第40話:地域開発 ~”北九州ルネサンス”~

 

幸ちゃん物語 第40話 (北九州地域再活性化私案編)

地域開発

~北九州ルネッサンス~

“北九州ルネサンスのために”

 インキュベーターの機能は、以下のように要約できる。

① インキュベーターは通常、1棟ないし数棟のビルのなかに20~30社のスタート・アップ企業を入居させる。インキュベーター用ビルとしては、遊休の工場、倉庫などを再利用することが多い。

② ビルの建設、改造には、連邦・地方政府の補助金や低利融資が利用されることが多い。このためテナント企業は、低廉なレントでスペースを賃借りすることができる。

③ インキュベーターは、レセプション、電話対応、メイル・サービス、タイプ、コピー、ワープロなどのビジネス・サービスや経営・財務コンサルティング、技術カウンセリング、コンピュータ・サービスなどのマネジメント・サービスを提供する。テナントは、必要とするサービスを選択し利用することができる。

④ インキュベーター内で形成される企業家コミュニティでは、おのずと共働の雰囲気が醸成される。こうした環境が、事業を成功させるための重要な要件となる。

⑤ インキュベーターによる保育期間(例えば、入居期間を3~5年に制限する)を終えたテナント企業は、地域内に新たな事業スペースを確保し、事業の継続的発展を図る。このようにして地域内に、新しい雇用、新しい産業、新しい技術が根付くことになる。

 このようなインキュベーターの事業主体は、地方自治体、非営利地域開発法人、大学および民間企業である。事業主体が地方自治体や地域開発法人の場合のインキュベーター設立の主目的は、地域内雇用の増加、産業基盤の多様化、遊休ビルの活用による市街地再開発などである。一方、大学関連型のインキュベーターでは、大学の研究者と企業家との交流による技術転移の促進、ハイテク・ビジネスの復興などが期待される。また、民間企業はインキュベーター事業そのものを投資機会としてとらえている。これらのインキュベーター事業は、多くの場合州政府、地方自治体および地元経済界との密接な連携のもとに行なわれており、地域レベルでの産業政策遂行の重要な手段となっている。

 インキュベーターは、「どの地域にも必ず潜在的な企業家が存在する」という大命題を前提としている。そして、それぞれの地域がそれぞれの域内の資源を活用して経済発展を図るので、地域間で企業や人材を取り合うことは少ない。この点でインキュベーターによる経済開発は、他力本願的な企業誘致とは本質的に異なっている。企業誘致とは誘致のための激しい競争がゼロ・サム・ゲームなら、インキュベーターによる経済効果は、プラス・サム・ゲームである。こうした相違が、”自家製の経済(ホーム・メイド・エコノミー)”を目指す各地域において、インキュベーターへの関心を高める1つの要因となっている。

 さて、そこで北九州地域におけるインキュベーターの可能性を考えてみると、おおいに希望がもてる。

 第1に末吉新市長のもと、北九州ルネサンスを合言葉に、北九州経済を自立させていこうという大きな気運が盛り上がっていることがある。

 第2に、新日鉄、住金、旧国鉄といった重厚長大産業で培われた技術をもつ、潜在的な企業家がかなり存在するものと思われる。

 第3に、重厚長大産業が残した工場跡、倉庫跡などが使用できる可能性がある。

 第4に、これら大企業の協力が期待できる。

 第5に、北九大、九州工大、西日本工大、産業医大、八幡大学などの協力も期待できる。

 以下のようなことから、産・官・学が結束してうまく仕組めば、北九州版インキュベーターは、意外に大きな役割を果たすのではないか。そして、これを、徐々に、京築・田川地区に広げていけば、案外スムーズにハイテク、ニュービジネスの育成が図られるのではないかと思う。これに、高速自動車網が整えば、北九州市、京築、田川の3地区を結ぶソフト・トライアングルの出現も夢ではない。

 国のレベルでも、地域経済の自立と活性化を図るこのインキュベーターについて、何らかの助成措置が行なわれるよう積極的に働きかけていきたい。