日本銀行 通貨及び金融の調節に関する報告について(2001.3.30)財務金融委員会 質問議事録

平成13年3月30日(金曜日)

財務金融委員会質問

(日銀・速水総裁に対する質疑)

山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。
 私は、きょうこの日を大変楽しみにしておりました。速水日銀総裁と直接議論ができるのはなかなかありませんので、この委員会ぐらいしかじっくり話ができる機会がないので、大変楽しみにしてまいりました。きょうは、金融政策について速水総裁と真剣な議論を行わせていただきたいなと思っております。
 最初に委員長にお願いしておきたいと思いますが、私は、二時間ぐらいやりたいんですが四十分しかないので、貴重な時間なので、速水総裁だけと議論をしたいものですから、ほかの副総裁や理事の方は党の部会等で議論できますので、速水総裁にのみ答えていただけるようにお願いしたい。ほかの方が出られたら私はすぐにストップいたしますので、その点だけまず最初にお願いしておきたいなと思います。
 さて、新日銀法が施行されて三年がたったわけであります。この間の日本銀行の金融政策の実績というのをどうだと問われた場合、私は、余り芳しくない、むしろ迷走を続けて失敗したという評価だと思っております。
 政策対応が後手後手に回って、九九年二月にゼロ金利ということに追い込まれました。そして、それで少し上向きの兆しを見せた部分があったんでありますが、余りにメンツにこだわる余り、昨年の八月には、確たる根拠もないままにゼロ金利解除を強行して、私はそのときに反対いたしました。緊急提言も出しました。こんなことは時期尚早である、こんなことをやれば、株価は下がって、景気は腰折れするよということを予算委員会で二度にわたって言っていたにもかかわらず、強行されまして、そして、その結果、景気は自律回復するどころか失速した。
 デフレはいよいよ進んでおります。財と資産のデフレ、両方のデフレがどんどん進んでいる。一体、デフレ懸念は払拭されたとは何だったんでしょうか。全くそういう実態はなかったということが今日明らかになって、そして三月十九日、またまた実質ゼロ金利の状態に戻らざるを得ない、そういう醜態を見せているわけであります。
 そこで、まず最初に、速水総裁、ゼロ金利解除議案の提案者でありますが、昨年八月のゼロ金利解除政策というのは失敗だったとお認めになるのかどうか。まずそのことをお伺いしたい。

速水参考人 昨年八月のゼロ金利政策の解除につきましては、御承知のように、当時、経済も二%ぐらいの成長はできるだろうと皆思い始めましたし、市場の方も比較的よくなってきたということで、もう少し早い時期から私自身は解除を考えておったわけですけれども、そごうの問題等いろいろなことがあって、八月になって決断をして、多数決で決定をしたわけでございます。
 昨年八月のゼロ金利政策の解除は、市場でも非常に冷静に受けとめてくれまして、八月いっぱい株は上がっていきました。また、現実に日本経済の回復テンポが鈍化し始めましたのは昨年末以降でありまして、生産やGDPの動き等を見ましても、年内は我が国経済の緩やかな回復基調が維持されたというふうに考えられます。
 昨年末以降、景気回復のテンポが鈍化した最大の要因は、やはり米国経済の急激な落ち込みであったと思います。この点は、十一月のFRBのFOMCを見ましても、十一月FOMCまではリスクバランスの評価としてインフレ警戒という採用をしております。また、米国の民間機関の成長率の予想を見ましても、比較的高目であったこともあらわれております。
 日本銀行としましては、経済、物価情勢を深く点検しながら、その時々において最も適切な金融政策対応を機動的、弾力的に行っております。ゼロ金利政策解除時の判断は、私は誤っていないというふうに考えております。
 それから七カ月たって、今回、新しい方法でまたゼロ金利に到達するような政策をとっておりますけれども、金融政策というのは、先ほど申し上げましたような内外の大きな変化に即応しながら手を打っていくというのが本来のあり方であるというふうに思っております。

