あすの医療制度 「高齢者医療費をどう賄うか」(2002.8.27)(自由民主)

平成14年8月27日

あすの医療制度 「高齢者医療費をどう賄うか」 ~機関紙「自由民主」 8月27日号の掲載記事より~

新しい高齢者医療制度の創設等制度体系見直しワーキンググループ 主査 山本幸三

 七十歳以上の高齢者医療費は国民医療費全体の四割近くを占めている。この高齢者分を下の世代が支える形になっているのが医療保険制度の実情だ。高齢化によって毎年、確実に増える高齢者医療費の負担を制度のなかでどう位置付けるのか――それが医療制度改革のなかで最も大きい課題になっている。党の「新しい高齢者医療制度の創設等制度体系見直しワーキンググループ(WG)」は、新しい制度を考えるうえで、現行の国民健康保険と被用者保険の両制度を将来的にどのように再編・統合していくかが大前提として、4つの案を軸に検討を始めた。同WGの山本幸三主査(衆議院議員)に、高齢者医療の問題点、議論の方向などについて聞いた。

――高齢者医療を改革するにあたって、その背景にはどんな問題があるのですか。
山本幸三・党新しい高齢者医療制度の創設等制度体系見直し ワーキンググループ主査

 医療保険制度には国民健康保険といわゆる被用者保険(政府管掌健康保険と組合健康保険)の2つがありますが、すでに国保と政管健保が財政的にかなり厳しくなっています。国民の医療費は現在年間30兆円と言われています。そのうち11兆円が70歳以上の高齢者医療費で、伸び率は毎年8%を超えています。高齢者の人口伸び率4%に対して二倍もの率で伸びている。お年寄りを加入者として多く抱えている国保だけでは賄いきれません。  政管健保や組合健保が拠出金を出して国保を助けている。つまり下の世代が高齢者医療費を助けているわけですが、8%もの率で伸びている医療費に合わせて拠出金を出し続けていては、政管健保も組合健保もやっていけない。日本の医療保険制度を将来的にも安定的に運営させるためには、高齢者医療をどう賄い、それを支えている国保をどう助けるか――。保険者の統合・再編の仕方にもかかっているのです。

――新しい高齢者医療制度について、どういう案が考えられているのでしょうか。

山本 4つの案があり、その中から最も安定的なものを選ぶのがわれわれWGの課題です。  ひとつは「一本化案」と呼ばれる案で、国保、政管、組合と分かれている健保を一本にする考え方です。市町村国保は今、職のない人もお年寄りもたくさん加入してきて、大変な状況です。とくに規模の小さい市町村や過疎地などはやっていけない。一般会計から補てんしなければならない状況に直面しています。  一本化といっても、全国か各県ごとかで違ってきますが、一番難しい点は保険料計算の基になる所得の捕捉です。被用者保険の場合は対象がサラリーマンだから取り損ねることはないけれど、国保に加入している自営業者などの所得は確実には捕捉できません。この点が一番のネックです。また、被用者保険で本人と事業主が保険料を半分ずつ負担していますが、一本化した場合に事業主の負担をどうするかという問題も出てきます。ハードルはいくつもありますが、私としては一本化案を理想として、将来的にそこに向けていくことができるようにしておかなければいけないと思っています。

――他の三つの案はどういう考え方で、どんな位置付けをしていますか。

山本 それぞれ「独立保険方式」「年齢リスク構造調整方式」「突き抜け方式」と言われるもので、一本化の方向を念頭に置きながら、それぞれ検討しなければなりません。  このうち突き抜け方式は、事業主が自分のところで働いた人の面倒を将来的にも見てあげるシステムです。今の拠出金は日本全体の老人の割合を基に算出していますから、事業主にとっては自分の企業で見る以上の人の面倒を見ることになります。しかしこの方式では、国保の財政を助けるという本質的な問題が解決できない。そうなると残る二つの方式が有力になります。  まず、独立保険方式は高齢者医療保険として独立した保険者を創設する方法で、これには二つの考え方があります。ひとつは、対象である高齢者自身が病気にかかりやすいなどリスクが多いことを勘案して、保険ではなく9割は税金、つまり公費負担の形で処理する考え方です。一方、ある程度は保険で考えるべきとして、公費負担は5割まで、残りは被保険者の保険料と組合健保などからの拠出金を充てるという考え方があります。前者は難しいと思います。将来的な税金負担が増えるだけの話ですから。  他方、年齢リスク構造調整方式は、各年齢ごとの医療費の全国標準に対して、保険者が加入者の実勢を比べ、現実の医療費が多ければよそから援助してもらい、少なければよそを援助してやるという方式です。要するに全国平均で考え、年齢構成の相違による医療費の格差を調整する。非常に理論的な考え方ですが、実務上の問題をクリアできるかどうか。

――政府は今年度中に基本的な方針を出すということですが、WGとしては今後どのように詰めていく予定ですか。

山本 まず、9月4日にWGの会合を開き、そこで4案をそれぞれ具体的な数字で検証する予定です。方式ごとに、組合健保がいくら金を出さなければならないか、国保の支援はどこまで行われるのか、しかも拠出金が増えるのかどうかなどを数字にして見ます。安くあがる方式などが見えてくれば、それに集約していきたい。そして9月中にもう一度有識者から客観的な意見を聞いたうえで、10月にはたたき台のようなものを中心に話し合い、遅くとも11月半ばまでにはWGとしての考えをまとめたいと思っています。