシュ政権の一致した見解で、エビアン・サミットについても、一時はボイコットしようと本気で考えたものだ。結局、一応は顔を出すことにしたが、サミットの場で、「シラクを何らかの形で懲らしめてやる。」という雰囲気だ。シラクには、国連安保理でやられ、NATOでやられ、WTO(ドーハー・ラウンド)でもやられていると思っており、WTOでの米仏対立は決定的だ。日本は、ヘタに仏と組まず、黙っているのが一番良いのではないか。

 

11、 北朝鮮問題については、まず在韓米軍を引上げないと動きが取れないし、千箇所以上も砲撃基地があるような所に簡単には、手を出せない。幸い、朝鮮半島に核を持たせたくないというのは、北に強い影響力を持つ中国も同じ考えだろうから、これに期待するしかない。米国と中国の関係は、非常に上手く行っている。中国本土の台湾向けのミサイルは現状維持ないしは若干減っており、米としても、これを評価している。米中関係は、良い方向に向かっている。

 

12、 ミサイル防衛構想(TMD)については、次のことに注意すべきだ。即ち、科学者達の見解は、TMD配備のコストと、これを打ち破るコストの比率は、8or9:1で、コスト的には到底引き合わない。しかも、新しいタイプの攻撃手段が出来れば、これに対応する為の時間もかかる。即ち、経済的には引き合わない代物だということだ。只、レーガン政権の頃、パールが主張したのは、「しかし、米はそれに耐え得るが、ソ連は出来ない。従って、無理に追い込むことで、ソ連を崩壊させられる。」ということで、それが当たったということだ。ゲームの道具としての役割はあると言うことだ。イージス艦は価値があるだろうが、それ以上に金をかけるべきかは疑問。

 

13、 次に、大統領選についてだが、共和党は、ブッシュで決まり。他と変わる要素は全くない。民主党の方も、乱立で、これと言った決め手がない。 1番と2番を争っているのが、ジョン・ケリー上院議員(マサチューセッツ州)とジョン・エドワード上院議員(ノース・カロライナ州)。3番目が、ディック・ゲップハート下院議員(ミズーリ州)、4番目がハワード・ディーン州知事(バーモント州)、そして5番目がジョー・リーバーマン上院議員(コネチカット州)といったところか。

 父親、ブッシュの時のように、経済が急激に悪化して、人気急落ということになるかどうかだ。当然、そうならないように手を打つだろうし、民主党もこれといった対抗馬がいない(丸で、日本のよう)状況では、ブッシュ再選の目が強いのではないか?

 

14、 別途、FRBのバーナンキ理事と会談したところ、理事は、「FRBは、すでに暗黙の内にインフレ目標政策をやっている。これを明示的に出来るよう、内外の理解を深める努力をしているところだ。」と言っていた。