そごう問題とゼロ金利解除について(2000.8.2)予算委員会 質問議事録

衆議院予算委員会議事録 (平成12年8月2日)

原田委員長》 これにて横光君の質疑は終了いたしました。
次に、山本幸三君。

《山本(幸)委員》
21世紀クラブの山本幸三です。
こういう形で質問に立つのは大変複雑な心境でもありますが、議論を聞いておって、もう一つ複雑になったことがありまして、それはそごう問題に関連する瑕疵担保の問題であります。 
かつて私も自民党内の議論に参加しておったわけでありますが、そのときに個人的に一貫して、瑕疵担保は、通常のリスクを買い取る銀行は負うべきである、したがって反対であるという主張をしておりました。同じように反対を主張しておられた方は伊吹文明先生だけだったと思いますけれども、残念ながら、二人の反対意見は通らなかったわけでありますけれども、これは今でも、私は同じように、やはり銀行経営者というのは、リスクをとるというのが経営者であると思うので、過剰なリスクをとらせる必要はありませんけれども、通常リスクは当然とるというのが原則である。これは、スウェーデンのときにはっきりとそれは原則で打ち立てられているので、そう思っております。それが嫌だというなら銀行経営をする資格はないと思っております。
これについてはあした少し詳しくやりたいと思いますが、これに関連して、先ほど金融再生法の問題が挙げられました。私は、金融再生法でも最終的には整理できるというように思っておりまして、買い手が見つからなければRTCに移して清算、整理すればいい話でありますから、これはできると思っておりますが、そのときに、一方的に現在の津島大臣が批判されましたので、私は一方的に批判だけされるのはフェアではないと思うので、御意見があれば、まずお伺いしたい。

《津島国務大臣》
所管でないのでございますが、けさほどから何回も金融再生法の成立をめぐって、私どもの過去のことについて御議論がございました。
今申し上げられることは、今から二年前、小渕内閣が成立をいたしました後の平成十年の秋の日本の経済状態というのは、まさに危機的な状態でございました。そして、長銀を初めとして幾つかの銀行が破綻に瀕しておったわけであります。これをどのように処理をするかということで、私どもは、まさに政党の枠を超えて議論をいたしました。そして、国会の御意思で成立をさせていただいたのが金融再生法でございます。
この再生法の基本的な考え方は、問題のある銀行の不良債権は徹底的に処理しよう、この点では私は、けさからいろいろ御議論がございましたが、民主党の皆さん方と基本的には大きな違いはなかったと思います。徹底的に処理をした上で、国民経済的になお仕事をしていただける銀行には、その銀行の経営責任を徹底的に問うた上で引き続いて仕事をしていただこう、ここまでは私どもは合意をいたしました。
この場合に、先ほど自由党の代表からおっしゃった、何でも整理をしてしまえというのは、あの状態で問題銀行を全部整理したら、恐らく国民経済に対する影響ははかり知れない、破滅的なものであったろう。恐らく、政策の選択としてはとるべきでなかったし、とれなかった。このことだけ申し上げたいと思います。 あと、瑕疵担保責任等にかかわる問題は、この不良債権の整理のペースをどういうふうにやったかということで、この点では御議論の余地はあるであろう。これだけ申し上げさせていただきます。
終わります。

《山本(幸)委員》
この点については、詳しいことはまたあすやらせていただきたいと思いますが、次に、ゼロ金利政策についてお伺いしたいと思います。
まず最初に、総理からお伺いしたいと思います。
ゼロ金利政策について、日銀総裁は早く解除したいとしきりに発言しておられるようでありますけれども、発言するたびに株が落ちる。それに対して、先月の政策委員会の決定の前に森総理は、日本経済の現状を評価されて、まだ厳しいと。したがって、ある意味でゼロ金利解除は好ましくないという趣旨の発言をされました。
私はこれは高く評価しておりまして、これこそまさに政治のリーダーシップと思っているのですが、総理の発言は大変重い。このことが日銀政策委員会に大きな影響を与えたことは間違いないと思いますし、それを受けて、まあそごう問題もあったわけでありますが、政策委員会はゼロ金利解除をやらないということにいたしました。しかし、その直後、総裁は、いや、八月にやるかもしれないような感じの発言をしておりまして、またまた株は下がって、経済の状況に不確実性を生んでいると私は思っております。
この点について、総理は現在も同じようなお考えでいらっしゃるのかどうか、お伺いしたいと思います。

