証券取引における問題に関する件(2012.3.5) 予算委員会第三分科会 質問議事録

【証券取引等監視委員会及び証券取引における問題に関する件】

山本(幸)分科員  きょうは、敬愛する自見大臣にわざわざ来ていただきまして、分科会は個別の案件を取り扱ってもいいということになっていますので、少し個別の案件の話をさせてもらいたいと思うんですが、最初に、証券取引等監視委員会の問題であります。

 

 実は、インサイダー取引の嫌疑がかけられた事件がありまして、嫌疑者は民間の金融関係の会社の社長さんだということでありますが、その情報伝達者として、ある証券会社の部長さんが、Aさんといいますが、その会社の社長さんと同時に強制調査を受けて、今も参考人という立場だと思いますけれども、調査の対象になっているわけであります。

 たまたま、この部長さんは私の知人でありまして、そういうインサイダー取引の可能性があるのならしようがないじゃないかと言ったら、いや、自分は全く身に覚えがない、社長さんの株取引なんて一切知らないし、金銭の授受も一円もないということでありまして、それならそれで堂々と闘えばいいじゃないかということでやっているわけでありますが、いつまでたっても結論が出ない、これが私は大問題だと思っております。

 九月に始まってもう六カ月目に入ってきているわけでありますけれども、情報伝達したかどうかというのは、そんなものは私の感覚でいうと、一カ月もあればいろいろなパソコンとか書類とかを見て証拠があるかどうかわかるはずでありまして、結局、そういう確証がつかめない、その結果、何とか本人の自白に持っていきたいということなんでしょう。いろいろな形で、陰に陽に、ある意味でいじめみたいな感じで調査が行われている。

 問題は、その間にその情報がリークされまして、これは出所がわからないからどこだと言えないんですけれども、銘柄まで出ているということになると、これは監視委員会、金融庁関係から出たとしか思えないわけであります。

 それで結局、新聞沙汰になって、その結果、会社も個人も実損が出ている、実害が出ている。会社は、いろいろな取引で主幹事を外されるとか提案を受け付けられないとか、実損が出ている。個人についても、ほかの仕事を一切できないわけでありますし、ある意味で退任に追い込まれるような状況になりつつある。これは本当に、嫌疑、そういうものが犯則行為にならないということになれば、誰がその責任をとるのかという話にもなってくるわけであります。

 しかも、その個人の非常に必要とするパスポートとか自宅用のパソコンとか、自宅用のパソコンなんてちょっと調べれば内容は全部コピーもできるだろうし、業務と関係ないんですからすぐ返してしかるべきだと思うんですけれども、そういうものも、幾ら要求しても返してくれない。

 また、聞いてみると、明らかに許可状もなしに書類を押収している。これは金商法違反としていずれ裁判になれば大問題になると私は思いますけれども、そういうこともある。

 しかも、どんな調査、取り調べなんだと聞いてみると、対象になっている銘柄についての話は、自分が知る前に既にそうした買い付けが行われていたということが明らかになって、対象銘柄については全く確証がない。その結果、ほかの株で取引しているんじゃないかとかいうような話ばかり。そして、あなた、帰るところがなくなりますよとか、家族はどうなるんでしょうね、社宅は出なきゃいけないんでしょうねとか、そういう不安をあおるような話ばかりされている。

 私は、こういう調査のやり方しかできない監視委員会というのはある意味で本当に必要なのかなというようにも思ってきていまして、今度、金商法の改正があるということでありますが、場合によっては、逮捕して勾留したらちゃんと期日があるわけですから、調査期間の限定とか、あるいは全面可視化、これは長くするんだったら全面可視化をしてもらう。実は、テープをとっているんです。だから、これが出れば大問題になると私は思います。

 そういうことも含めて、こうした案件、細かい話は大臣にお聞きしても、きょうはそこまで言っていませんので無理だと思いますけれども、恐らくこのことについては大臣もそんなに御存じないと思うんですね。

 つまり、証券取引等監視委員会、八条委員会で、これは大臣はこの前も言っておられましたけれども、ある意味で独立性を担保されているような形になっていまして、それをいいことに好き放題にやっているし、特に、監督下の金融業界、証券会社とか銀行、その連中に対しては非常に厳しくやっている。

 他方で、嫌疑者の会社社長に対しては、パスポートなんか返して、彼は海外に旅行もしているんですよ。しかも、彼は任意調査に応じていないということで、ちゃんとした調査をしっかりやっているような雰囲気はない。

 しかし、監督下の証券会社の社員だけは週に二回呼んで、余り関係のない話ばかりして、あとは、自白しないとだめですよみたいな話ばかりに持っていくというようなことであります。監視委員会というのはそんなので時間を浪費するんだったら、私は、検察の中にこういう案件をやるところをつくってもらって、さっさとやってもらった方がいいようにも思うし、あるいは、アメリカのSECみたいに本当に権限を持って起訴までできるようにするか、どっちかじゃないかと思っていまして、これは、これから私は監視委員会のあり方についてじっくり検討していきたいと思っています。