山本(幸)委員 ゼロ金利解除は失敗ではなかった、間違いではなかった、そう強弁されるわけですね。その根拠は、要するに、昨年の数字はよかった、株もゼロ金利解除しても月末まで上がったじゃないか、そういうことが一つ根拠。それから、日本経済がおかしくなったのは昨年の末からであって、それは米国経済が落ち込んだからだという理屈のようですね。
 幾つか疑問がありますが、八月、ゼロ金利解除をやって株が月末まで上がったら、それでいいという話になるのですか。ではあなたのモデルでは、金融政策を変更したらすぐに効果があらわれて、その効果は二週間ぐらいで終わる、そんなモデルを使って議論しているんでしょうかね。そんなモデルがあったらいずれ論文で示してもらいたい。そんな、金融政策の効果が、やって直ちにきくなんという実証研究なんて見たことない。大体、金融政策の効果が出てくるのは、二カ月とか三カ月後に出てくるというのがどんな実証研究だって出している話ですよ。
 それから、米国経済が予想以上に落ち込んだ、昨年の末まではだれもそんなことはわからなかったと言っていますが、私は、去年の予算委員会でちゃんと言っていますよ。米国経済はもうおかしくなりつつある、米国経済は落ち込みつつあるよ、そしてアジア経済も落ち込みつつある、こんなことは私はわかっていた。あなたがわかっていなかったというだけの話じゃないですか。そう予算委員会で私は指摘していますよ。みんなわかっていましたよ。当時、アメリカの株価はいずれ暴落する、七千ドルか八千ドルぐらいになってもおかしくない、PERから見て。そんなことはもう普通に言われていたことですよ。それを、いや、私は全くわかりませんでしたというのは、あなたの見通しが、予測能力が足りないというだけの話じゃないんですか。私は、米国経済がおかしくなると。
 私はもっと、もう一個リスク要因があると思っていた。それは原油価格の高騰ですが、これは私が危惧したほどにはありませんで、それはよかったと思っているんですが、原油価格の高騰がそれに加わっていたら大変なことになっていた。原油価格の高騰はそうならなかったけれども、米国経済は予想以上に落ちた。
 しかし、いずれにしても八月の段階で、将来的に見れば、デフレという状況に対して、むしろ下振れリスクのある現象の方が起こる可能性が高いということが明らかだったわけですよ。そういうときに、あなたは、足元がいい数字が出てきたから、今やその足元のいい数字だったのは間違いだったのが明らかになっています。七―九のGDPはプラスどころかマイナスだった、あるいは、ダム論の根拠になった中小企業の所定外給与、特別給与は実はそんなにプラスじゃなかったということが明らかになっています。
 つまり、政府はもうその当時補正予算の話をしていた。政府はもうそういう予測をして、補正予算ということでエンジンをかけた。将来的には下振れリスクしかない、そういう状況でエンジンをかけなきゃいけないときに、あなたはブレーキをかけた、逆噴射をしたんですよ。私は、これが間違いでなくて何が間違いだと言うしかないと思うんですね。
 今回の「金融市場調節方式の変更と一段の金融緩和措置について」という前文のところにはっきりと書いていますよ。「過去十年間にわたり、」云々と書いてあって、いろいろやってきた、「それにもかかわらず、日本経済は持続的な成長軌道に復するに至らず、ここにきて、再び経済情勢の悪化に見舞われるという困難な局面に立ち至った。」はっきりと、これは財政政策も含めてですが、財政金融政策は間違ってきましたということをちゃんと認めているじゃないですか。
 失敗であったか失敗でなかったかという評価は、国民生活に利益をもたらしたか被害をもたらしたかで判断するべきだと私は思います。昨年のゼロ金利政策を解除したときに、ノーベル経済学賞をもらったポール・サミュエルソンさんが大変興味深い論文を書いて、ある新聞に寄稿されました。
 それは、日銀は間違いを犯しただろう、そのときに、しかし流動性のわなにはまり込んでしまった場合には、金利を上げようと下げようと、その変化が通常は実質経済成長率や物価水準に持つ影響力の多くは失われる、こう書いた後に、だが、破産は別だ、支払い不能の瀬戸際に立たされた企業や銀行は、消費や投資の需要がまだまだ正常なレベルまで戻っていないのに、時期尚早に金利を厳しくされると、はっきりとした倒産へとたたき落とされてしまう、サミュエルソンさんはそう書いてある。私は、現実にそのことが起こった。不必要に倒産を余儀なくされた中小企業者がたくさん出た、失業を余儀なくされた雇用者がたくさん出たんですよ。
 あなたは、そういう倒産した企業経営者や失業の憂き目に遭った人たちに対してお断りをしたいという気持ちはないんですか。そんなものは全然私の知ったことではない、グリーンスパンよりも二倍も給料をもらっているからいいや、そういう気持ちなんでしょうか。いかがですか。

