平成28年10月18日 衆議員本会議

平成28年10月18日 衆議員本会議

○議長(大島理森君) これより会議を開きます。
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○議長(大島理森君) この際、内閣提出、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣麻生太郎君。
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

(略)

○副議長(川端達夫君) この際、内閣提出、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣高市早苗君。
〔国務大臣高市早苗君登壇〕

○国務大臣(高市早苗君) 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、世界経済の不透明感が増す中で、新たな危機に陥ることを回避するためにあらゆる政策を講ずることが必要となっていることを踏まえ、地方税に関し、所要の施策を講ずるものであります。
以下、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
その一は、地方消費税率引き上げ時期の変更等の改正であります。
地方消費税の税率引き上げの施行日の変更及び消費税に係る地方交付税の率の変更等を行うこととしております。
その二は、地方法人課税の偏在是正措置の実施時期の変更等の改正であります。
法人住民税法人税割の税率の引き下げ時期及び地方法人特別税等に関する暫定措置法の廃止時期の変更等を行うこととしております。
その三は、車体課税の見直しの実施時期の変更等の改正であります。
自動車取得税の廃止時期並びに自動車税及び軽自動車税における環境性能割の導入時期の変更等を行うこととしております。
その他、個人住民税の住宅借入金等特別税額控除の適用期限の延長を行うこととしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
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社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