《森内閣総理大臣》
私は、そのたびごとに申し上げていることでございますが、金融政策につきまして、これは日本銀行の所管事項でございますから、日銀政策委員会あるいは金融政策決定会合において、十分に現在の景気の動向等を踏まえて御議論をされて御決定をなさることだ、適切な対応をなさることだ、そういう理解を大前提といたしております。
先ほどからも議論が出ておりますように、今の日本の経済は必ずしも完全に景気回復の軌道に乗ったという見方を私はいたしておりません。非常にまだ微妙な段階、特に、消費については力強さもございませんし、雇用の問題もまだ一進一退をいたしております。ただ、有効求人倍率等、これから先々に対して先行指標としてはいい方向に行っているかなという感じでございますので、こういう大事なときこそ、まだ、やはり景気を本格的に回復するという基本的なスタンスを私はとっていきたい、このように考えております。

《山本(幸)委員》
私は、総理のお考え、全くそのとおりではないかなというふうに思います。 けさの議論でも、経企庁長官も、確かに景気の回復の兆しは一部にあると。設備投資。しかし、設備投資といってもひとり勝ちは製造業の大手だけですからね。しかし、雇用や消費あるいは倒産等を考えると、必ずしも順調とだけ言える状況ではないというお話がありました。
私も、確かに一部は回復の兆しというのは出ているけれども、その力はまだまだ弱い。株価も下がってきている。雇用も消費もまだまだ心配。輸出も落ち込んでいる。現に、円の実効レートというのは九五年の八十円台と同水準なんですね。明らかに円高でありますし、輸出が落ちている。銀行の貸し出しも減少している。これから国会でいろいろ厳しい議論が行われるわけですから、第二、第三のそごうのような処理が出てくることは大いに想像できる。マネーの量も大変縮小している。こういう状況で、ゼロ金利解除なんというのは全くあり得ないと私は思うんですが、日銀総裁、いかがですか。

《速水参考人》
お答えいたします。
金融政策は、毎回の金融政策決定会合におきまして、経済金融情勢を総括的に検討した上で決定するものでございます。
あらかじめ特定の方針を前提として議論をするわけではございません。したがいまして、あくまでも一般論としてお答え申し上げたいと思います。
初めに申し上げておきたいのは、先ほど金融の引き締めというお言葉をちょっと使っておられたように思いますが、私どもがゼロ金利の解除を議論するときには、これが金融の引き締めであるというふうには思っておりません。金融緩和をどうやって続けていくかということで議論をしておるわけでございます。
ゼロ金利政策につきましては、昨年の二月に、日本経済が金融システム不安とともにデフレスパイラルの瀬戸際という危機的な情勢に陥りまして、この非常事態に対応するために講じました前例のない金融緩和政策であったわけでございます。その後、経済情勢は大きく改善してきております。現在では、緩やかながら回復傾向が明らかになってきていると思います。このために、我々がゼロ金利政策解除の条件としてまいりましたデフレ懸念の払拭が展望できるような情勢に至りつつあるという判断をいたしております。
先日の私どもの支店長会議におきましても、大阪、名古屋、金沢、福岡といったような大都市の大部分が、輸出の増加もございますけれども、大勢として、民間企業の活発化、リストラの効果がはっきりと出てきているということを報告しておりました。
このような情勢のもとで極端な金融緩和政策を続けておりますと、いずれ、経済物価情勢の大きな変動をもたらしたり、あるいはより急激な金利調整が必要となるようなリスクが増大したりいたします。これは私どもの経験からわかるところでございますが、経済の先行きが不確実であることを踏まえますと、経済の改善状況を確認しつつ金融緩和の程度を微調整するということが、長い目で見て、健全な経済発展に資するものと考えております。
以上のような考え方のもとで、次回以降の金融政策決定会合におきましても、情勢判断に誤りなきを期して、適切な政策判断を下してまいりたいと考えております。