速水参考人 まず、山本先生の最初の御質問である、株だけで動かしたのかというお話でございますが、金融・資本市場というのは、やはり反応が非常に早いわけでございますし、すぐに変化を織り込むわけでございます。株の反応がよかったということは一つの例に挙げただけでございまして、その後、ゼロ金利というものは本当に非常態勢のもとでの対応でございまして、金利がゼロということは、やはり資本主義経済では、リスクを持った貸し出しをするのに金利を取らないということはおかしなことでございます。そのほかにも、あのとき以来、金融市場は非常にまた活気を、特に短期金融市場は活気を帯びてきまして、取引高もふえますし、いろいろな形でゼロ金利解除が一般に受け入れられたというふうに私どもは判断しております。
 第二の御質問であります、米国経済のリスクを予測できなかったのかということでございますが、これは、私どもも十月の経済の先行き展望のリポートで指摘しておったところでございますし、リスクの中で二つの点を強調したつもりでございます。一つは、米国、海外の経済がどういうふうに変わっていくかということと、もう一つは、内外の資本市場がどう変わっていくかということをリスク要因として挙げていたつもりでございます。
 このことは私ども十分予測しておりましたが、ことしの初めになってアメリカが動き始めたわけでございまして、それに対応して私どもも素早く二月から緩和体制へ移していったということは御承知のとおりでございます。
 特に、九九年の二月にゼロ金利政策をとったというときは、御承知のように、非常にデフレスパイラルの危機が迫ってきたという危機感がありましたし、大銀行の破綻が起こりつつありましたし、そういう情勢に対してゼロ金利という非常に、普通ではとてもできない異常な金融対策をとったわけで、それはやはりできるだけ早く直していきたい。金利というものはやはり金融の基本にあるものでございますから、そういう意味で、昨年の八月十一日に、金融緩和の微調整をするということで、ゼロ%を〇・二五%に上げたということでございます。このことは、中央銀行としては当然やるべきことであったというふうに思っております。

山本(幸)委員 いろいろ言いわけ、責任逃れに聞こえるようなことばかり申されましたが、しかし、倒産した企業経営者や失業の憂き目に遭った方々に対する言葉が全くなかった、そのことは私は大変残念に思います。
 最近、ある人の話を聞いて、リーダーの条件というのは三つある。一つは責任の所在をはっきりさせること、二番目、失敗は潔く認める勇気を持っていること、三番目、出処進退の潮どきをよく知っていること、こういうことでありまして、それをどう判断するかは人格の問題であるし、人間性の問題ですから、私はもうそれ以上言いませんが、倒産した企業経営者や失業の憂き目に遭った労働者のことを考えて、御自身で賢明な判断をされてもらいたいというふうに思います。
 そこで、次に、今度は本当の金融政策について聞きますが、三月十九日、今回の新しい金融調節方式、新しい金融政策が発表されました。中身は先ほど説明がありましたので、もう私から申し上げません。
 そこで、まず最初にお伺いしたいんですが、この新しい方式、新金融政策、これの最終目標は何ですか。

速水参考人 最終目標は、やはり物価の一方的な下落という最近の動きを見まして、これは安定させるべきであるというふうに考えました。日銀法の二条に書かれておりますように、物価の安定を通じて経済の持続的な成長を図ることが私どもの金融政策のねらい、理念であるということが書かれております。そのことを実行したというふうに思っております。