○副議長(川端達夫君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。黄川田徹君。
〔黄川田徹君登壇〕

○黄川田徹君 民進党の黄川田徹であります。
私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
まずもって、冒頭、消費税の引き上げ再延期の原因について伺います。
安倍総理は二年前、消費税の再延期はないと断言していたにもかかわらず、再延期を決めました。総理は、世界経済のリスクを理由とした新しい判断であると居直っておりますが、再延期の原因は、アベノミクスが行き詰まり、実質賃金は低下、消費は低迷し、格差が拡大するなど、国民生活が厳しさを増したことにあることは明らかなのではないですか。このことについての所見を石原経済財政担当大臣に伺います。
次に、消費税率の引き上げと低所得者対策について伺います。
本法案により導入が延期されるとはいえ、政府が導入を進める軽減税率制度は約一兆円の財源を必要とし、社会保障の安定とそして充実のための地方財源の確保が大きな課題となることは明らかであります。
政府は、安定的で恒久的な財源を確保すると改正税制大綱に明記し、国税収入は一年かけて財源を探すとしておりますが、住民サービスに直結する地方財政には特に安定財源確保の要請が強く働きます。よって、もはや猶予はありません。麻生財務大臣には、この場で財源を明示するよう求めます。
さらに、地方自治と地域活性化に関する基本的認識について伺います。
安倍政権では、地方創生の名のもとに、まち・ひと・しごと総合戦略を策定し、東京一極集中を是正し、活力ある日本社会の維持を目指すとしています。しかしながら、地域活性化の手法としての現状の地方創生総合戦略には大きな懸念を持たざるを得ません。
国が定めた総合戦略を勘案して地方創生総合戦略を地方につくらせる国主導のやり方は、国の目標をもとに当てはめる中央集権的な手法となっております。このような手法では、地方発の自主的な取り組みが十分に発揮されません。中央省庁が握っている財源と権限を大胆に移すという地方分権とは、似て非なる取り組みと私は言わざるを得ません。
そして現在も、東京一極集中の流れはとまっていません。住民基本台帳人口移動報告の平成二十七年結果では、東京圏の転入超過数は約十一万九千人であり、東京圏の転入超過は二十年連続となっております。
政府が一極集中是正策として鳴り物入りで打ち出した中央省庁の地方移転についても、四十二道府県から六十九の機関を誘致したというのにもかかわらず、文化庁、総務省、消費者庁で移転が具体化する方向になっただけ。しかも、総務省は統計局の一部を和歌山県に移し、消費者庁は徳島県に一部拠点を設ける程度でしかありません。
中央省庁の権限や財源は現状のまま、単に一部の役所の場所を移すということしかできない現政権には、権限や財源も移す真の地方分権などできるはずもありません。現状を見る限り、安倍政権の地方創生は、アベノミクス同様にかけ声倒れに終わるのではないか、こう思っております。
地方創生施策の現状をどのように捉え、地方創生が進まない根本原因と改善策、さらには、地方分権への道筋をどのように考えているのか、山本地方創生担当大臣に明快な答弁をいただきたい、こう思います。
次に、本法律案について幾つかお伺いいたします。
まず一点目であります。消費税、地方消費税率引き上げ再延期により失われる財源についてであります。
消費税、地方消費税率の引き上げによる増収分は、子ども・子育て支援や医療、介護の充実に向けた施策の実施等の社会保障の拡充や安定化などに充てるとされておりました。税率引き上げの再延期により、これらの施策は、税率引き上げまでその財源を失うことになります。
政府は、税率の引き上げを再延期しても、保育の受け皿五十万人分の確保など、可能な限りの社会保障の充実を実施するとしておりますが、その費用については、国の責任において安定財源を確保できるのでしょうか。
消費税、地方消費税率の引き上げ分は、地方交付税原資分も含めると、その約三割が地方の社会保障財源であります。地方が必要な住民サービスを十分かつ安定的に提供し、地方財政の運営に支障を来さないよう、地方交付税原資分も含め、必要な財政措置を確実に講ずるべきと考えます。
仮にも、財源が不足し、地方に負担を転嫁するような制度改正を行うことがあってはならないと考えますが、高市総務大臣の所見を伺いたいと思います。
二点目であります。税源の偏在是正措置について伺います。
地方消費税は、地方法人課税などと比べると、地域間の税収の偏在が比較的小さい税でありますが、そうはいっても、一人当たりの税収で最大二倍の格差が存在しております。さらに、交付税の不交付団体には、社会保障給付支出の増加額を上回る地方消費税の増収が生じる一方、交付団体には、地方交付税の振りかえである臨時財政対策債の減少等により相殺される結果、不交付団体と交付団体の間の財政力格差がさらに拡大するといった課題が生じております。
今後、増加する社会保障関係費の財源を確保するため、消費税、地方消費税率をさらに引き上げる場合、国と地方の配分をどう考えておるのでしょうか。
偏在の是正を重視すれば、引き上げ分の全てを国の消費税とし、そのうちの一部を地方交付税とする考え方も出てきますが、他方で、地方の独自財源を重視するという地方分権の観点からは、地方消費税率の引き上げが望ましいことになります。
この偏在是正と地方の独自財源確保のバランスを今後どう図っていくのか、高市総務大臣の所見を求める次第であります。
三点目であります。車体課税の見直しに係る措置についてであります。
自動車税は都道府県の基幹税でありますが、車体課税に係る地方税収は、平成二十一年度の自動車取得税へのエコカー減税の導入等により大幅に減少しています。消費税、地方消費税引き上げ時に自動車取得税を廃止し、自動車税、軽自動車税に環境性能割を導入する際には、地方財政に影響を及ぼすことがないよう、必要があれば平成三十一年度の税制改正で見直すことになっております。しかしながら、地方財政の安定化の観点からは、事前に具体的な代替財源の確保を前提として行うべきと考えます。
そこで、現在予定している代替財源はあるのか、なければ、早急に確保するべきではないのか、高市総務大臣の所見を伺いたいと思います。
結びであります。
東日本大震災の発災から五年と七カ月余りが経過いたしました。大震災は、地震、津波、原発事故、そして風評被害をもたらし、復旧復興にはさまざまな困難を伴っています。岩手にあっては、八月末の台風十号の豪雨被害が追い打ちをかけています。集中復興期間の五年間では完遂せず、道半ばの自治体はまだまだあります。特にも、福島は次の五年間が正念場であります。
一方、熊本大震災の発生から半年余りとなりました。
避難先で体調を崩すなどして震災関連死に認定された方は五十五人と直接死を上回り、犠牲者は計百十人となっています。また、応急仮設住宅が約四千戸完成し、今月中には県内の全ての避難所は解消される見込みであります。しかしながら、仮設からの退去はいつになるのか。住みなれたもとの場所での住宅再建は望めるのか。資金不足で見通しの立たない人も少なくないのではないでしょうか。容易でない実態が熊本でもあるのではないかと感じております。
まさに、これからが本当の復興への戦いになってきます。復興期間の長さが被災者の人生を大きく変えていく、その姿を私は目の前で見ております。復興の時間の流れに翻弄される被災者をつくらないためにも、災害の風化をとめていかなければなりません。
私は、大規模災害の復旧復興には与党も野党もないと常に問うてまいりました。被災地の現場と現状を酌み取る力のない、ごく一部の閣僚の振る舞いには落胆し、そして憤りを覚えるわけであります。
また、政府は、去る十月十一日に、地球温暖化対策の新たな国際枠組みであるパリ協定の批准案を閣議決定し、国会に提出いたしました。参議院先議の法案となっておりますが、国際社会の動きからは大きく出おくれたのではないでしょうか。正式メンバーの締約国とは認められないのではないでしょうか。COP22の開催前に全ての手続を終えることは難しく、発言力も低下するのではないでしょうか。
気候変動による大災害の発生は明らかになってきていると私は思っております。
政治は、仮想の現実から目を覚ます必要があります。人口減少、それに伴う税と社会保障の一体改革、財政再建、そして大規模災害対策、地球温暖化対策などには正面からしっかりと向き合わなければならないと思います。
最後に、ライバルがいない世界は本当に閉塞感を強く感じるわけであります。我が民進党は、代表もかわりました、政権を担い得る政党として成長していかなきゃなりません。しっかりと頑張ることを国民の皆さんに約束し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

