平成28年11月02日 衆議院内閣委員会

平成28年11月02日 衆議院内閣委員会

○島津委員 二〇一五年度の消費者物価指数は、対前年度比で〇・八%上昇しています。ですから、実際には、この間、実質賃金は低下し続け、五年連続の実質賃金低下となっています。しかし、今回も、こういう幅ですから、低下することが予想されます。
民間の実質賃金は、経団連の集計によると、中小企業は前年の引き上げ幅よりも〇・〇四%下回る、大企業も〇・二五%下回っているというのが集計結果です。これは、厚労省の調査でも、労働組合の調査でも、賃上げ幅は前年を下回っている、こういう結果になっている。ですから、実質賃金は相変わらず下がり続けるということが見えるわけです。
景気回復のためには、全ての労働者の賃金が上がらなきゃいけません。しかし、民間の労働者の実質賃金が上がっていない。今回の人事院勧告は、その民間を反映して低額の回答となって、生活の改善にはほど遠い、こういう声が上がっています。
大臣、今回の月例給で千五百円から四百円の引き上げ、一時金も引き上げがあるんですけれども、これで賃金が上がって景気回復につながると思いますか。

○山本(幸)国務大臣 景気回復には、デフレ脱却と経済再生への道筋を確かなものとして、経済の好循環を確立することが重要であります。政府といたしましては、人事院勧告制度尊重の基本姿勢のもとでやるわけでありますが、この人事院勧告制度も、民間の給与の水準を反映して求められているものでありまして、経済の好循環を推進するマクロ経済政策とは整合的であるというように考えております。
 したがいまして、人事院勧告どおり、国家公務員の給与改定を行うことが適当であると判断したものであります。

○島津委員 今回の引き上げをもっと上げろということじゃなくて、今回のこの引き上げで労働者の賃金が上がって、これは民間も含めてのことになりますけれども、賃金が上がらなければ景気回復、消費がふえないわけですから、景気の好循環は生まれないわけです。政府も、賃金を上げる引き上げは重要性を認めているところなんです。
ですから、今回の人勧のこの引き上げ幅で景気回復に資するか、役立つのかということを聞いているんですけれども、どうなんですか、そこは。

○山本(幸)国務大臣 それは賃金というものは、引き上げるだけ上がれればいいんですけれども、単純にそういかないのが現実であります。財政の状況もありますし、また民間においては企業経営の状況もあります。
 そういう中で、私どもとしては、少しでも賃金を上昇していただくという努力もしてきましたし、民間の給与も、十分とは言えないまでも少しずつ上がっている、そういうことを反映して、国家公務員もそれに応じて賃上げをしていく。気持ちとしてはもっともっとというのは当然ありますが、しかし、いろいろな制約条件もありますので、一歩一歩ということになろうかと思います。

○島津委員 賃上げの重要性は今大臣に認めていただきましたけれども、この間、消費税の八%の引き上げ以来、個人消費が落ち込んで、それが景気回復の足を引っ張ってきた。賃金が上がらなくては消費もふえない、これはこの間の経過で立証済みなわけです。
続いて、一時金についてお聞きします。
引き上げ分は全て勤勉手当に配分するとしています。この理由は何でしょう。

○古屋政府参考人 支給月数の引き上げ分の期末手当及び勤勉手当への配分に当たりましては、民間賞与における考課査定分の占める割合等を踏まえつつ、勤務実績に応じた給与を推進するため、今回の引き上げ分は勤勉手当に配分することとしたところでございます。

○島津委員 勤務実績ということですけれども、要するに、人事評価を活用するということになるわけです。
その勤務実績というのは、どうやって判断するんでしょう。

○古屋政府参考人 勤勉手当の額につきましては、人事評価の結果に基づいて決定するとされておりまして、六月期の勤勉手当につきましては、前年十月から当年三月までの業績評価の結果を、それから十二月期の勤勉手当につきましては、当年四月から九月までの業績評価の結果を活用することとしております。
この勤勉手当の額は、俸給及び地域手当の月額等に勤務期間に応じた率及び成績率を乗じて算出するとされておりまして、この成績率は、特に優秀、優秀、良好、良好でない、この四段階の成績区分に分けられております。この成績区分の決定に当たりまして、直近の業績評価の全体評語が上位、SまたはAである職員から、特に優秀、優秀の成績区分に決定する、また下位のCまたはDである職員につきましては、良好でないの成績区分に決定するということになるところでございます。

(略)

○島津委員 やはり、各省庁の予算の範囲内でということで、ばらばらになっているんです。
非常勤職員は、常勤職員の約四分の一を占めています。今や非常勤職員の存在なくして業務は成り立ちません。人事院も年次報告で、公務遂行にとって欠くことのできない役割を担っている、こう言っています。
ところが、今もあったように、給与法二十二条二項で、予算の範囲内でということになっている。ですから、省庁ばらばらなわけです。省庁任せになっている。これはしっかり指導して、予算も確保させることが必要だと思うんです。
大臣、ここは公務員担当の大臣として指導性を発揮して、各省庁の長に働きかけて、きちんと意欲を持って働いてもらうようにすべきじゃないですか。どうです。

○山本(幸)国務大臣 御指摘のように、非常勤職員について若干ばらつきがあるということは私どもも承知しております。
 そういう意味で、本年三月に内閣人事局としても調査を行って、九月に結果も報告したところでございまして、その実態を把握できたことは一定の意義があると考えておりますが、まさにおっしゃるように、給与法改正を踏まえた基本給の改定時期等、一部の項目についてはばらつきが見られたところでございます。
 したがいまして、私どもとしては、今回の調査結果を踏まえて、関係機関と連携して、今後の対応についてぜひ実効が上がるように検討してまいりたいと思っております。

○島津委員 ぜひしっかり役割を果たしていただきたいと思うんです。
次に、扶養手当の見直しについてお聞きします。
配偶者手当が一万三千円から六千五百円に半減します。そして、その原資を使って、子供に係る手当を六千五百円から一万円に引き上げる、また、配偶者手当のない場合の一人目の扶養家族に係る手当の特例を廃止する、このような見直しです。
経過措置をとられていますけれども、この改定によって、扶養手当をもらっている人が、今もらっている額よりも減額する、こういう受給者は、受給者のうちどのぐらいいるんでしょう。

○古屋政府参考人 扶養手当を受給している職員の状況が現在と改定後変わらないという仮定のもとの計算をいたしますと、現行の手当額それから平成三十二年度以降の手当額の比較ということで申し上げますと、現在扶養手当を受給している職員、約十四万人おるわけですが、そのうちの四五%は減額になるというふうに試算しているところでございます。

○島津委員 民間の調査では、家族手当制度がある事業所は、昨年の七六・五%から七六・八%に、少しですけれどもふえています。そのうち、配偶者に家族手当を支給しているのは、昨年の九〇・三%から八七・〇%と、ほとんど変わっていません。
なぜ国家公務員だけ、ことし配偶者手当を半減するんでしょう。

○古屋政府参考人 配偶者に係る手当をめぐりましては、民間企業におきましては、配偶者に係る手当を支給する事業所の割合というのは長期的に減少傾向にございますし、公務におきましても、配偶者を扶養親族とする職員の割合というのは減少傾向にあるなど、こういった状況の変化が生じているところでございます。
このような配偶者に係る手当をめぐる状況の変化などを踏まえまして、今般、公務における配偶者に係る扶養手当について、配偶者に係る手当額を他の扶養親族に係る手当額と同額まで減額するといった見直しを行うこととしたところでございます。

○島津委員 減少傾向と言いますけれども、そんなに、人事院の調査でも昨年と比べて減っていない。配偶者に家族手当を支給している事業所の八割は、見直す必要がないと言っています。
国家公務員は、公正な行政運営をするために全国異動や転勤が多い。ですから、配偶者が正職につきにくい状況があります。地方に行けば、よりその就職先は厳しくなる。働きたくても働けない、こういう状況があります。
配偶者手当の廃止、これは女性の活躍ということで、就労に結びつくということで流れがあるんですけれども、しかし、本当にそれで結びつくかどうかは疑問です。女性の活躍できる社会の実現には、こうした家族手当、配偶者手当を減らしたりなくしたりということよりも、税制や社会保障制度のあり方、男女とも家庭の負担を負いながら働き続けられる環境の整備こそ優先するべきと思うんです。
人事院、今回の扶養手当、とりわけ配偶者手当の半減ということなんですけれども、それをやるよりも、もっと両立支援だとかそういうところにこそ力を入れるべきじゃないんでしょうか。

○古屋政府参考人 今回の見直しにつきましては、あくまで扶養手当のあり方ということに関して、我々としては手当制度のあり方の観点から見直しを行ったというところでございます。