 いろいろ申し述べましたけれども、そういう個別の案件があるものですから、ぜひ大臣に、これは八条委員会で今まで大臣は遠慮していたと思うんですけれども、ちょっと実情を調べていただいて、特に、告発するならすればいいんですよ、早く。裁判でけりをつけた方が早く終わっちゃう。だから、そういう意味で、ずるずると余り時間を延ばすというのは好ましくないので、その辺のことについてぜひ御検討賜れればと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

自見国務大臣  敬愛する山本幸三先生にお答えをさせていただきます。

 

 今先生が言われたとおり、証券等監視委員会はいわゆる八条委員会的性格がございまして、先生御存じのように、昔は八条委員会でしたが、内閣府ができると、権能としては八条委員会的でございますけれども、法律が変わったということでございますけれども、金融庁設置法により、独立してその職務を行使することとされておりまして、犯則調査のあり方の是非について私からコメントすることは差し控えさせていただきたいと思っております。

 ただし、一般論として申し上げると、証券取引等監視委員会の行う犯則調査は、今先生も言われたインサイダー取引、あるいは有価証券報告書の虚偽記載等の疑いがある事件に対して、御存じのように、金商法の規定により、質問、調査や、裁判所の許可状に基づく証拠の差し押さえ等により行われるものと承知しておりまして、事件の規模、内容によりまして調査が比較的長期に及ぶこともあろうが、犯則事件の真相解明のために必要な範囲内で行われているものと私は承知しております。

 もう一点、先生から、開示をしたらどうかという話でございましたが、監視委員会の犯則調査にも検察のような可視化を導入すべきではないかという御意見でございました。

 検察においては被疑者の逮捕後の取り調べについて試行的に可視化の取り組みが行われているものと承知していますが、証券等監視委員会が行う質問、調査はあくまで任意で行われるものであり、逮捕権限を有する検察の取り調べとは性格が異なるものと認識をいたしております。

 しかし、今先生がいろいろ御意見、あるいはいろいろお述べになられたわけでございますけれども、証券取引等監視委員会においては、限られた人員のもとで、先生御存じのように、アメリカのSECと日本の証券等監視委員会のスタッフの違いというのは先生もよくおわかりだと思うわけでございますけれども、そういった中で厳正に調査を行っていると承知しています。

 いずれにしても、山本先生からの御指摘の点を踏まえて、あらゆる選択肢を排除することなく、金融庁、証券取引等監視委員会、総力を挙げて、市場の公正性、透明性の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。

山本(幸)分科員  八条委員会との関係で限界もあると思いますけれども、これはぜひやっておいていただきたいと思います。そういう改善が、ある程度のルールづくりというのが必要だと思いまして、特に期間に対しては。それぞれについて改善が行われないということになると、いずれ金商法の審議があるでしょうから、そのときに私は細かく徹底的にやりますから、そのことをぜひお願いしたいと思います。

 

 そこで、今、スタッフが少ないという話がありまして、そうなんだろうと思いますが、監視委員会の軽重が問われているのは、嫌疑者でもない情報伝達者みたいな話については毎週二回も呼んでぎりぎり聞いている、結果は全然出ない、確証も出せない、そんなことばかりやっているのに、一方で、オリンパスとかAIJ投資顧問とか、あるいは公務員のインサイダーとか、ある意味では会社が潰れたり、大変たくさん被害をこうむる人が出てくるような問題については全然手がついていなかった。これはやはり組織のガバナンスとしての問題があると私は思います。

 スタッフが少ないなら少ないで、物事の軽重というのは当然あるわけでありまして、むしろそういう大きな問題、例えばAIJだって、この前、財務金融委員会で民主党の方が指摘していましたが、三年前にはある情報誌にちゃんと、AIJは問題だと言われていたわけですよ。にもかかわらず、そうした検査なんか行われていなかったということでありまして、オリンパスなんて何なんだという気がいたします。

 そういう意味で、私は、この監視委員会は明らかに組織上のガバナンスの問題があるというふうに思わざるを得ない。その点について、ぜひ大臣、これをしっかり見直さないとまさに監視委員会の存在意義が問われるというふうに思いますので、その点についての大臣の御決意を聞かせていただきたいと思います。

自見国務大臣  山本議員にお答えをさせていただきます。

 

 先生も言われましたように、証券取引等監視委員会は八条委員会的性質を有するものでございますから、調査、検査に関することは、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思っております。