○国務大臣(石原伸晃君) 黄川田議員にお答え申し上げます。
消費税の引き上げ再延期についてお尋ねがございました。
アベノミクスについては、雇用・所得環境が大きく改善する中で、実質賃金は本年二月以降七カ月連続で増加し、個人消費も総じて見れば底がたい動きとなっているなど、確実な成果を生んでいると思っております。
二〇一七年四月に予定されていた消費税率の一〇%への引き上げについては、中国などの新興国経済の減速など、世界経済がさまざまなリスクに直面しているというG7共通認識のもと、あらゆる政策を総動員し、経済再生、デフレ脱却に向けた取り組みに万全を期すべきであることから、二年半延期するとしたものでございます。
政府としては、二〇一九年十月の消費税率の一〇%引き上げに向けて、アベノミクスを一層加速させ、経済財政運営に万全を期してまいります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

○国務大臣(麻生太郎君) 消費税軽減税率制度の財源確保についてのお尋ねがあっております。
軽減税率制度の財源確保につきましては、平成二十八年度の税制改正法におきまして、歳入及び歳出における法制上の措置を講ずることにより、安定的な恒久財源を確保すると明記したところであります。
その検討に当たりましては、経済社会の動向を見きわめつつ、十分に議論を行っていくことが適当であろうと考えておることから、今般の法案におきましては、軽減税率制度を導入する前年度の平成三十年度末を期限として検討を進めることといたしております。
今後、与党とも相談をいたしつつ、歳入歳出両面にわたって検討することとなりますが、国、地方あわせて、必要な安定財源をしっかり確保してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣山本幸三君登壇〕

