活動報告

山本幸三地方創生探訪記録@石川、福井、岐阜 (2017.7.18-19)

先月18、19日は、石川県の小松市、加賀市、福井県は鯖江市、岐阜県は八百津町、多治見市

訪問してまいりました。一部抜粋し、本HPでご報告致します。

 

 

今回のトップ画は、岐阜県は八百津町の「杉原千畝記念館」を見学した際の様子です。杉原千畝

んについては、紹介の必要がないかと思いますが、なんとこちらの八百津町の生まれだそうで、そ

の大戦中の人道的な精神と功績を顕彰する記念館となっています。建物は岐阜県産の総檜造りで、

木組フレームによる広がりのある展示室や孤高な千畝さんの執務室を再現した「決断の部屋」(写

真)、八百津の町を見晴らす展望室で構成されています。全国から毎年4万~5万人が訪れるそう

で、イスラエルを中心に海外からの見学者も増えているとの事。

ビザ発給の記録資料である”杉原リスト”がユネスコの「世界の遺産」(世界記憶遺産)登録に向け申請

をされているようで、地域資源をいかした地方創生の取組として、私も登録へ応援してまいりま

す。

 

ー 石川県小松市 ー

・こまつの杜

 

(敷地内には、チリの銅山で使用されていた世界最大級のダンプトラック「コマツ930E」が展示されています)

「こまつの杜」は、コマツ創立90周年の記念事業として、10年後の100周年とその先の未来

を見据え、重要な経営資源である「人」と「技術」を更に伸ばしていくために、2011年5月1

3日に誕生しています。施設としては、コマツグループ社員の人材育成機能を集約した「コマツウ

ェイ研修センター」、子供たちに自然や理科、ものづくりに興味を抱く機会を積極的に提供する場

所として、建設機械や産業機械及びその技術を展示・体験するコーナーである「わくわくコマツ

館」、約2万㎡の敷地に水辺空間や植生を施し、加賀地方の自然に触れあえる空間である「げんき

里山」からなります。話をお聞きして驚いたのは、地元の経済に貢献するために、施設には食堂や

宿泊施設をつくっておらず、周囲の施設を使うようになっているということです。全国から、こち

らへ会議や研修に来るわけですから、貢献度はかなり高いことでしょう。

そして、それだけではなく、「わくわくコマツ館」や「げんき里山」を核として、地元行政や教育

関係者、新設されたNPO法人「みどりのこまつスクスク会」(OBが中心となり運営)、粟津工場

OB会の方々に協力してもらいながらソフト面での充実を図っています。これは、学びや体験の場所

として多くの子供たちが社会科見学で集い、理科や自然、ものづくりに興味を抱く機会を積極的に

提供することで、コマツ発祥の地である小松市に貢献しています。また、技術はあるが、予算が足

りない県内の中小企業を応援するために、コマツと北國銀行、石川県が資金を出し合い、技術開発

資金を提供しています。

特に、農林業技術に特化したものになっており、彼らの技術開発によって、農林業経営者からの現

場のニーズを具体化し、サポートしているといいます。やはり、地方創生に一次産業の振興は欠か

せません。そして、地元粟津地区の事業所では、過去五年間で地元大学から40名以上を採用して

いるとの事で、大変心強い限りです。

本社機能の一部である、研修施設を小松に移転して、地元での社員教育と、地元雇用と経済活性化

の双方に取り組まれている素晴らしい事例でありました。

 

 

・本田農園

コマツの野路会長に施設の説明をしていただきました。

 

コマツの技術を利用したトマトの栽培ハウスです。

 

本田農場は、平成27年度から、石川県農場試験場において、同コマツの地下水冷房や暖気排気装

置等を活用し、従来、春・秋のみ収穫していたトマトを夏場も収穫可能にすることで、収穫期間の

拡大による収量、所得の向上を図るため、高収益施設園芸モデルづくりに取組んでいます。

また、平成29年度は、国の革新的技術開発・緊急展開事業を活用して、農業試験場で技術確立し

た地下水冷房等の成果について、小松、白山、金沢の本県トマト産地で実証を行い、早期に技術の

普及を図っています。

今回、特に感銘を受けたのは、気象条件や出荷金額をはじめ、各種データをIT活用することによ

り、トマト栽培の綿密な原価計算を行い、稼ぐ農業の確立に向け、先進的な取り組みを行っている

ことです。そこまでお金をかけないで、関係者間で連携を深めることで、農業生産性の向上を図る

取組みであり、全国的に地方創生のモデルになる取組みであると思います。

 

ー 福井県鯖江市 ー

・株式会社シャルマン

株式会社シャルマンは1956年に「堀川製作所」として、眼鏡部品製造で創業しており、現在で

は、眼鏡枠の企画・開発・製造・販売まで一貫して手掛ける一貫生産メーカーに成長しています。

世界主要12ヶ国に直販しているほか、代理店を通じて計100ヶ国以上に販売していて、年間4

40万枚以上の眼鏡枠を販売しています。

そして、2012年には、なんと医療分野にも参入しており、眼鏡枠の開発・製造を通して培った

素材開発、金属精密加工技術を活かして、チタン製を中心とした眼科用・脳外科用手術器具を開発

しています。特にこの医療分野においては、流通が独特で相当ご苦労をされたようですが、地方創

生交付金などを活用しながら、海外の市場調査を行って、医療機器国際見本市「MEDICA」や米国

眼科学会併設展示会に「鯖江産」手術用器具を出展しており、2015年度は初年度ながら世界医

療機器有力商社計30社との商談にも成功したといいます。

また、このような医療分野における産地内協力工場は、約30社であり産地中核企業として域

内工場に技術指導や技術移転を進め、医療分野の新天地形成が大いに期待できます。

本社機能の地方移転も大切ですが、元々ある地元企業を大きく伸ばしていくのもやはり重要です。

全国各地でこうした動きが出てきたときに、カギとなるのはやはり、販路の拡大でありますので、

ジェトロなどをうまく活用していってほしいと思います。

 