《山本(幸)委員》
大変おもしろいことをおっしゃいました。ゼロ金利解除をしても引き締めにならない。ゼロ金利解除というのは金利を上げるということでしょう。金利を上げることが引き締めにならないという理論があるんですか。そんなことを書いている経済学の教科書があったら教えてください。これが一つ。
それから、デフレ懸念の払拭が展望できるということが条件ということで、今展望できるという判断をしているということですが、そもそもデフレ懸念の払拭が展望できるというのはどういうことですか。これはしっかりと定義してください。経済理論の議論で、言葉の定義をしないで議論なんかできない。どんな解釈でもできるような理論だったら、論議の進めようがないんですね。
それから三番目に、緩和がずっと続くと、要するに物価について将来的に、インフレリスクと言い直しますが、そういう可能性が出てくるということをおっしゃいました、それが心配だと。現状の日本でインフレリスクの心配がどこにあるんですか。

《速水参考人》
三つの御質問にお答えしたいと思います。
最初にお聞きになりました、引き締めではないということはどういうことかという御質問でございますが、昨年のデフレスパイラルの懸念があり、システミックなリスクが起こったときにできるだけの緩和政策をとるということで、ゼロ金利というのを初めてとったわけでございます。
日本銀行は、御承知のように、一九九〇年からずっと金利を下げ通しに下げてきております。一九九五年から公定歩合は〇・五でございますけれども、ここ二年、運用金利を、コール金利をゼロ近くまで下げてきたわけでございます。これは非常事態に対する危機的な対策でございまして、これを前に戻すことが必要であるというふうに私どもは思っております。それは金融を引き締めるのではなくて、潤沢な資金の供給をやりながら、金利をゼロにする前の段階にまで戻していくということでございます。
それから第二の、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢とは何かという御質問でございますが、金融政策運営上問題とすべきデフレ懸念と申しますと、景気と物価の悪循環をもたらすような物価低下圧力があるということを考えるわけでございます。
例えば技術革新などの動きが特定の物価指数を押し下げる方向に働いたとしても、それは、経済活動の活発化とか企業収益の増加につながっているような場合には、デフレ的ととらえる必要はないと思います。
また、従来ございました諸規制の緩和とか撤廃といったようなことが流通の合理化をもたらして、輸入品も含めて競争が激化していって価格が下がっていく、またサービス部門での値下げが進んでいく、今起こりつつあるような状態につきましても、これは、経済活動の活発化とか企業収益の増加につながりこそすれ、需給のギャップを拡大していくというものではないというふうに思っております。
こういうふうに考えますと、デフレ懸念の払拭が展望できるということの意味は、需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力が十分に小さくなること、さらに言いかえますと、民間需要の自律的回復の展望が得られるということになると思います。
 こうした観点から、日本銀行では民間需要の動きに注目しておりますが、このうち設備投資は明確な増加傾向をたどっております。一方、個人消費は依然回復感に乏しい展開となっておりますが、消費者マインドは改善傾向にあるほか、賃金が前年をわずかながら上回って、また雇用者数の減少傾向に歯どめがかかりつつあるなど、前向きの動きも出始めております。
このような状況を踏まえますと、需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力というのは大きく後退してきていると思います。デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢に至りつつあるというものと考えております。
第三の御質問、物価の安定とはどういう意味なのかという御質問かと思います。そうですか。それでよろしいですか。

《山本(幸)委員》
二年前の、コールを下げる前に戻すことが必要だと。
何で必要なんですかね。今、日本経済はまさにデフレ的状況にあって、需給ギャップがあって、回復の兆しがやっと出てきているときですよ。それを金融の面でつぶしちゃったら、また元も子もなくなりますよ。もし、ゼロ金利を解除して実体経済にいい影響を与えるというのなら、どこにどういういい影響を与えるのか証明しなきゃ。そして、それがデフレ懸念の払拭だと。これは、今おっしゃったことは全く定義になっていないと思いますので、決して説得的じゃない。あしたゆっくりやりたいと思います。 終わります。

《原田委員長》
これにて山本君の質疑は終了いたしました。