山本(幸)委員 率直にお認めになったのでびっくりいたしました。つまり、最終目標は物価の上昇率だと。物価の安定が最終目的であるということですね。
 では、この政策は何だ。インフレターゲティング政策そのものじゃないですか。インフレターゲティング政策というのは、あなたは記者会見でインフレターゲティング政策とはこういうことだと言っていますが、それはあなたの勝手な定義であって、いろいろなバリエーションがある。
 しかし、最も大事なことは、最終目標として何を考えているかということが決め手なんですよ。最終目的が物価の上昇率であるということであれば、インフレターゲティングになるんです。インフレターゲティング、字句のとおり、物価上昇率のターゲティングなんだ。つまり、あなたは、今回の政策はインフレターゲティングの一種であるとお認めになったわけですね。

速水参考人 私は、やはり物価というのはインフレでもないしデフレでもないように安定させていくべきだというふうに思っております。
 今回、インフレターゲティングを採用すればよかったではないかという御意見かもしれませんが、通常、インフレターゲティングと呼ばれます手法につきましては、中長期的に望ましい物価上昇率を目標として設定して、先行きの物価上昇率が望ましい物価上昇率から乖離すると予想される場合に政策変更を行っていくというのがやり方だと思います。
 ただし、現在の日本のように、物価に対して、需要の弱さに加えて規制緩和とか流通合理化といった供給面の要因が作用しております状況では、中長期的に望ましい物価上昇率を数値で示すことは甚だ難しいというふうに考えております。
 日本銀行では、こうした形でのインフレーションターゲティングは引き続き検討事項として位置づけております。今回の措置は、あくまでも、通常は行われないような政策を、現実の消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続するという時間軸を決めてコミットしたものでございます。
 したがいまして、いわゆるインフレーションターゲティングとは異なるものでございますが、物価が継続的に下落することを防止して、持続的な経済成長のための基盤を整備するという断固たる決意を示したものでございます。

山本(幸)委員 事務局が書いたものを読まざるを得ないからそういう答えになっちゃうんだけれども、私が言っているのは、あなたが勝手に決めつけているインフレターゲティングというのは、それはインフレターゲティングのやり方の一つですよ。最もオーソドックスなインフレターゲティングでしょう。しかし、インフレターゲティングというのは、いろいろなやり方がある、バリエーションがあるんですよ。
 しかし、何をもってインフレターゲティングと言うかというと、金融政策の最終目標は何ですかと聞かれたときに最終目標は物価の上昇率ですよといった場合に、インフレターゲティングと言うのですよ。それは、どの教科書にも書いてあるインフレターゲティングの定義です。それはいろいろありますよ、バリエーションは。どれをとるかだとかそんなことはあるけれども、でも私はそんなことは聞いていない。
 そういう通常の定義でのインフレターゲティングということからすれば、今回の措置は、あなたは最初、最終目標は物価の上昇率。それは数字はいろいろありますが、ここでは今言っていることだけれども、しかし、物価の上昇率、つまり物価安定。物価の上昇率があるレベルになるようにということを最終目標としてやる政策ですよと言ったんだから、これはまさにインフレターゲティングの一種と言わざるを得ないじゃないですか。違いますか。

速水参考人 最終目標は物価の安定であるということでございます。それは、インフレでもなければデフレでもない、物価を安定させて、それを通じて経済の安定的な成長をもたらすということであります。
 今回の基準は、日本経済にとって中長期的に望ましい物価上昇率というものを示したものではございません。あくまでも、通常行われないような思い切った政策を継続する場合の条件を明らかにする、それと同時に、日本銀行として、物価が継続的に下落することを防止するという決意を示したものでございます。そうした意味でのコミットメントとして、この数値が低過ぎるとは考えておりません。

山本(幸)委員 それじゃあれですか、最初にお答えになったように、最終目標は何かと聞かれたら、あなたは最終目標は消費者物価が安定的にゼロ%以上になることと答えられたじゃないですか。それを今や撤回されるんですか。そして、最終目標はわけがわからない、そういうふうに言われるんですか。どっちなんですか。

速水参考人 今の政策が、時間軸といいますか、いつまで続けるかということに対して、CPIがゼロ、マイナスでなくなるまでということを条件にコミットした次第でございます。

山本(幸)委員 私は、そういうわけのわからぬ政策をやるのはいかぬと言っているんですよ。そんなものを言うんだったら、それはまやかしであり目くらましになっちゃうから、だめだと言っているんです。
 政策というのは、何を目がけてやるんだ、何を達成しようとしてやるんだという目標がなければ、ちゃんとした政策になりませんよ。それを、私から詰められていくとインフレターゲティングの一種だと認めざるを得なくなっちゃうから、途端に、いや、それは時間軸ですよと。
 では、何が最終目標なんですか。