○島津委員 時間がなくなりましたので、ちょっとこの後、組合との関係を聞きたかったんですけれども、申しわけありませんけれども、次の法案質疑のところに回させていただきます。
とりあえず、この質問はこれで終わります。
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○秋元委員長 次に、内閣提出、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
順次趣旨の説明を聴取いたします。山本国務大臣。
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一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案
特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○山本(幸)国務大臣 ただいま議題となりました一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 まず、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 本年八月八日、人事院から、一般職の職員の給与の改定に関する勧告並びに国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申し出及び一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律の改正についての勧告が提出されました。政府としては、その内容を検討した結果、勧告及び意見の申し出どおり実施することが適当であると認め、一般職の職員の給与に関する法律等について改正を行うものであります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、指定職俸給表を除く全ての俸給表について、俸給月額を若年層に重点を置きながら引き上げるとともに、勤勉手当の支給割合を年間〇・一月分引き上げること等としております。
 第二に、扶養手当について、配偶者に係る扶養手当の月額を六千五百円に引き下げ、子に係る扶養手当の月額を一万円に引き上げること等としております。
 第三に、専門スタッフ職俸給表に四級を新設することとしております。
 第四に、介護休暇を請求できる期間を三回まで分割可能とすること、連続する三年の期間内に、一日につき二時間以下で勤務しないことを承認できる介護時間を新設すること、育児休業等の対象となる子の範囲を特別養子縁組の監護期間中の子等にも拡大することとしております。また、一般職の国家公務員である行政執行法人の職員についても、これに準じ、介護休業を請求できる期間を三回まで分割可能とする等の措置を行うこととしております。
 このほか、施行期日、この法律の施行に関し必要な措置等について規定しております。
 引き続きまして、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 この法律案は、特別職の職員の給与について、一般職の職員の給与改定にあわせて、必要な改正を行うものであります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 秘書官の俸給月額及び内閣総理大臣等の特別職の職員の期末手当について、一般職の職員の給与改定に準じた措置を行うこととしております。
 以上が、これらの法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

○秋元委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
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○秋元委員長 この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣人事局人事政策統括官三輪和夫君、内閣官房内閣人事局人事政策統括官若生俊彦君、人事院事務総局職員福祉局長千葉恭裕君、人事院事務総局人材局長福田紀夫君、人事院事務総局給与局長古屋浩明君、財務省主計局次長可部哲生君、厚生労働省職業安定局次長大西康之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

(略)

○神山(洋)委員 おはようございます。神山洋介でございます。
この後、給与法及び人勧制度についても大臣と議論をさせていただきたいと思います。
今回の給与法に関しては、民間準拠をしていく中で、月例給及びボーナスが上がってというあたりですとか、育児休業に係る幾つかの制度の変更等というところもあるわけでして、いろいろな議論がありますが、我々そして私自身も、この長年の経緯を踏まえたときに、人勧制度そのものは基本的には尊重するべきである、そういうスタンスの中で議論させていただきたいと思います。しかし、やはり、今の時代の要請も踏まえたときに、きちんと検討して、かつ、きちんと結論を出して前に進めていかなければならない部分もあるのではないか、こういう観点から、幾つか議論させていただきたいと思います。
まずは、これはことしの通常国会の冒頭だったわけです。内閣委員会に所属をそのときもされていた方々は御記憶のことと思いますが、昨年の年末に、秋に臨時国会がなかったという中で、この給与法の審議がおくれて、自治体のいろいろな意味での制度改正、審議にも影響したという中で、年初かなり急いでこの給与法に対応したということがあったかと思います。一月冒頭から国会が開かれて、もう一月の十三日に、衆議院の内閣委員会、当委員会では、ここで結論を見て、その際に附帯決議が三点付されているわけです。
ここでまず大臣にちょっとお伺いをしたいのは、そのうちの二点目にこういう記述があります。「国の厳しい財政事情を鑑み、国家公務員の総人件費に関する基本方針を踏まえ、実効性のある総人件費管理に努めること。」というくだりがあります。大臣にまずお伺いをしたいのは、このくだりも踏まえつつ、今この観点でどのようなことをされていますでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 国家公務員の総人件費につきましては、国家公務員の総人件費に関する基本方針におきまして、職員構成の高齢化等に伴う構造的な人件費の増加を抑制するとともに、簡素で効率的な行政組織、体制を確立することにより、その抑制を図ることとしております。
 具体的には、まず、平成二十六年の一般職給与法の改正に盛り込んだ給与制度の総合的見直しにおきまして、初任給を据え置く一方、高齢者層を四%引き下げることにより、俸給表水準を平均二%引き下げるとともに、地域手当を見直すことにより、世代間、地域間の給与配分を見直すなどの取り組みを行いました。また、定員についても、切り込むべきところには切り込みつつ、他方、治安・テロ対策、CIQ、外交など、内閣の重要政策に的確に対応できる体制の構築を図っております。
 今後も、厳しい財政事情を踏まえて、引き続き、この基本方針に沿って総人件費の抑制に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○神山(洋)委員 今大臣からも、厳しい財政事情、状況ということについて言及がありました。やはり、基本的な問題意識はそこだと思うわけです。
今の人勧制度に基づけば、民間給与に準じて給料が上がったり、場合によっては下がる場合もあるということでありまして、それはそれで是とするわけではありますが、この財政状況の中でやはり厳しく問われるべきことは、その厳しい財政状況の中で果たして、では今々の制度で、これからもずっとそういう状況であり続けていいのだろうかということは、きっちりと総括をするべきだと思うわけです。
人勧制度そのものについての議論はこの後改めてさせていただきますが、ここでまず、今回の給与法の中身について一点、お伺いをさせていただきたいと思います。
先ほど幾つかだけ取り上げましたが、今回の給与法の中で、専門スタッフ職四級の新設という項目が入っています。いろいろ、これは個別にも、また我が党の議論の中でもお話は伺いましたが、いまいち腑に落ちていません。この専門スタッフ職四級の新設、なぜ必要なんでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 社会経済情勢や国際情勢等の急速な変化に対応するため、特定の行政分野の業務に長年従事して高度の専門的知識経験、人脈を有する人材が幹部職員のスタッフとして適切に補佐する体制を構築することにより、政府の政策対応能力の一層の向上を図っていく必要がございます。専門スタッフ職四級は、こうした趣旨で整備するものであります。
 このような専門スタッフ職四級の導入の趣旨に沿った運用が確保されるよう、厳格な審査を行い、真に必要な業務に限定してポストの設置、あるいはまた、人件費が増加しないよう所要のスクラップを確保するとともに、設置後も一定期間後に見直しを行う、専門性の高い人材が登用され、一定期間継続して任用がなされるよう、個別にチェックを行うこととしております。

○神山(洋)委員 今大臣からお答えをいただいたお話は、事前にも事務方からも含めて何度も伺っているわけです。
なぜ腹に落ちないかというと、これは、人事とか給与法に限った話じゃなくて、一般論でもそうですが、世の中に、できればやった方がいいことというのは山のようにあるわけです。その中で、やらなければならないことというのはまた限られてくるわけです。できればやった方がいいことを全てやることは、これはほとんどの場合は大抵不可能でして、時間とか人数とかお金とか、幾つかの制約要因の中で、できればやった方がいいことのうち、やらなければならないことをいかにやるかということで、私たちは日々物事を考えてやるわけです。恐らく、これは人事管理でも同じことだと思うわけです。
今大臣がお話しいただいた、私が先ほど質問もさせていただいた、なぜ必要なんですかということに関してのお答えでいえば、専門スタッフ職四級が新設されて、そういう役職があった方がいいということはわかるわけです。それは、説明を聞けば、場合によっては聞かなくてもそうですが、そういう役職があった方が役に立つんだろうなということはもちろんわかるわけです。
きょう、あらかじめ大臣に最初、厳しい財政事情を踏まえた全体の人件費の管理の話をお伺いしたのは、こういう状況であればこそなおのことですが、あった方がいい役職は全部つくれるわけではなくて、その中でもっと絞り込んでいって、なければいけない役職をやはりつくらなきゃいけない。
さらに言えば、恐らく現実は、なければいけない役職であるんだけれども、しかし、財政的な制約があるので、その中でも絞り込んでこれをつくらなきゃいけないのだという議論の中で、この新設という話が初めて出てきて、そして公に、まあ仕方がない、もしくは、それは必要でしょう、優先順位が高いからこれはやりましょうという結論になるべき案件なんだと思うわけです。
何度もお伺いをしてきてやはり腹に落ちないのはそこでして、あった方がいいではなくて、このスタッフ職四級がなければならないのだという、その強い必要性をぜひ御説明いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 おっしゃることはよくわかりますが、今回、我々は、これはぜひ必要だと判断したわけであります。
 私も、かつて、大蔵省という役所で援助を担当したことがありましたけれども、通常、大蔵省の国際交渉というのは通貨が主流なので、そこはその財務官とか、位の高い人たちがやるんですけれども、援助のところは、ちょっと下の審議官クラスでやっていくんですね。そのかばん持ちをして、世界じゅうを回って援助をやりましたが、主要国の中で援助をやっている人というのは、もう何十年もやっている人ばかりと交渉することになります。
 そのときに私がつくづく思ったのは、やはり日本でも、援助というものについて、過去の経験とかいろいろな課題とかを常に語り合う、そういう人脈づくりも要るし、そうした方が本当のところの本音を話せる、そういう人材をつくっていく必要があるんじゃないかとつくづく感じました。
 あるいは、十年ほど前に経産副大臣をやっていたときに、石油鉱区の権利を取る交渉があるんですけれども、これもまた、顔見知りじゃないととてもそんな話はできないんですね。したがって、日本では、アラブの国においてそうした鉱区の権限を取るというのがなかなか難しい。しかし、その中でも、経産省にもそういうことを専門にやっている人がいました。
 そういうことをもって、これからサイバーセキュリティーの話とかがあります。そういう意味では、これまで課長以下のところでやっていたんですけれども、やはり世界の、そういう特殊な、専門的な分野においては、課を超えて局長クラスにはアドバイスできる、そういうスタッフをつくっておかなければ、きちっとした国際交渉なりはできないんじゃないかと私はつくづく思っておりまして、今回、こうした形で人事院の方から勧告をいただいてやるということは、これはぜひ必要なことじゃないかと思っております。
 そのかわり、おっしゃったように人件費の話もありますから、それはスクラップを確保して人件費が増加しないようには努力したいと思っています。

