緊急提言(2000.8.9)日銀は、ゼロ金利解除を急ぐべきでない!

緊急提言

日銀は、ゼロ金利解除を急ぐべきでない!
平成12年8月9日

1.日本経済は、森総理大臣が指摘されるごとく、「必ずしも完全に回復軌道に乗っている訳でなく、非常に微妙な段階であり、まだ、景気を本格的に回復させるという基本的スタンスを採るべき」状況にある。株価も四月のピーク2万8百円台から1万6千円割れにまで下落、地価も依然下がり続けている。
このような状況下で、ゼロ金利解除を強行することは、百害あって一利なく、また、政府の指針と整合性を保つべきとする日銀第四条の趣旨にも反する。

2.日本経済の最大の問題は、経済の血液たるお金が必要な所へ十分に行き渡ってないということである。これは、名目金利がゼロであっても、物価水準がマイナスであるために、経済活動の真のコストである実質金利が高止まりしているからである。お金の量(マネーサプライ=M2+CD)の対前年伸び率は7月で2.0%と異常な低水準にある。その元となる日銀がコントロールできるマネタリー・ベース(流通現金+日銀当座預金)の対前年伸び率も7月5.8%と三ヶ月連続して低下しており、我々の試算では、必要な伸び率の半分以下でしかない。
ゼロ金利解除は、お金の量をいよいよ減らすという政策であり、現状では到底受け入れがたい。日銀は、むしろ、あらゆる手段を講じて、お金の量を増やす手立てを考えるべきである。

3.速水日銀総裁は「デフレ懸念の払拭が展望できた」と主張しておられるが、そもそも「デフレ懸念の払拭」とは何をいみするのか、明確に定義された試しはなく、このような曖昧な概念を根拠として政策決定が行われるのは問題がある。
ゼロ金利政策は、景気が本格的に回復してくる中で期待物価上昇率が正常化し、金利先高感が起こってくる流れの中で、解除される条件が整ってくるはずである。
以上、緊急提言する。

衆議院議員   山 本 幸 三
衆議院議員   渡 辺 喜 美
慶応大学教授   深 尾 光 洋
メリルリンチ証券・チーフエコノミスト
イエスパー・コール
住友生命総合研究所・主任研究員   霧 島 和 孝
三井海上基礎研究所・ 国際金融研究センター所長    櫻 井   眞
三和総合研究所・投資調査部長   嶋 中 雄 二

日本経済新聞(平成12年8月10日)
自民議員や大学教授ら解除反対を提言
衆院の渡辺喜美(自民)、山本幸三(21世紀クラブ)両議員らは9日、「日銀はゼロ金利政策の解除を急ぐべきでない」とする緊急提言を発表した。株価の低迷や地価の下落が続く中で「ゼロ金利解除の強行は百害あって一利なし」と」強調、解除に意欲を示す日銀の姿勢を批判した。
提言には深尾光洋慶大教授、住友生命総合研究所の霧島和孝主任研究員ら学者や民間エコノミストも参加した。ゼロ金利解除に反対する理由としては①日経平均株価が一時1万6000円を割り、地価も下げ続けている②物価水準がマイナスのため実質金利が高止まりしている③速水優日銀総裁がゼロ金利解除の条件としている「デフレ懸念の払拭」の定義が明確でない—の3点を挙げた。同時に「(ゼロ金利解除を目指す日銀の姿勢は)政府の指針と整合性を保つべきだとする日銀法四条の趣旨にも反する」と指摘11日の金融政策決定会合で日銀がゼロ金利解除に踏み切れば、法的問題も生じかねないとの見解を示した。