○国務大臣(山本幸三君) 地方創生の現状と改善策、地方分権への道筋についてお尋ねがありました。
 地方創生は、少子高齢化に歯どめをかけ、地域の人口減少と地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保することを目指しております。
 昨年度までにほぼ全ての地方公共団体が自主性、主体性を発揮して総合戦略を策定しており、これからは本格的な事業展開に取り組む段階に入っております。
 東京圏への人口の過度の集中の原因については、大企業や会社の本社機能が集中し、就職に有利であることなどが東京圏に人を引きつけているためと考えられますが、地方から東京圏への人口流出に歯どめをかけ、東京一極集中を是正することは、人口減少を克服し、地方創生をなし遂げるために重要と考えております。
 そのため、地方における若い世代に対して魅力ある雇用の創出に対する交付金による支援、企業の本社機能移転税制の創設、政府関係機関の移転、生涯活躍のまちの実現、地元就職時の奨学金の返還免除など、地方への新しい人の流れをつくるための多岐にわたる施策を推進してきたところであります。また、新たな取り組みとして、地方創生インターンシップ事業等も進めているところです。
 地方創生では、自助の精神が重要であり、国としては、意欲と熱意のある地方公共団体に対し、財政支援だけではなく、人的支援、情報支援の観点からも強力に応援してまいります。
 地方分権改革の推進は、地域がみずからの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生において極めて重要なテーマです。
 このため、国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革を目指し、平成二十六年から、地方に対する権限移譲や規制緩和に関する提案募集方式を導入し、地方版ハローワークの創設等を実現いたしました。
 今後とも、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革に取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇〕

○国務大臣(高市早苗君) 黄川田議員から私には、まず、消費税、地方消費税率引き上げを延期した際の社会保障の充実施策に係る財源についてお尋ねがございました。
子育てや介護など、社会保障に果たす地方自治体の役割は極めて大きいことから、所要の財源を確保することが重要でございます。
このため、総務省としましては、消費税、地方消費税率の引き上げ延期に対応した社会保障の充実施策や、保育士、介護職員の処遇改善など一億総活躍プランに関する施策の実施に関し、地方負担分も含めた安定財源を確保すること、及び地方に負担を転嫁するような制度改正等を行わないことについて、関係府省に要請をいたしております。
財政負担のあり方も含め、具体的には今後予算編成過程で検討されることとなりますが、いずれにしましても、社会保障施策の取り扱いに係る地方財政への影響については、年末に向けての地方財政対策の中で、歳出歳入の両面において、地方自治体の財政運営に支障が生じることのないよう対応をしてまいります。
次に、税源の偏在是正措置と地方税源の確保についてお尋ねがございました。
平成二十四年に、民主、自民、公明の三党合意を経て成立した税制抜本改革法においては、消費税の引き上げ分について、社会保障の役割に応じて、国、地方間で配分することとされております。消費税率八%段階において、一・七%分の地方消費税収を確保いたしました。
また、税制抜本改革法の規定の趣旨を踏まえた地方法人課税の偏在是正措置も、平成二十八年度地方税法等改正法において措置をいたしましたが、消費税率引き上げ時期の変更に伴い、今回提出をしている法案において、その施行を二年半延期するとしております。
総務省としましては、消費税率一〇%への引き上げにあわせ、地方法人課税の偏在是正措置を着実に実行しつつ、地方税財源の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組んでまいります。
次に、車体課税の見直しと代替財源の確保についてお尋ねがございました。
消費税率一〇%への引き上げ時の車体課税の見直しは、与党税制改正大綱において、他に確保した安定的な財源とあわせて、地方財政へは影響を及ぼさないとされていることを踏まえ、制度設計したものです。
具体的には、自動車取得税を廃止する一方、環境性能割の導入による税収のほか、平成二十七年度から実施した軽四輪等の税率引き上げの増収分などを含め、必要な地方財源はおおむね確保いたしました。
今回の法案においては、消費税率の引き上げ時期の変更に合わせ、車体課税の見直しを二年半延期するとともに、環境性能割の税率区分について、その導入前に見直しを行う規定を設けております。
いずれにしましても、地方財政へ影響を及ぼさないよう、今後とも適切な税収規模の確保に努めてまいります。(拍手)
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