○神山(洋)委員 一般論として、大臣のお話は理解できるわけです。特に対外交渉を行う際に、それは人間関係も含めて、非常に濃密な関係が結果にも資するということはもちろん理解をするわけです。
先ほど来申し上げているように、だからあった方がいいのだというお話はわかります。なければならないのだと。逆に、それがないことによっていかなる損害が生まれるのかということが明確でない。そこを、これまでも何度か、これは前段も含めて伺ってきたわけですが、なかなかクリアになってこないわけです。
揚げ足をとるわけじゃありませんが、例えば今大臣からお話があった、財務省の中での援助関係というお話が今の一例としてあったわけです。これは、事前に事務方の方から、来年度の概算要求で専門スタッフ職四級についてこんなのが今上がってきていますよというのは参考までにいただいていますが、財務省でもあるわけですよ、国税庁、国税調整官という形で上げていますと。いや、ここに今おっしゃっていただいた援助関係という話があるんだったら多少なりともすっと入ってくるわけですが、何ともマッチしないなという印象も抱くわけです。
これは、実は、もう前段、個別も含めて四回か五回同じ話を伺っているわけですが、ずっとこのレベルのやりとりで話が深まっていかないという状況です。
では、いろいろな聞き方をしていったときに、専門スタッフ職四級が必要なのだという話の中で、専門スタッフ職四級を新設することが複線型人事管理というものに資するのだというお話も何度かいただきました。課長補佐、課長、審議官とあって、そこが専門スタッフ職に少しずつ移行していくというスタイルの中で、複線型人事管理ですか、という形で資するのだというお話もあるわけです。
そんなものかなとも思うわけですが、これまで、一から三級の中で、課長補佐、室長、課長、そこからのいわゆる複線型人事管理というのは機能していたのかもしれません、今度審議官クラスですという話なわけです。
では、今まで何でそこの審議官クラスは要らなかったのかな、何で今回になって四級が必要なのかなと。逆に言えば、では、局長クラスの五級はなぜ今回要らないのか、これからまたやろうとしているのかな、この辺もさっぱりよくわからないわけです。
そもそも、このあたりを考えていくと、いろいろな状況の中で、役所の方々が、やはり再就職がなかなか困難になってきているという状況もあるのかなとも思うわけです、そういうものの受け皿に使おうとしているのかなとすら思えてしまうんですが、大臣、この点はいかがですか。

○山本(幸)国務大臣 かつて民主党政権時代に、そういう形のスタッフ職の提案があったことは承知しております。
 しかし、今回は、全く違う観点から考えているわけでありまして、まさに本当に専門的、高度な能力、人脈等が必要なそういう人材に、局長クラスあるいはその上の方々に助言を与えていただくという形のものがどうしても必要であるということで、限定的に、各省の要求をチェックして、本当に必要なものだけをスタッフ職としてやっていこうということであります。そういう意味では、だんだんそういう人材が育っていく、きているということも踏まえておりますけれども。
 それから、先ほど、そういう人材がいないことによって、どういう利益を失ったかということがありましたね。これは、私は、まさに経産副大臣のときに思いましたけれども、石油についての採掘権を獲得するときに、そうした人材の不足で失うことがございました。まさに、そういう意味では、そうしたスタッフがちゃんといて、長年にわたって人脈を築き、そういうことの専門家がいなかったことで私は国益を失ったということもあったのではないかというふうにそのときに感じました。
 そういう意味では、こうした専門職についてのスタッフの議論が、昔行われた、天下り先がないからそのためにというような話とは全く違うという認識でおりますし、では、すぐまた五級まで考えるかというと、そこまでは今のところ考えておりません。

○神山(洋)委員 その石油権益の話はアザデガン油田とかそういう話ですか、そうですよね。スタッフ職四級が仮にそのときにあったから、ではその権益は失われなかったのかというと、ちょっと私はそこは違うかなとは思いますが、あえてそこは突っ込みません。
先ほど大臣からも、スクラップ・アンド・ビルドという話がありました。今回、事前にお話を伺っている中でも、このスタッフ職四級の新設の中であっても、トータルでは人件費の枠は守るんだというお話があって、新設をした分はスクラップ・アンド・ビルドをするんだというお話は確かにありました。それは事実としてそうなのかという話が一点と、その上で、それはどういう形で担保されているのか、されようとしているのか、そこを教えてください。

○山本(幸)国務大臣 これは、これから実際にやっていくところでありますけれども、私どもとしては、スクラップを確保して人件費が増加しないようにという方針で臨む。そしてまた、それがちゃんと行われているかどうかはきちっとチェックするということであります。

○神山(洋)委員 だから、その辺がやはりちょっと弱いんですよね。そうしたいと思っていますというのはわかるんですけれども、どこでそうしようとしているのかがよくわからないわけですよ。
この後の話にもかかわりますし、この話全体にもかかわる話ですが、いわゆる公務員バッシングのような話があって、それで、たたけばいいんだという風潮を私は是とはしません。そうあるべきではないと思っています。同時に、やはり、きちんとした仕事をし、能力も持ち、意思を持ちという方は、きちんとそれは報われなければいけないというふうにも思っています。
さはさりながら、世の中のこの状況に全く背を向けるわけにもいかないというところもありますし、何よりもやはり我が国の国家財政の厳しい状況というところは、もう言わずもがなの状況という中で、我々はきっちりと、より多くの方々に許容される範囲ができるだけ広い解をつくらなきゃいけないというふうに思うわけです。
なので、このスタッフ職四級の新設についても、こうこうこうだからやはりこれはどうしても必要なんだ、これをやることによってこういう効果を生み出したいのだ、加えて、今のお話でいえば、全体の人件費のところも総額は変わらないようにするんだ、そこはこういう形でちゃんとクリップどめしているんだという、やはり論理的に多くの方々を説得する材料が必要だと思うんですね。そこがやはり感じられないというのは大変残念だということは、一点申し上げておきたいと思います。
余りこの話ばかりしているわけにもいかないので、人勧制度そのものも含めた少し大きな話をさせていただきたいと思います。
改めてここでお話しするまでもありませんが、この人事院勧告制度は、戦後から始まって、約七十年間運用されてきているわけです。いろいろな議論はこれまでもあったと承知をしていますが、七十年間運用されてきたということは、制度そのものにはやはり一定の合理性があったから存続をすることができたんだというふうにも私は思っているわけです。もちろん、歴史的経緯の中で、どういうふうに最初生まれてきたとかというところはいろいろあったという話も承知しています。
ただ、では、七十年経てきて、戦後復興が終わり、その後、高度成長期を経て、これから低成長という表現をするべきか安定成長という表現をするべきかという時代に入り、国家財政も非常に逼迫した状況になっているというときに、七十年間の歴史的意義は私はあると思っていますが、さはさりながら、では、今日的な、もしくは今後も含めた意義を、これまでの歴史的意義をそのまま引っ張るという形で考えるべきなのかというと、私はここで一度立ちどまって考えるべきだなと思いますし、後でも議論させていただきますが、ここ十年、二十年、ずっとそういう観点で議論がなされてきたんだと思うんです。
ここでまず大臣に全体の中でお伺いをしたいのは、この人勧制度について歴史的意義をどう評価されているという話もありますし、大事なのは、現時点もしくはこれからを踏まえたときに、この制度をどう評価されていますでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 御指摘のように、戦後七十年近く人勧制度が行われてきまして、私はこれは評価すべきものだと思っております。
 そのことは、国家公務員がその特殊性と職務の公共性から労働基本権が制約されておりますので、その代償措置として人事院勧告制度というものがあって、国家公務員に対して社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保するという機能を有して、また、国家公務員の士気の向上、公務における人材の確保にも重要な役割を果たしてきたと評価しております。
 その意味では、私は、やはり第三者機関としての人事院勧告制度というのは今後も尊重すべきものだというふうに思っております。

○神山(洋)委員 今大臣から、今後も尊重するべきであるというお話をいただきました。
平成二十年、国家公務員制度改革基本法が成立をしました。第十二条にはこうあります。「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」ということが書いてあるわけです。結構思い切った文言だなと思います。
協約締結権を付与するという話は、つまり、今大臣がおっしゃっていただいた、労働基本権を制約している代償措置としての人勧制度そのものを見直すという意思が、もしくは見直そうかという構えが、この文言の中には私は含まれているというふうに考えるわけです。
時間の関係もありますので余り細かいことまで申し上げられませんが、では、これを一体どう取り扱おうとしているのかというところを、まずお伺いしたいわけです。
平成二十年に、この国家公務員制度改革基本法が成立をし、翌二十一年には、国家公務員制度改革推進本部で四年間計画という工程表がつくられているわけですね。そこの中でも、何をいつまでにやるんだということが極めて重要だということが明示をされた中で、かなり思い切った書き方がされているわけです。
ここはもう政治的な話もありますし、当時、多分この改革法が成立した段階では麻生政権、その後、政権交代が起きて、また戻っているという経緯があることは承知はしていますが、しかし、平成二十年のこの基本法はまだ残っていて、十二条も生きているわけです。では、これをどう取り扱おうかという話の中で、今大臣お話のあった、歴史的意義はあって、これからもその代償措置としての人勧制度を存続させていくべきというように今聞き取ることができたような気がするんですが、これをこのまま存置させようとしている、そういう理解でよろしいですか。

○山本(幸)国務大臣 今おっしゃったような経緯があることは私も承知しております。
 しかし、その上で、自律的労使関係制度については、まだまだいろいろな議論があるし、問題もあると思っております。そういう意味では、必要に応じて職員団体等との意見交換はやっていきたいと思いますけれども、これは慎重に考えるべきものであって、最終的には国会の論議で決めるべきものだと思います。
 私としては、現状のこの人勧制度というのは尊重をしていくべきものだと考えております。