速水参考人 先ほどから申しておりますとおり、デフレの現状が、CPIのゼロ以下ということが安定的になくなってくるというところまで今の政策を続けるということでございます。したがいまして、目標は、物価のゼロでの安定ということが最も望ましいということでございます。

山本(幸)委員 はい、わかりました。お認めになりましたね。物価の安定、つまりゼロでの安定というのを目標にするんだという話ですね。それは、一般的な定義からいって、インフレターゲティングそのものですよ。その一種。
 では、それ以上言っても、ああでもないこうでもないとまた言うでしょうから、次に行きます。
 そうすると、私の定義によれば、日本銀行はインフレターゲティングの一種を採用した。そのときに、じゃ今度はそれが正しいかどうかという検証をしなきゃいかぬですね。正しいというか、より適切であるかどうかという検証をしなきゃいかぬ。
 それでは、あなたは今、CPI、物価が、ゼロ%が最も望ましいというふうに思っているんだ、それがあなたの言うインフレでもないデフレでもない物価上昇率だという定義になるということですね。ゼロ%が望ましいという理由は何ですか。

速水参考人 デフレでもないインフレでもない価格の安定というのが私どもの理想とするところでございます。

山本(幸)委員 インフレでもないデフレでもないというのはトートロジーであって、定義とか説明にならないのですよ。ゼロ%とおっしゃった。数字が出てきて初めて議論になる。ではゼロ%が適切かどうかという話を次にやらなきゃいかぬことになるのです。
 では、CPIでゼロ%が望ましい水準かどうか。日本銀行の調査研究でも明らかになっているし、これは世界各国の実務家の間でも経済学者の間でも明らかになっているのですが、消費者物価指数というのは上振れするのです。それは、バスケットの構成が過去のものを使うし、そして最新の新しいものを反映できないし、技術革新とか、あなたが好きな流通革命とか、起こってきたものがすぐに反映されない。その結果、実際に統計的な数字として出てくる値は、現実の本当の実体の物価より上に出るのですよ。日本銀行の研究者の報告によれば、日本では大体〇・九%上振れする、アメリカでは一・一%上振れすると出ています。つまり、一%前後は上振れして出る。あなたの言っているように、CPIがゼロ%ということは、そういうことから考えると、実際はマイナス一%前後のところになるのです。
 あなたは先ほどゼロ%が望ましいと言われましたが、ではあなたは、実際のところではマイナス一%、つまりデフレの状況が最も望ましいとおっしゃりたいのですか。

速水参考人 今回の基準は、日本経済にとって中長期的に望ましい物価の上昇率を示したものではございません。あくまでも、通常は行われないような思い切った政策を継続する条件を明らかにしますとともに、日本銀行として物価が継続的に下落することを防止するという断固たる決意を示したものでございます。
 中長期的に望ましい率が何なのかということは、私どもとしてもずっと検討を続けておる次第でございます。

山本(幸)委員 全く私の質問に答えていないですね。どうしてですか。私は理論的な話をしているのですよ。CPIゼロ%というのは、実際はマイナス一%ぐらいですよというのが実務家の間でも学者の間でも共通した理解です。それを、ゼロ%というのを主張されるのだったら、実際はデフレ状態であるということを日本銀行は望んでいるとしか思えないのだけれども、それでいいのですかという質問をしているのですが、ちっともそういう質問に答えてくれない。大体、その辺がよくわかっていないということがわかりましたから、次に行きます。
 それでは、今度の政策で、日銀当座預金で五兆円を目指す、つまり約一兆円の積み増しをするということですね。この日銀当座預金の五兆円というのは一体何ですか。これは、いわゆる中間目標というものですか、それとも政策手段というべきものですか。