 しかし、一般論として申し上げれば、証券取引等監視委員会の調査、検査、対象先の選定に当たっては、監督部局からの情報、外部から寄せられる情報等を積極的に活用し分析を行うと同時に、市場環境の変化、個別業者であれば、その市場における位置づけや抱えている問題点を総合的に勘案し調査、検査実施の優先度を判断しており、リスクに基づいた調査、検査を行っているものと承知しております。

 また、先生から、監視委員会の開示検査では細かいところばかりを相手にして問題ではないかというふうな御意見もあったわけでございますけれども、証券取引等監視委員会の有価証券報告書等の虚偽記載に係るこれまでの課徴金勧告事案では東証一部上場企業に対する勧告も行っており、小規模な企業ばかりを相手にしているというのは必ずしも当たらないのではないかというふうに思っております。

 しかしながら、今先生から提起された問題意識については、私も政治家でございますから、しっかり真摯に受けとめて、今さっきも申し上げましたが、金融庁、証券取引等監視委員会、総力を挙げて対応してまいりたいというふうに思っております。

山本(幸)分科員  自見先生は、お医者さんをやっておられて、患者の痛みがわかる。本当に、まさに苦しんでいる人もいるわけですよ。場合によっては自分の一生を潰しちゃうわけですから。あるいは、AIJなんか、年金をもらえなくなるような人は大変なことになるのでね。これは、痛みのわかる自見大臣でありますから、ぜひしっかりと、そういう問題が抜けがないように、痛みを感じて対処してもらいたいなと思います。

 

 しかも、私が自見大臣を尊敬しているのは、郵政についても、立場は違いましたけれども、やはり筋を通して信念を曲げないというところですよ。前の日まで反対反対と言っておいて、次の日になったらぱっと賛成したという人もいたんですからね。

 そういう意味で、私は自見大臣を大変尊敬しているのでありまして、そうした信念を持って、痛みのわかるような行政を、役人から上がってきたことだけをうのみにするんじゃなくて、ぜひお願いしたいと思います。

 それでは、ちょっと問題をかえます。

 去年の大震災からちょうど一年が迫ってきたわけでありますが、あの大震災が起こったときに、市場を開くかどうかというのは大問題だったわけですね。結果的に市場を開きました。ところが、そのことによって大損害をこうむった人がたくさんいるわけであります。

 特に、オプション取引をやっていた人は大変な目に遭ったんですね。例えば、日経二二五の先物のオプション取引。オプション取引というのは、証拠金が少なくて大量の取引が行われるものですから、予想がばあっと外れたり、大暴落したり、大高騰したりしたとき、非常に予想外のものが起こったときには一気に損害が何十倍になるわけですね。そういうことが起こるわけであります。実際、去年の大震災のときにそれが起こったわけであります。そういう意味で、市場をあけていたのが本当によかったのかどうかという問題があるわけであります。

 そういうオプション取引で損害が出る可能性があるということを見込んでいなかったのかどうか、それについて金融庁の見解を聞きたいと思います。

森本政府参考人  山本先生にお答えいたします。

 

 東日本大震災発災後、週明け、三月十四日でございますが、証券取引所を開場するかどうか、その判断は、まず取引所の判断があるわけでございます。

 東京証券取引所におきましては、市場を通常どおり開きまして投資家の需給を反映した適正な価格形成をすることがその責務であると考え、また、仮に東証をクローズした場合、日経二二五の先物取引等は海外の取引所でも行われておりますので、そうした不十分な需給のもとで株価水準が形成されてしまうという可能性があることも留意いたしました。

 そうしたことを踏まえて、全体として、東証市場をクローズすることはかえって東京マーケット全体の信認を損なうことになるといったことから、前日の三月十三日に、十四日には通常どおり開場したいという連絡が金融庁にございました。

 金融庁といたしましては、取引所のシステムが正常どおりに作動すること等を確認した上で、その判断を適当なものであると認めまして、夕刻発表いたしました金融担当大臣談話におきまして、金融市場及び証券市場については、システム等は正常に作動しており、三月十四日以降も、円滑な経済活動を確保する観点から、通常どおり取引が行われることになっておりますといった発表を行ったところでございます。

山本(幸)分科員  全く通常どおりの取引が行われなかったんですよ。海外でやっているからといって、株というのは、需要と供給がいろいろな考え方が交差しているときに意味があるんだけれども、一気に落ちるということが確実なときにはそんなことは言えない。

 