○神山(洋)委員 所管大臣としては、現行制度がある以上、人勧制度を尊重すべきといえば、それはもちろんそうだと思うわけですが、少なくとも、そういう方向感を基本法という形で法律で明記しているという状態の中で、では、そこの条文を踏まえた具体的な対応をどうするのかというところが問われるんだと思うんです。
逆に言えば、本当に、今大臣がおっしゃっていただいたように、いや、これからも、十年も、五十年も、百年先もこの人勧制度はあり続けるべきなのだともし仮に思うのであれば、この基本法のこの条文は修正すべきですよ。明らかに違う方向になっちゃっているわけですから。
少なくとも、ここには、「便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、」というところまで、かなり具体的に書いてあるわけです。その便益及び費用というものを、何か数字に置きかえるようなものなのだろうかという個人的な疑問は正直ありますが、少なくとも、この七十年間続いてきた、労働基本権を制約する代償措置として人勧制度を置き、裏を返せば、国の財政状況がどうあろうと、そこには関係なくとまでは今言いませんが、民間に準拠する中で給与を決めてきたというこの制度が、これからも、その存在意義として、ほかの幾つかのオプションの中でもやはり一番なのかというと、私は、やはり考え直してもいい時期に差しかかっている時期じゃないかと思うんです。
これは、国家公務員としてこの行政機関の中で仕事をされている方々からしたって、わかるわけですよ、我が国の状況がどういう状況なのか。そういう状況の中で、もちろん、これは給与の個別の金額だけの話ではありませんが、やはり、具体的な、ここで言う協約締結権も含めたことをこれから新たにアップデートしてやっていくようなことができることによってもっと国に貢献をすることができるという部分も、私は考えるべきじゃないかなと思うんです。
もちろん、戦後の混乱期の中で、公務員のストライキができるだけない方がいいなとか、そういう国の安定性を前提とした中で、アメリカに我が国は近いですが、そこの労働基本権を制約してきたという事実はあるんだと思うんです。ただ、では、例えばドイツを見ても、フランスを見ても、イギリスも一部そうかもしれません、必ずしも我が国と同じような形ではないという事実もある中で、やはりここはもう少し突っ込んだ検討をするべきじゃないかと思うんですね。
今、少しだけ前段を申し上げてしまいましたけれども、では、例えば附帯決議の話を先ほど申し上げました。同じ先ほど申し上げた附帯決議の中で、三番のところには、「自律的労使関係制度について、国家公務員制度改革基本法第十二条の規定に基づき、国民の理解を得た上で、職員団体と所要の意見交換を行いつつ、合意形成に努めること。」というふうに書いてありまして、これは実は、ことしの春先の附帯決議のみならず、これまでも何度か同じ文言で書かれていますよね。これは、これからどう対応されようとしているんでしょうか。
先ほど大臣がおっしゃったように、もし、もうここは方針転換するんだというのであれば、きちっと方針転換するということをやはり言うべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○山本(幸)国務大臣 私としては、人勧制度は尊重していくべきだと考えております。ただ、最終的には、これはもう国会での議論で決めるべき話だと思います。

○神山(洋)委員 国会での議論を踏まえてこの基本法が出て、こういう文言になっているんだと私は承知をしているわけです。
もう一回読みますけれども、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」と書いてあるわけです。空文化しちゃうじゃないですか、これだと。
やるなら、やはりきちっと、当初の工程表をつくったときみたいに、何をいつまでにということをきちっと明示してやるべきだと思いますし、やらないんだったら、やりません、方針転換をしますということを、やはり明確にするべきじゃないかと思うんですよ。その点を申し上げているし、大臣にお伺いしているわけです。いかがですか。

○山本(幸)国務大臣 これは、そういう法律ができて、それからその後、民主党政権の中でまた法律ができて、しかし解散で廃案になりました。そういう経緯を踏まえた上で、現在我々は人勧制度を尊重するという立場を持ってやっているわけであります。
 したがいまして、今は私としてはそういう気持ちでおりますけれども、個人的には人勧制度は維持すべきだと考えております。それをどういうふうに整理するかどうかについては、国会での議論で決めるべき話だと思います。

○神山(洋)委員 政府の方針を伺っているわけです。意思をお伺いしているわけです。
国会としては、議決をすることによって、平成二十年、八年前ですね、この改革法を残していて、現時点でこれを改正していない以上、現時点での国会の意思はここにあるわけです。それを踏まえた政府としての意思、判断、方針、これをお伺いしています。

○山本(幸)国務大臣 政府としての意思は、人事院勧告制度を尊重するということであります。

○神山(洋)委員 現時点で存在をしている人勧制度を尊重するのは我々も同じですし、そうあるべきだと思います。
私が今お伺いをしているのは、現時点であるものを今後も引き続き存置させる必要があるのかどうか、この点についての方針をお伺いしています。

○山本(幸)国務大臣 私は、人事院勧告制度を尊重していくべきだと考えております。

○神山(洋)委員 では、変えないということですか。このままでいいと。
だとしたら、この基本法、修正案でも出すべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。

○山本(幸)国務大臣 それは、今後の国会等の議論をお伺いして決めるべき話だというふうに思います。

○神山(洋)委員 堂々めぐりになってきた気はしますけれども。
もしよろしければ、いいですか。どうぞ。

○山本(幸)国務大臣 これはもう先ほども申し上げましたけれども、まさに自律的労使関係制度については、附帯決議を踏まえて、必要に応じて職員団体と意見交換をしているところであります。
 しかし、多岐にわたる課題や議論がございます。それはもう細かいことは申し上げませんけれども。そういう意味で、引き続き慎重に検討するということでありますが、私は人事院勧告制度を尊重していきたいと思っています。

○神山(洋)委員 若干答弁の補正をしていただいたかなとも思いますし、そんなにすぱっと切れるような話でないということは承知をしていますが、二十年に基本法ができて、二十一年に計画ができて、そこに、かなり思い切った形で、内容はともかくとして、何をいつまでにやるんだということをやはり明確にしてやっていくんだという姿勢があらわれていて、私はそれは正しいと思うんです。
大臣の具体的な方針がどこにあるのかというのは、いまいちまだ定かではありませんでしたけれども、やはり納期というのは必要だと思うんですね。十年間この議論をだらだらやっていていいという話ではないと思いますので、きちっと納期も切った形で、具体的な方針をやはり大臣として出していただくように改めてお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。

○秋元委員長 次に、井出庸生君。

○井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。本日はよろしくお願いをいたします。
私も、引き続き、人事院勧告について伺ってまいりたいと思います。私も、結論を申し上げますと、人事院勧告というものの見直し、それと労働基本権の付与というものが必要ではないか、そういう視点で伺ってまいりたいと思うんです。
まず、国家公務員法で、人勧は人勧できちっと法整備、法制度としてありますが、国家公務員法の中で、当局は労働者団体から交渉を求められたときは交渉に応ずる立場であるものとするというような文言がありまして、これはどういうことなのかときのう内閣の方にお聞きをしたら、交渉には応じなければいけないということだという御説明を受けました。
ですから、交渉に応じることも法律、人勧も法律、ともに法律に書かれていることであるのであれば、当然、その両方が尊重されなければならないと思うのですが、まずそのことについて、大臣に見解をいただきたいと思います。

○山本(幸)国務大臣 おっしゃるように、まず人事院勧告制度、これは労働基本権制約の代償措置の根幹でありますので、これを尊重するというのが内閣の基本方針であります。
 一方で、国家公務員法で、そういう労働団体から交渉の要求があればこれに応じなければいけないということで、私どもも、そうした協議の場はしっかりと確保してやっているわけであります。それはお互いに尊重しながらやるということであります。

○井出委員 意見交換、協議の場がある、労働団体との会見というものがあるということを伺っているんですが、事務方に伺いたいんですが、この労働団体と当局の会見というものが、一体毎年どのような頻度、中身で行われているか、わかる範囲で教えていただければと思います。

○三輪政府参考人 職員団体と私ども内閣人事局の間におきましては、大体春、いわゆる民間では春闘というふうに言われるわけでございますけれども、こういった春の時期に何回か、また、人事院勧告が出た後に、その扱いを主に議題といたしまして、またそのほかの議題も含めまして、何回か、その取り扱いを決定するまでの間、会見を行うというのが、大体、例年のパターンでございます。

○井出委員 人事院に来ていただいたので、人事院にも伺いたいのですが、この会見というものが、実際、人事院勧告にきちっとその労働団体の意見というものが参考になるだけの、会見というものの重要性ですね、その辺について人事院さんの見解をいただきたいと思います。

○古屋政府参考人 今回の勧告に当たりましても、この勧告をめぐって組合との会見を数多く行っておりまして、非常に重要なものと認識しております。
ちなみに、回数で申し上げますと、昨年の方の回数になりますが、年間、本院、地方合わせて二百回を超える会見を行っておりまして、春闘期、人勧期については、おおむねその半分ぐらいを行っているというふうな状況でございます。

○井出委員 今お話あったとおり、私は平成二十年の資料しか持っていないんですが、平成二十年も、人事院本院においては九十五回、地方事務局、地方事務所において百五十九回の二百五十四回、会見をやっている。
どの程度参考にされているかわからないんですが、これはまた政府の方に伺いたいのですが、それだけ至るところで会見をやっていて、話がまとまったときはどうするのか。法律で、交渉に応じなければいけない。話がまとまれば人勧を待たなくてもいいんじゃないか、そういう率直な疑問があるんですが、いかがでしょうか。