速水参考人 五兆円というのは、日々の当座預金残高の目標として金融市場局が、資金需給やそのときそのときの市場の情勢を見ながら、口座残高が五兆円になるように資金の供給、吸収を行っていくという目標でございます。当座預金のターゲットにつきましては、最近の残高が四兆円でございます。ゼロ金利のときも四兆六千億ぐらいまでいったように記憶しております。そういうことを考えまして、一兆円を増額して五兆円程度とすることが適当と判断した次第でございます。
 この結果、無担保コールレートは、これまでの誘導目標であった〇・一五%からさらに低下して下がっていくということも、従来のゼロ金利よりも多少弾力的に動いて市場性がそこに出てくるというふうに期待しております。今動きを見ておりましても若干のばらつきがございますし、今後も、リスクの反映といった質の面でも多少の金利の変化は出てくると思います。
 当面、こういった金利動向を含めまして、当座預金残高の大幅な増加が金融・資本市場や金融機関の行動、ひいては経済全体にどのような影響を与えていくのかということを注意深く見ていくことができるというふうに思っております。

山本(幸)委員 当座預金残高というのは、今のお答えから見ると中間目標だと考えているようですね。(発言する者あり)中間目標でもいいし操作目標でもいいですよ。そう考えているようですね。
 そうしたら、大事なことは、その中間目標、操作目標というものと最終目標との間の関係がちゃんといっているかどうかということが次の大事な課題になるわけですね。
 あなたは、最終目標は物価の上昇率だと言われた。そして、それを実現するための中間目標、操作目標として当座預金を考えると。では、それをやれば最終目標というものが達成できるという関係にあると思っているということなんでしょうね。ところが、これは従来日本銀行は否定してきた考えですよね。それがはっきりと変わったとお認めになるのかどうか。
 それから、私は非常に問題だと思っているのは、積み増しが一兆円という数字になっている。これは、ゼロ金利のときの状態がそうなんですが、一兆円という数字で果たして最終目標を達成できることになるかどうか非常に疑問がある。
 一兆円ぐらいの程度だったら、短資会社に滞留しちゃう。日銀は、去年マネタリーベースの定義を変えまして、銀行の当座預金だけじゃなくて短資会社や証券会社等の当座預金もマネタリーベースに入れたわけですね。その結果どうなるかというと、短資会社に一兆円が滞留していたら、それは銀行の方に行かない。日銀が完全にコントロールできる短資会社でお金を滞留させておけば、銀行には行かないで、結局本当の金融緩和ということにつながらないおそれがあるというのが私が非常に疑念しているところなんです。
 最初の議論でインフレターゲティングというのがなぜ出てきたかというと、そういう操作目標とかと最終目標との関係が不安定になってきた、通常日本銀行が操作できるそういう数字と最終的な物価水準というのが、どうも関係が不安定になってきた。これは日本銀行も指摘していることですね。それは、金融革新とかが進んできたら、そういうことが起こるのでしょう。
 そこで、そういういろいろな混乱を避けるために、もう目標は最終目標一本に絞ろう、そして、あれをやるとか、あれをこれだけに制限するとか、そんなことじゃなくて、その最終目標ということだけを見てできるだけやりましょうというのが本来の姿であるべきだし、私はその方が効果があると思う。これを一兆円ということに限定しているということは、その効果を減殺するというように思います。
 その意味で、今回の措置はとても効果があるように思えない。本当に効果があると思ったら、当座預金というところで一兆円という上限なんかは置く必要ないのです。最終目標であるCPIがゼロ%以上になるということを目指して、幾らでもやればいいじゃないですか。そういうことを考えませんか。

山口委員長 時間が来ていますので、簡潔に。

速水参考人 最終目標という言葉を使われましたけれども、今度の当座預金五兆円というのは、これからの決定会合で、その後の推移を見、状況を見ながら討議して、引き続き据え置くかどうするかということは毎回議論してまいりたいと思っております。そういうふうに固定的なターゲットとは思っておりません。そういう御理解を願いたいと思います。

山本(幸)委員 ありがとうございました。時間が足りないので詰め切れませんでしたが、いろいろ重要な指摘をいただきました。
 しかし私は、やはりはっきりと、しかももっと、デフレ状況じゃない目標をしっかり持って、そのためには別に当座預金とか金額は制限する必要もないし、やれることは何でもやるという方針が一番いいのじゃないかなというように思っていますので、今後ともそういうことで追及していきたいと思います。
 終わります。