・めがね会館

福井県は、国内生産フレームの9割以上のシェアを持つ、眼鏡の産地でありますが、今回視察しま

しためがね会館には、100年の歴史の中で、常に進化し続けるめがねづくりの歴史を学ぶことが

できる「めがね博物館」やめがねショップ等が入る「めがねミュージアム」が入っています。

(槙野市長(右)と福野社長(左)から取組についてうかがいます。)

 

・(株)jig.jp(ジグジェイピー)

 

今回は、そちらを見学するとともに、同会館の8階に入っている「(株)jig.jp」の取組と鯖江市のオ

ープンデータの活用の取組についても伺いました。(株)jig.jpは、ソフトウェアの企画・開発・提供

を行う株式会社で、福井県情報システム工業会とともに、福井県と連携し、継続的にアプリが創造

されるビジネスモデルである『福井オープンデータ エコシステム』構築を支援しています。社長

の福野氏は、W3C(Web技術の国際標準化団体のワールドワイドウェブコンソーシアム)の日本マネ

ージャーである一色正男慶応大学教授とともに槙野百男鯖江市長に「データシティ鯖江」を提案

し、鯖江市がオープンガバメントに取組むきっかけとなった方々の一人で、鯖江市とオープンデー

タを活用したシステムの開発等に協力されています。オープンデータとは、「機械判読に適したデ

ータ形式で、二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータ」であり「人手を多くかけずにデー

タの二次利用を可能とするもの」のことで、この推進により、行政の透明性・信頼性の向上、国民

参加・官民協働の推進、経済の活性化・行政の効率化が三位一体で進むことが期待されています。

こちらでは、例えば、市の基本情報や災害や避難所データはもちろんのこと、最近ではオープンデ

ータを活用した公共交通の振興に取り組んでおり、鯖江市を走る公共バス「つつじバス」のバス利

用者の動向把握のために、これまでは運転手や市職員が手動でデータ集計していたものを、「バス

乗客リアルタイムオープンデータシステム」を鯖江市と「さくらインターネット株式会社」ととも

に共同開発しています。これにより、バス乗降時に運転手が操作盤のボタンを押すだけで自動的に

乗降者データを集計できるようになり、こうしたデータを、オープンデータとしてウェブサイト

「データシティ鯖江」から誰でも無料に利用できるようになっています。これをもとに、アプリの

作成などにも役立てることができ、バス利用者が事前に混雑状況を把握できるようなアプリも作成

されているようです。

(プログラミング教室は、子ども霞が関見学デーでも開講されています。 山口俊一大臣(当時)も見学にこられたようです)

また、このほかにも、「すべての子供たちにプログラミングを」というスローガンの下で、

わずか1500円で組み立てることのできるコンピュータ『IchigoJam』を開発し、プログラミング

教育の支援を地元の子供たちを中心に行っています。早いうちからプログラミングという環境に触

れて貰う事で、将来、この業界を牽引する人材が生まれてくるように、次の世代を見据えられてい

ます。以上、鯖江市での地元企業を活用した先進的な企業活動、自治体と連携した意欲ある地域活

性化の取組状況や具体的な成果等を確認することができました。オープンデータ先進都市である

「鯖江市」の取組に期待したいと思います。

 

ー 多治見市 ー

・多治見市本町ながせ商店街

(店内では、古川・多治見市長より中心市街地活性化についての取組を伺いました。)

 

(商店街にある空き店舗を活用した「カフェ温土」には、多くの作品が展示されていました)

 

多治見駅前の「ながせ商店街」においては、中心市街地の活性化の場として再生することを目指

し、「多治見まちづくり株式会社」(商業者を中心に東濃信用金庫や市が出資して平成13年に設

立)を中心に、空き店舗を活用した新規出店を支援しています。新規出店を希望する若い事業者の改

装費支援等により、昨年度までの三年間で約30軒の空き店舗がリノベーションされているそうで

す。

 

そして、何よりもこの多治見市は「美濃焼」があるように、陶磁器生産の国内生産量約5割を

誇る「やきもの」のまちでもあります。こちらでは、陶芸が体験できる焼窯の備えられた、器を楽

しむことのできる工房カフェや若手陶芸家の作品を展示した陶芸ギャラリーなど陶芸をテーマとし

た空き店舗活用で、地場産業である陶芸を中心としたものづくり産業の育成・活性化の場として再

生することを目指しています。このほかにも、パーク&ライドの拠点となっている駅周辺の広場の

整備や賑わいづくりのイベントの実施と併せ、まちなかの回遊性を向上させ、来街者を増加させて

います。特に、駅前広場を民間開放するため、届け出により出店できる仕組みを整備したことで、

4ヶ月で74件の出店届け出がったそうで、大きな成果があったようです。また、こうした中心部

を再開発に加えて、中心地と郊外を結ぶタクシーで結ぶ事業などにも取り組まれており、これから

人口減少社会を迎える中で、地方創生やコンパクトシティーの観点からも高く評価できるものと感

じました。

 

以上。