○三輪政府参考人 お答えいたします。
国家公務員の場合、いわゆる団結権というものは法律上ございます。また、団体交渉をするという意味で、交渉するという意味では、そういった権能はございますけれども、その結果として、いわゆる法的拘束力を持つ労働協約、そういったものを民間と同じような意味で締結する、そういう権能はございません。
したがいまして、当局と職員団体の間で合意をするということは、これが即、法的拘束力を持って、そのままその内容の実施について当局がその実施の法的責任を負う、そういう性質のものではないということでございます。

○井出委員 大臣に御提案をしたいんですが、今、交渉することは法律で定められているんですね。おっしゃられたように、協定の締結権がないんです。協定の締結権を法律事項にすれば、まとまったときはそっちを優先すれば政府側も公務員側も大変いいのではないかと思うのですが、その件についてはいかがでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 職員団体との交渉は、当然、必要があればやるわけでありますけれども、今話がありましたように、法的拘束力はございません。その場合、仮に合意できたとしても、職員団体に加入していない職員も多くいたり、あるいは複数の職員団体が存在したりしておりまして、現状では、そういう法的効果がない勤務条件の決定というのは合理的ではない、現実的ではないと考えます。
 これを簡単に労働協約締結権を与えるというような話は、まだいろいろな諸課題があると思いますので、そう簡単な話ではないというふうに思います。最終的には国会の法律で決める話であります。

○井出委員 公務員の労働基本権が制約されて、代償措置の人勧ができた、それは昭和二十三年。昭和二十二年に国家公務員法ができたときは基本権が公務員にも付与をされていた、たった一年なんですが。
このいきさつを少し調べましたら、日本国憲法ができた、それに基づいて公務員は全体の奉仕者になった。民主的に効率的に運営をできるようにということで国家公務員法ができたのですが、そのときは基本権があった。
ただ、このときに、アメリカの意見を参考にして、アメリカの意見は当初、スト権等基本権を制約しろと。しかし、日本政府はそこを残した。そのことについて、アメリカはそのとき、それはおかしいというようなことを述べたということが、ある文献に残っていたのです。
それを受けて、結局、日本政府のつくった国家公務員法で、当時ストがふえたわけですね。ふえそうになった、ふえた。一年余りの間に組合員がふえて、大がかりなゼネストがありそうになった。そこで、御存じのように、マッカーサーの書簡、そういうものが出て、二十三年の改正につながっていくんですが、当時問題になったのは争議権、ストの問題だと思うんですね。
私は、協定締結権を与えるところまではそんなにハードルは、当時のいきさつを振り返れば、高くないのかなとも思いますし、人事院勧告も、尊重はしなければいけない、しかし、尊重する努力を政府も国会もしたのであれば、最終的には恐らく国会の判断になるかと思うんです。
ですから、協定の締結権を与える、開かれた場で労使交渉をする。開かれた場になれば、労使交渉でどっちがむちゃくちゃなことを言っているか、どっちが正当なことを言っているかは、それは世の中が評価する。最終的に、まとまったらよし、まとまったけれども何か不満がある、そういうときは最後、国会での議論の場がある、そういう制度にすれば、私は十分これは制度として成り立つんじゃないかなと思うんです。
ですから、私は、簡単に協定締結権を与えたらいいんじゃないかということではなくて、そこまでだったら私なりの検討で十分現状でもいけるのではないか、そういう提案なんですが、いかがでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 協約締結権の付与という点については、いろいろな議論があります。疑問や課題としては、交渉コストが増加して混乱を招くおそれがある、あるいは労使交渉の長期化により業務執行に影響を及ぼすおそれがある、労使が自主決着できず、常に仲裁手続に移行するおそれがある等の問題が指摘されているところでございます。
 したがいまして、私どもは、必要に応じて職員団体と意見交換を実施してきておりますが、協約締結権の付与については、こうした多岐にわたる課題や議論があることから、慎重に検討すべきものだと考えております。

○井出委員 今ざっと御説明した戦後の議論なんですけれども、昭和二十二年の国家公務員法が成立するときは、その前にアメリカのフーバー草案と呼ばれるものが提示をされている。これは人事院の平成二十年度の年次報告書に書かれてあるので、人事院は当然御存じだと思うんです。
にもかかわらず、にもかかわらずと言うのはちょっと当時の日本政府に失礼なんですが、日本政府はそのフーバー草案の趣旨を一部聞かずに、フーバー草案は、ストライキ権を認めない、そういうことを言っていたんですが、それを削除したんですね、当時の日本政府は。そのことを知ったフーバーは、成立した国家公務員法とフーバー草案との間には悲劇的な相違が存在すると強く批判をし、そのこともあって、翌年のマッカーサーの書簡ということにもつながっていくんです。
ですから、やはりどう考えても、その当時のところはストライキ、それに対する懸念ではないのかなというところは強く問題提起をしておきたいんです。
交渉のコストがかかる、混乱がある、そういうことは今大臣からのお話でございましたが、東日本大震災の後に、給与を下げようと、当時の政権が労使と交渉をした。都合六回でしょうか、交渉が行われて、全ての団体と合意をしたわけではないですが、合意に至っている。
これは私は大変希有な例だと思っておりますが、やればできるんじゃないか、そういう例でもあると思いますし、果たして当時のこの交渉を、混乱やコストがあったと言えるのか。また、これは当時、団体側は、当初は、人事院勧告があるのに何でこんな交渉をするんだということで、それは憲法違反なんだ、そういう主張もされていたんですが、果たして当時の交渉、六回の交渉で合意に至ったということを、憲法違反だとか、混乱、コストがあったということが言えるかどうか、そこについて政府のコメントを求めたいと思います。

○三輪政府参考人 平成二十三年の五月から六月まで、給与の特例減額に関する法案を政府から提出する前に、職員団体とのいわゆる交渉が行われたということでございます。
これは、政府側からの提案によりまして、平成二十三年の五月の十三日から職員団体との交渉が開始をされまして、連合系の公務員連絡会とは五月の二十三日までに計四回、全労連系の国公労連とは六月の二日までに計六回の交渉が行われたところでございます。
結果的には、公務員連絡会とは合意に至り、また、国公労連とは合意には至らなかった、このように承知をしております。
また、合意に至らなかった国公労連側からは、その後、訴訟が提起をされているという状況でございます。

○井出委員 私の前段の発言で六回の交渉と申し上げたのは、今御答弁いただいた、合意に至らなかった方と六回ということで、ちょっとその趣旨を訂正したいと思うのです。
これは今係争中、おっしゃるように裁判になっておりますが、十二月に高裁判決が出るように聞いております。東京地裁の判決を見ますと、政府側のスタンスというものを、六回交渉しているし、交渉は尽くしている、また、当時の政府側の主張というものは違法とは言えない、そういうスタンスを示されておりまして、ここは引き続きの論点、裁判の判断になるのかと思うんですが、果たしてこれが混乱とか憲法違反とかと言えるのか。
と私が申しますのは、よく言われるのは、昭和五十七年でしょうか、人勧を見送った、そのときに裁判があって、一年限りの非常事態であれば、ストをしていいとまでは言えない、スト権は認められるんだけれども、そういう緊急的なものであればいい、そういう判決が有名なんですが、私、いろいろちょっと調べてみました。
法政大学の名誉教授の早川征一郎さんという方がこういうことに対して大変な論文を書かれているんですが、論文の名前が「最近における人事院勧告の動向と直面する問題」と。「二〇〇〇~二〇〇九年の十年間を中心に」という副題がついているので、その当時に出された論文なんですが、これで人事院勧告の歴史を振り返ってくれております。
第一回勧告は一九四八年。第一回勧告は、大変強い抵抗があったが、第一回ということを理由に勧告を実施した。そして第二回、一九四九年の勧告は、財政難を理由に早くも実施をされなかった。それ以降、一九五〇年から五二年まではベース勧告水準を値切る実施であったと。ですから、当面の間は、しばらく、とても代償措置とは言えない機能不全の状態にあったということを早川さんは指摘している。
そして、一九五四年は、官民の賃金較差が一〇%を超えていたにもかかわらず、財政危機ということで、人事院みずから勧告を留保する、そういう年もあったんですね。そちらの方がよほど、私は、混乱とか法律上違法と言えるのではないか、むしろ、話し合いをして合致するんであれば、それにこしたことはないのかなと思うんですが、このことについて大臣からコメントをいただきたいと思います。

○山本(幸)国務大臣 先ほども申し上げましたように、協約締結権の付与についてはまだいろいろな課題がございます。私どももそれは看過し得ない問題ではないかと思っておりますので、一概に、すぐこれを付与すればいいというような話にはならない、引き続き慎重に検討するものだと思っております。

○井出委員 人事院にも伺いたいのですが、これは戦後の混乱期ということももしかしたらおっしゃられるかもしれませんが、実際、人事院みずから勧告を留保する、そういう年があった、それからまた、今申し上げたように、その前段はずっと勧告の未実施、ベース勧告水準を値切る実施が行われた。
だから、私は決して、人勧が極めてバランスのとれた、人勧だって、経済状況とかそういうものに鑑みれば、どうなるかわからないんじゃないか、そういう思いを、過去のいきさつを見ていて、率直に思ったんですが、それについてコメントをいただきたいと思います。

○古屋政府参考人 人事院の給与勧告制度、当初に御説明もございましたけれども、あくまでこれは労働基本権制約の代償措置ということでございますので、私どもといたしましては、民間の給与水準に合わせるということで国家公務員の適正な処遇を確保しようとするものでございます。
そういうことで、近年におきましては、人事院勧告制度の意義、役割に深い理解をいただいているというふうに考えているところでございます。