 どういうことが起こったかというと、オプション取引している人は、三月十一日に大震災が起こった後、これは暴落することがわかるわけですから、放っておけば自分の損害が何十倍、何百倍になる、破産する。そこで、一生懸命、三月十一日の震災が起こった後に、証券会社に手じまいをするということをやろうとしたんですよ。ところが、携帯電話もパソコンのメールも一切つながらない。それはそうでしょうね、我々だってつながらなかった。そうすると固定電話しかないんですけれども、固定電話も一切つながらなかった。証券会社は留守電のテープが回っているだけです。これは、あけた十四日もそうです。パソコンはもちろん証券会社は受け付けない、固定電話も全く証券会社は受け付けなかったんだ。これは被害を受けた人からちゃんと、そういう状況だったと私のところに幾つも来ています。

 結局、にもかかわらず、証券会社は証拠金の倍率を十四日に一気に倍ぐらいに上げちゃったんだね。

 投資家が何の手も打てない。証券会社は一切電話も受け付けない。そして、証拠金を倍に上げてすれば、翌日もう強制決済が行われるわけですから、大損害が出て、みんな破産に追い込まれたんです。これは思慮が足りなかったと私は思いますね。そういうことを考えておかなきゃ、証券会社は本当に。

 聞いてみると、証券会社のシステム自体は受け付けられるようになっていましたと金融庁の担当者は言うんだけれども、なっていないんだよ。証券会社は、固定電話も十四日中まで全く受け付けなかったんだ。そして強制決済されたんだ。後は、今度は取り立てをやっているだけです、今。その結果、今裁判になっていますので、ここから先は裁判の話になりますが。

 私は、このことはよく考えておかなきゃいけないし、では、次に直下型大震災が起こったときにどうするんだという話になりますので、この点は、大臣ぜひ、次に対してよく検討してもらいたいと思います。いかがでしょうか。

自見国務大臣  震災があったのが金曜日でございまして、月曜日からマーケットをあけるかどうかというのは非常な決断が要った話だと思いますが、先生もう御存じのように、売買代金シェアがおおむね八割超である場合には取引所は市場を閉鎖しないこととされているということが、たしか東証の内規で決めてあります。

 

 そういったことがございますので、基本的に、非常にいろいろな、株でございますから上がったり下がったりするというのはあるわけでございますけれども、東京市場の高い換金性が証明されたことは投資家心理の改善に好影響を及ぼしたというプラスの面もあったわけでございます。

 また、そういった意味で、いろいろな外国の後からの評価を見てみますと、先生御存じのように、例えばゴールドマン・サックスだとかJPモルガンだとかバンク・オブ・アメリカだとか、こういったところは、マーケットが開いた状態を支持するというふうなことを、後からでございますが、また日本の証券会社大手もそういった発言をしておりますので、やはり、こういったときは日本の経済がきちっと機能しているんだということを世界に示す必要があるというふうに思っております。

 しかし、先生が今言われたような問題点もあるわけでございますから、きちっとそういったことも勘案しながら、プラスマイナスあるわけでございますけれども、そういった意味で、やはり日本全体が、大震災であったけれどもちゃんとマーケットは開いているということもまた大事でございますから、そういったことを総合的に勘案して判断させていただきたいというふうに思っております。

山本(幸)分科員  それは、海外の証券会社とかヘッジファンドとかは歓迎するんですよ。だって、もうけたんだから。一方は暴落するときに証券会社に何の連絡もとれなくて手の打ちようがない、他方はばんばん売っちゃえば大もうけしたんですよ。オプション取引というのはゼロサムゲームなんだから、大損した反対側には大もうけした連中がいるんです。それが海外のヘッジファンドであり、海外の証券会社ですよ。それを理解されていなかったら問題になりますよ。だから、大臣、これは次が大事なことです。

 

 それから、もう一つだけ指摘しておきますが、この問題を調べていて、私、非常に日本の証券市場というのはいびつだというのを発見して、びっくりしました。

 今回のオプション取引の強制決済、売買を一番やったのはニューエッジ証券というところであります。金融庁の担当者も知らなかった、このニューエッジ証券というのはどういう証券会社かというのを。これは、フランスのソシエテジェネラルとカリヨン何とかというのがつくったオプション取引専門の証券会社ですが、恐らく、海外のヘッジファンド等からの依頼を受けてオプション取引を日本でやっている。オプション取引をやれば、さっき申し上げたように、桁が違いますから、現物市場を動かす。今、このニューエッジ証券というのは大体二割のシェアを持っているんです。恐るべきシェアですよ。これで全部やられている、日本のオプション取引が。そうすると、日本の株価も全部動かされるということですよ。

 こういういびつな存在があって、この震災のときに売って、そこが取り次ぎしているんでしょうけれども、それに、これは下がるぞといって、ばあっと売りを仕掛けた。これというものを買って実際に売った、そして安くなったものを買ったというヘッジファンドなんかは大もうけしたんですよ。

 そういう状況に日本の証券市場があるということは、これは日本の証券市場が完全競争にないという話になり得るので、また私もこれからちょっと調べますけれども、ぜひ大臣も問題意識を持ってやっていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。