○井出委員 近年はそうなんでしょうけれども。
私のいる民進党もそうですし、日本維新の会さんもそうですし、自由民主党におかれても、二〇一二年の政策、J―ファイルとおっしゃいましたかね、その中で、国、地方の公務員総人件費を二兆円削減するというような話を明記されておりまして、財政が危ういという感覚は、今においても一定程度の共通理解なのかなと思うんですが、民主党政権が実際、労使交渉を行ったときに、財政困難の証拠を示せ、二割カットの根拠は何だということを労働者団体から強く言われたわけであります。
ただ、当時の古いいきさつというのは、本当にまずいと思ったときに、人事院みずから勧告を留保しちゃう。留保というのはやめちゃうということだと思うんですけれども。それから実施をしない年がばんばんばんばん続く。今のような安定した状況ではない、むしろ不実施が安定している。そういうことが、今は各政党が財政危機を主張している、公務員の人件費にも少し協力をしてほしいということを言われている。では実際、本当に危機なのかというところは、当時の民主党政権の団体交渉を見れば、そういう議論も出てくることは今後容易に想像されますが、でも、本当にまずいぞとなったときに、いや応なく、政府の方針で公務員の給与をカットする。人勧もまた過去のように留保したり、そういうことだってないことはないと私は思うんですよ。
だったら、まだ交渉に応じることは法律上できる、まとまれるんだったらまとまろう、今のうちから国民の前でオープンな議論をして、異議のあるところは最終的に国会で判断をすればいいわけですから。これは、人勧が必ずしも常に、そういう政治情勢、社会情勢の危機とかかわらず人勧は常に不変、私は必ずしもそうとは言い切れない、そういうことを申し上げたいんですが、人事院にコメントをいただきたいと思います。

○古屋政府参考人 人事院の給与勧告は、先ほども申し上げたとおり、国家公務員の労働基本権制約の代償措置として、民間準拠による適正な給与水準を確保しようとするものでございます。
今ございましたように、国家公務員給与を含む国の歳出の優先順位ということになろうかと思いますが、そういう歳出に必要な財源の確保でありますとか、そういったものは、内閣が国政全般の観点から判断して、最終的には国会において議決されるものというふうに理解しているところでございます。

○井出委員 何か私の質問に耳を塞がれていたかのような答弁で、大変不満なのですが、大臣は、私の申し上げたことをわかっていただけると思うんですよ。
人勧だって、そういう非常事態には万能ではないということは、これは歴史が示しておりますし、今、これだけ借金があって、各政党が人件費の削減ということを言ってきた経緯もある。ただ、本当にもう抜き差しならぬ、どこかほかの国の経済が傾いてというような状況かどうかということについては議論があると思うんですけれども、だったら、まだその議論という余力のあるうちに、労使の話し合いができるうちに、開かれた場で議論をして、締結権を付与して合意をしていくということが、本当に、国家公務員法の趣旨にも書いてあるんですけれども、民主的というような言葉が出てくるんですけれども、それにふさわしいんじゃないかな、そういう思いを持っているんですが、いかがでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 先ほどと同じような答弁になると思いますけれども、協約締結権の付与についてはいろいろな課題があると私どもは認識しておりまして、これは引き続き慎重に検討するべきものだと思っております。

○井出委員 この後、質問される方もやるかと思いますが、財政的な問題と向き合うときに、国家公務員、地方公務員の給与、人件費を二兆円下げる、その一方で、人事院勧告は尊重する、その両方を公約に明記されているのは、私はそれは極めて実現の難しい話だなと思います。
それから、この人勧は、昭和五十七年もそうですし、私が紹介したところもそうですし、国の財政がまずいときに、人勧をぱっと無視して一気に下げるんですよ。人勧自体もやらないという年もあったと言われている。
それでは、民主党政権の震災時の対応はどうだったかというと、それは、給料を減らしたいんですよ。団体は、減らされちゃ困るんですよ。だから、その下げ幅は縮小したかもしれません。しかし、折り合って減らしたんですよ。
何か、いざというときにばんと減らされる、人勧も留保されるよりは、話し合って、その減り幅について話した方が、私は、公務員の側の要請にも、決してそれは、我々各政党が国家公務員の人件費削減を言ってきたという視点だけではなくて、公務員の側からもぜひ検討に値するのではないか、そういうことを申し上げて、時間になりましたので、終わりたいと思います。
ありがとうございました。

○秋元委員長 次に、井坂信彦君。

○井坂委員 民進党の井坂信彦です。
本日は、この内閣委員会におきまして質問の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。
さて、先ほどから、人事院勧告そして国家財政のことについて議論が続いております。
まずお伺いしたいのが、国家財政の現状について大臣にお伺いしたいと思います。
今回の人事院勧告どおりに給与アップをいたしますと、財務省、総務省の試算では、国家公務員人件費が五百五十億円、そして地方公務員人件費が千三百七十億円、合計千九百二十億円の給与アップということになります。一方で、少子高齢化により社会保障費が自然に六千四百億円ふえるわけでありますが、政府は、これを五千億円まで一千四百億円もカットすると表明をしております。
公務員給与を二千億円近くふやして、そして社会保障費を一千四百億円カットするようなことを今後いつまで続けるんでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 国家公務員の労働基本権が制約されている状況のもとでは、その代償措置の根幹をなす人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、国政全般の観点から人事院勧告の取り扱いを決定するのが政府としての基本姿勢でございます。
 政府としては、国家公務員の人件費については、現在、国家公務員の総人件費に関する基本方針及び経済・財政再生計画に基づきまして、給与制度の総合的見直しの着実な実施、簡素で効率的な行政組織、体制の確立を進めているところでありまして、現行制度のもとで将来に向けて効果が持続するような総人件費の抑制政策に取り組んでまいるという方針であります。

○井坂委員 抑制策とおっしゃいながら、現にやっていることは、公務員給与を二千億ふやして、そして社会保障を一千四百億削る、こういうことであります。
人事院の守備範囲についてお伺いをしたいと思います。
何でこんなことが起こるのかといえば、そもそも人事院勧告は、民間給与だけを調査して決められており、国家財政のことは考慮されていないからだというふうに理解をしております。アベノミクスで実質賃金はマイナスが続いてきましたが、それでも、名目賃金がプラスになれば、人事院は今後も毎年のように公務員給与アップを勧告してくることになります。
確認ですが、人事院は日本の財政状況も考慮して勧告を行っているのか、またそのような義務や権限はあるのか、お伺いいたします。

○古屋政府参考人 人事院勧告は、先ほど来出ておりますが、労働基本権制約の代償措置ということで、民間準拠による適正な給与水準を確保しようとするものでございます。
今、国の歳出の問題、ここら辺に関しましては、最終的には、内閣が国政全般の観点から判断し、国会において議決されるということですので、財政事情を考慮することにつきましては、歳出の優先順位に関することになりますので、これは人事院が判断するということにはなりませんので、人事院の権能を超えるものというふうに考えているところでございます。

○井坂委員 国家財政の状況に関しては、それを考慮すること自体が人事院の権能を超える、これは過去にもそう答弁をしていたとおり、確認をさせていただきました。
そこで、お配りをしております資料一をごらんいただきたいと思います。
人事院は万能ではないというよりも、そもそも、財政状況を考慮する義務も権能もないということであります。先ほどの井出議員の議論でも明らかなように、人事院勧告というのは、単に政府が尊重すればよい、尊重した上で、政府が財政状況も考えて人事院勧告に従わないときは従わなくたっていいんだ、こんな簡単な話ではありません。過去の実例、また裁判、判例を見れば、従わなければ即座に憲法問題として提起をされてしまうというような問題であります。
私自身も、去年までは、毎年のように人事院勧告に基づく公務員給与アップにただ反対票を投じてまいった一人であります。野党であれば、毎年反対反対と言っていれば済むわけでありますが、しかしこれは、政府・与党となれば、人事院勧告に背いて給与カットを何年もするわけにはいかないんだろうというふうにも思うわけであります。
大臣に、そもそもお伺いをしたいんですが、つまりは、人事院勧告制度が存在をする限りは、財政状況を考慮した給与決定というのは事実上できないんではないでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 人事院勧告制度というのは、先ほどもお話がありましたように、労働基本権制約の代償措置の根幹でありますので、尊重するというのが基本姿勢でありますが、財政状況等を含めた検討は当然政府として行うわけでありまして、給与関係閣僚会議において、国の財政状況も含めて国政全般の観点から常に判断をするわけで、その上で取り扱いを決定し、法案を出し、国会で審議をいただくということであります。
 したがいまして、勧告制度は当然尊重しなければいけませんけれども、当然、財政状況も考えた国政全般の観点からの検討を経た上で決定するということであります。

○井坂委員 今大臣がおっしゃったのは、つまりは、人事院は財政状況を考慮せずに仕組み上、勧告をしてくるけれども、当然、内閣、政府としては、国政全般、とりわけ、目下の日本の状況でいえば国家財政の現状であろうと思いますが、そういう国家財政の現状もよく勘案して最終判断を下す、そういう答弁なんですが、もう少しはっきりお聞きしたいのは、つまりは、国家財政の状況が悪くなれば、これは内閣、政府の責任で、人事院勧告には従わずに独自に給与を決めるということで構わないということをおっしゃったんですか。

○山本(幸)国務大臣 そこまでは言っておりません。
 当然、人事院勧告は尊重しなければいけないというのは基本姿勢でございます。なぜならば、これはもう国家公務員の労働基本権制約に対する代償措置の根幹でありますので、過去の判例等を見ても、人事院勧告の不実施によってその代償措置が本来の機能を果たしていない、そういう判断をされる場合には憲法違反と評価されるおそれもありますので、そこは、極めて異例なときに財政状況上、別の判断というのがあり得ますけれども、しかし、基本的には、当然人事院勧告を尊重するというのが姿勢であり、そうした憲法違反のおそれにならないようにやっていくというのが本来の姿勢であります。

○井坂委員 一度目の答弁では、人事院勧告はさておき、割と自由にできるような受けとめもできるような答弁をされましたが、今二度目におっしゃった答弁が、これまでの答弁のラインだというふうに思います。
要は、基本的には、人事院勧告はほぼ絶対遵守、そして、極めて異例な財政状況の場合というふうに答弁されましたけれども、そういうときにはそういうこともあり得るというぐらいの、もう例外中の例外として人事院勧告には従わないということが、過去にも例はあったけれども、しかし、あったけれども、実際過去どうなったかといえば、それをやった結果、ストライキもされ、また、事実として、政府はまたすぐ本来水準に戻し、それでも裁判で厳しく指摘をされる、こういうことになったわけであります。
つまりは、事実上は、やはり人事院勧告制度がある限りは、もう極めて異例な、例外中の例外のときにそれに従わないことはあり得るが、しかし、やったらやったで、ストがあり、裁判もあり、大変問題が起こる、こういう認識でよろしいですか。

○山本(幸)国務大臣 基本的にはそういう姿勢で臨んでいるところであります。

○井坂委員 であれば、もとの通告の質問に戻りますが、結局、人事院勧告制度がある限りは、政府としては、財政状況を考慮した公務員給与の決定などは事実上できないんではないですか。

○山本(幸)国務大臣 それは、最大限尊重するという形で検討するわけであります。
 しかし、おっしゃったように、そのときの財政状況が危機的な状況にあるか異例な状況にあるかということは過去にもありましたけれども、しかしそれは、まさに臨時異例なときであって、基本的には人事院勧告を尊重するという立場で物事を考えていくのが筋だというふうに思っております。

○井坂委員 もう少し掘り下げて伺いますが、確かに過去、一、二年、こういうことをやった例はあります、人事院勧告とは違う給与決定をした例はあります。ただ、それでも、ストもされたり、裁判で厳しく指摘をされたり、そして何よりも、またすぐ本来水準に戻している、これで何とかぎりぎり事なきを得ているというのが実態だと思います。
お伺いしますが、では、人事院勧告制度が存在する限り、財政状況を理由に、本当に極めて非常時、異例の場合には、一、二年の公務員給与カットは仮にぎりぎりあり得た、できたとしても、五年、十年の給与カット、あるいは一度下げたら財政状況が一定改善されるまでもとに戻さない、こういった類いの給与決定は、やはり人事院勧告制度がある限り、政府は絶対にできないのではないですか。

○山本(幸)国務大臣 先ほどから申し上げているとおり、労働基本権制約の代償措置の根幹をなす人事院勧告制度は、政府としては尊重するという姿勢で臨むわけでありまして、ただ、当然、そのときの財政状況等も含めた国政全般の判断をすることがありますが、基本的には人事院勧告を尊重するという姿勢で臨んでいくところであります。

○井坂委員 その御答弁はよくわかっているんですが、ちょっとお尋ねしたことに正面からお答えいただきたいんです。
何か、基本は尊重だ、ただ、国政全般を考慮して政府が決めるんだといつもおっしゃいますが、実態を見れば、本当に臨時異例のときに、一年ないし二年はぎりぎりできるかもしれない。それでも、ストもされるし、裁判で厳しく指摘もされる、なおかつすぐに本来水準に戻さなきゃいけない、これが事実だと思います。
要は、人事院勧告制度がある限りは、五年、十年といった中長期の給与カット、あるいは財政状況が一定戻るまでは公務員給与をカットしますよ、こういった財政状況を考慮した給与決定はできないんですよね。できるんですか、できないですよね。

○山本(幸)国務大臣 そういう想定上の条件は、言われてできるかできないかというのはなかなかお答えしにくいと思います。基本的には政府は人事院勧告を尊重してやる、そういうことで、代償措置が本来の機能を果たしていないと判断されると憲法違反と評価されるおそれもございますことから、私どもは人事院勧告を尊重していくという姿勢で臨んでいるところであります。

○井坂委員 想定によって、できるかできないかわからないと答弁をされましたが、ということは、そういう長期の給与カット、人事院勧告制度に長期間背いて政府独自の判断で公務員給与を決める、下げるということは、場合によっては人事院勧告制度があってもでき得る、やり得る、そういう余地があるというふうに今答弁をされたんですか。

○山本(幸)国務大臣 いや、そうじゃありません。私は、それは長期というようなことであれば、そういうことはできないというふうに考えております。

○井坂委員 長期はできないというふうにおっしゃいました。何を長期、何を中期と呼ぶかはあれですけれども、要は、一、二年が関の山であって、三年、五年、十年というのは私は現行制度ではできないと思いますよ。長期とおっしゃいましたけれども、五年、十年もできないでしょう、できるとお考えですか。

○山本(幸)国務大臣 先ほどもおっしゃったような長期の期間というようなことは、そういうことはできないというふうに考えております。

○井坂委員 ありがとうございます。ちょっとしつこくお聞きして申しわけありませんでした。
先ほど私が申し上げたような五年、十年という期間もできないと考えている、これは恐らくそういう答弁だろうというふうに思います。
資料一の一番下のところをごらんいただきたいんですけれども、全農林警職法事件、最高裁の判決。解説、これは人事院のホームページです。人事院のホームページで人事院が解説しているのが一番下のところ。この判決では、この人事院勧告という代償措置が事実上画餅、絵に描いた餅に等しいと見られる事態が生じた場合には、その正常な運用を求めて相当と認められる範囲を逸脱しない手段、態様で争議行為を行ったとしても、それは憲法上保障された争議行為であると言うべきだ、こういうふうに人事院自体が解説をしている。
この最高裁判決の見方というのは、どこで誰に聞いたってこういう見方になるというふうに思います。
そこでお伺いをいたしますが、これは参考人にお伺いいたします。人事院勧告に従わずに、そうすると、労使で話し合って給与を決定することになるわけでありますけれども、これは当然、この判決に従えばストライキをされる可能性が高い、国民に多大な影響が出ることになるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○三輪政府参考人 人事院勧告に従わずに政府が違う方針を決定したという場合にどういう影響が出るのかという趣旨のお尋ねかと思いますが、それをあらかじめこういうことが出るだろうというふうに具体的に私の方から申し上げるのは避けさせていただきたいと思いますが、先ほど来出ておりますような訴訟の提起などは、実際、今日係属中でございますし、いろいろな意味で、大臣がお話ししましたような混乱というものは十分に想定されるんだろうというふうに思っております。
〔委員長退席、松本(文)委員長代理着席〕

○井坂委員 重ねてお伺いいたします。
いろいろな意味で混乱が生じるだろうということでありますが、確かに、何が起こるかというのは参考人としてお答えしにくい、それはそのとおりだと思います。実際、政府が人事院勧告に従わずに職員と直接交渉で給与カットを交渉した場合に、もちろん、ストライキを労働側がする場合もあるし、しない場合もあると思います。これは、要は労働側の胸先三寸の話であって、どっちに転ぶかはわからない。
ただ、確認をしたいのは、そういう人事院勧告に従わずに政府が直接交渉で公務員給与を下げようとしたときに公務員側が争議行為をしたとしても、それは憲法上、もう一定認められることになってしまうという理解でよろしいですか。

○三輪政府参考人 争議行為の実施についての違法性のお尋ねというふうに理解をいたします。
これは、最高裁の判例でもありますように、労働基本権制約の代償措置の根幹をなす人事院勧告制度、これが画餅に帰すような状態になった場合には、争議行為の禁止の違憲性というものが問われるんだ、こういう趣旨の判例が出ているわけでございまして、政府が人事院勧告を尊重せずに職員団体と交渉をして引き下げを決めたということで、即争議行為が正当化される、適法になる、こういうものだというふうには、この最高裁の判決の趣旨は私どもは理解いたしておりません。

○井坂委員 政府が人事院勧告に従わなかったから、即、いわゆるこの判決で言う画餅、絵に描いた餅状態であるとはみなされないということであります。
ところが、ほかの判決では、では、どういう場合に画餅、絵に描いた餅になるんですかということについて、こういうふうに言われています。将来への明確な展望を欠いたまま、そして二つ目に、相当の期間にわたり人事院勧告が完全実施されない、こういう場合は人事院勧告が画餅になったとみなしますよ、こういう判決があるわけであります。
確かに、おっしゃるように、単年度やったぐらいではさすがに相当の期間とは言えないだろう。だから、実際に過去、そういうことがあったわけです。ところが、さっき大臣もおっしゃったように、五年、十年のカットはさすがにできないだろう、人事院勧告制度がある限りはと。
これは、憲法上も、相当な期間、しかも将来展望もないままやれば、それはすなわち画餅、絵に描いた餅であって、争議行為をされても文句は言えませんよ、こういう理解でよろしいですか。

○三輪政府参考人 昭和五十七年のいわゆる人勧凍結反対闘争事件、これに関する最高裁の判決が平成十二年の三月に出ております。この中では、平成七年二月の東京高裁の判決を容認しているわけでございますけれども、その東京高裁の平成七年の判決を引用させていただきます。
政府が人事院勧告を尊重するという基本方針を堅持して、将来もこの方針を変更する考えがなかったということ、二つ目に、昭和五十七年当時の国の財政状況は、以下、少し数字が続きますのでここは省略いたしますけれども、未曽有の危機的状況にあったということ、そして三点目に、やむを得ない極めて異例の措置として同年度に限って人事院勧告の不実施を決定したものである、こういったことを踏まえまして、五十七年度に限って行われた勧告不実施をもって直ちに人事院勧告制度が画餅に等しいと見られる状態が生じたと言うことはできない。
このように判示をしているわけでございます。
私どもとして、この判例を踏まえて、どういう場合が争議行為が容認されるような状態になるのかということについてあらかじめ個別の判断をお示しするということは、これは差し控えさせていただきたいというふうに思いますけれども、こういった裁判例も踏まえて、個別具体に判断されるべきものであろうというふうに考えております。

○井坂委員 結局、この画餅、絵に描いた餅論というのはわかったようでわからないのは、では、どういう場合に絵に描いた餅になるのかという基準がいまだ全くない。ですから、一、二年なら大丈夫だろう、仮に三年なら大丈夫だろうと思ったって、実は三年で、いや、それは画餅だ、つまりは、争議したって問題ないと言って思い切り争議される可能性が大いにあるわけです。
非常に不安定かつリスクの高い状態で、人勧制度を残しながら職員の給与カットをするということは、そういう非常に不安定なリスクを冒してチャレンジをしなければいけない、こういうことになります。
お配りしている資料二をごらんいただきたいと思います。
公務員の労働基本権を制限するから、代償措置として人事院勧告が必要になります。ところが、人事院は国の財政状況を考慮しませんから、財政状況が幾ら悪くても、公務員給与アップの勧告が毎年出ます。そこで、政府が人事院勧告に従わず公務員給与カットをする。これが数年、多分三年ぐらいも続けば、人事院勧告が画餅になると考えられます。公務員の争議行為が憲法上認められてしまうので、公務員側が、労働側が、もうこれは我慢できない、争議である、ストだとなれば、国民生活に多大な影響が必ず出ます。結果的に、さっきも大臣が明確に答弁されたように、公務員給与の中長期的なカット、五年を超えるカットは不可能だ。国の財政状況に応じた公務員給与決定はできない。
一番と十番、これは全部つながっていると思いますが、公務員の労働基本権を制限する限りは、国の財政状況に応じた公務員給与決定はできないということでよろしいですか。

○山本(幸)国務大臣 この図式を見ますと、ちょっと無理なところもあるんじゃないか、私の個人的な実感であります。
 というのは、人事院勧告というのは民間給与を反映して出てくるわけですね。つまり、人勧で出てくるというのは、民間の給与が上がっている、経済がよくなっているという状況を示して、そういうときに出てくるわけですから、当然税収も上がると私は思いますね。
 逆に言えば、財政状況がよくなるような経済政策運営をしっかりとやっていくということが一番大事であって、そのことによって人事院勧告制度をきちっと尊重していくということが必要になるということで、この数字だけを見て、これが必ずいつも正しいというふうには思いません。

○井坂委員 そういう反論かと驚きましたけれども。
いや、別に、経済がよくなる悪くなるではなくて、仮に財政状況が悪くなったとしても、その財政状況に応じた人事院勧告に背いた給与決定は五年以上はできないとさっき答弁されたわけであります。
それは、人事院勧告制度はすなわち公務員の労働基本権の制約の代償措置で、そこはもう完全にセットでありますから、ほぼ、さっき大臣が答弁されたものの一番最初に労働基本権の制約というのがつくだけの話。
公務員の労働基本権が制約されている現状の限りは、国の財政状況に応じた五年を超えるような給与カットはできないということで間違いないと思いますが、いかがですか。
〔松本(文)委員長代理退席、委員長着席〕

○山本(幸)国務大臣 それは、国の財政状況は変わってくるわけでありまして、変わるようにしなきゃいけない。それをしっかりとやるのが経済政策運営であり、国として、財政の状況や国の全般の政策から判断していくということをやるわけであります。
 したがって、一方で民間の給与はどんどん上がって、国の財政状況はどんどん悪くなる、私はそういうことはあり得ないと思います。

○井坂委員 いやいや、何か経済財政担当大臣のような答弁をされましたが、きょうは公務員給与決定の仕方について担当大臣にお伺いしておりますので、国の財政状況、経済状況がどうなるかにかかわらず、労働基本権を制限している限りは人事院勧告制度は必要だ、そして、人事院勧告制度がある限りは五年を超える給与カットはできないとおっしゃったわけですから、その三から九は別にすっ飛ばしていただいても、二と十はさっきもう大臣は続けて答弁されていますので、そこに一が乗っているだけですから、労働基本権を制限したら人事院勧告制度は必須、そして、その限りは国の財政状況に応じて人事院勧告に背いた五年以上の公務員給与のカットはできないということで、もう論理はつながっていると思いますが、答弁をお願いいたします。

○山本(幸)国務大臣 私はまた、五年以上と限ってとか、そういうふうに答弁したつもりもありません。
 人事院勧告制度というものがあって、これは労働基本権制約の代償措置ですから、ぜひ尊重しなければいけないと考えておりますし、そしてその上で、政府としては、給与関係閣僚会議を開いて、財政状況や国政全般の観点から判断して最終的には決定し、法案で国会でまた決定いただくわけでありますけれども、その際は、基本的には常に人事院勧告制度というのは尊重するという立場で臨むということであります。

○井坂委員 先ほど来、公務員制度改革基本法の十二条について答弁が続いておりますが、これは自民党政権時代につくった法律の、しかも附則でなく本則でありますから、これをいつまでも放置したまま、その結果、まさにことし、公務員給与を二千億円近くふやして、そして社会保障費は一千四百億円削るんだ、こんなことをやっている。これは、アベノミクスがうまくいけばいくほどまた起こりますよ、本当に。こういうことは毎年毎年起こりますよ。
私は、この十二条違反は政府・与党の怠慢としか言いようがありません。
そしてまた、五年と言っていないとおっしゃいましたけれども、後で議事録を確認していただければ、井坂議員の言った期間を超えるようなカットは当然できないと思っていると。逆に、思っておられたらそちらの方が大問題答弁だと思いますから。
五年以上は人勧がある限りできない、それはすなわち、労働基本権を制約している限りは五年以上はできないと明確に答弁をされていますので、その認識に立って、きちんとこういう法律に定められた措置をしていただきたい、このことを強く申し上げて、質疑を終わります。
本日はどうもありがとうございました。

○秋元委員長 次に、島津幸広君。

○島津委員 冒頭、朝の質疑に続いて、続きをしたいと思うんですけれども、扶養手当の問題を最後に取り上げました。
この扶養手当というのは、扶養家族のいる職員の生計を補う手当として、長年にわたって定着しています。職員の生活設計に組み込まれているものです。生活給であることは人事院も認めているはずなんですけれども、これを大幅に変更するわけです。
これだけ重要な変更ですから、今も議論がありましたけれども、労働組合との関係で、労働組合に十分な説明をして、意見も聞くことが必要だと思うんですけれども、この問題はどういう協議をしてきたんでしょうか。

○古屋政府参考人 扶養手当のあり方に関しましては、昨年十一月から開催しました学識経験者による扶養手当の在り方に関する勉強会、こういった場におきましても、職員団体の方からのヒアリングを実施したということがございます。
また、本年の春闘期、それから勧告期における会見等の場でも、職員団体等の意見を伺いながら検討を進めさせてきていただいたところでございます。

○島津委員 意見を聞いてきたという話なんですけれども。
しかし、私、実際に国公労連の皆さんから話を聞きましたら、人事院は、今回の見直し、労働組合の意見を聞いた上で検討する、こう言ってきたわけなんですけれども、その具体案が出てきたのは、これまで会見の場、交渉の場で聞いても、検討中検討中の一点張りだったんだけれども、一週間前になって具体案が出てきたと。労働条件にかかわるこれだけ重要な問題で、こうした対応になっているんです。
大臣、一週間前に具体案が出てくる、これは正常な事態だと思いますか。

○山本(幸)国務大臣 人事院において職員団体とどういう交渉をされたか、その経緯をよく存じませんので、コメントは差し控えたいと思います。

○島津委員 労働者には、憲法で保障されている労働基本権があるわけです。しかし、公務員はそれが剥奪されているもとで、労働基本権の代償措置として人事院の勧告制度があるわけです。ですから、人事院は、政府と労働組合との間での第三者機関として、双方の意見をしっかり聞く役割を担っているわけなんです。
ところが、今回の扶養手当の見直しによる労働条件の改定、労働条件の引き下げがある、四五%の人が影響する、こういう大きな問題で、事実上、具体案に対して労働組合の意見は聞かずに、一方的に決めたものになっているんです。
総裁、今後は、こういう労働条件の変更に当たって、今回のような、ある意味乱暴なやり方、これはやるべきじゃないと思うんですが、どうでしょう。

○一宮政府特別補佐人 今回の見直しに当たりましては、扶養手当の在り方に関する勉強会における職員団体ヒアリングや、本年の勧告に向けた会見等を通じて、職員団体の意見も聞きながら検討を進めて、人事院として今般の見直しの内容を取りまとめたものでございます。

○島津委員 意見はヒアリング等で聞いているかもしれませんけれども、今回のように大幅な、とりわけ配偶者手当の問題で削減になるわけですけれども、具体案が出たのが一週間前なんです。それで、その案に対して労働組合に十分に意見を聞いたということになるんですか。

○古屋政府参考人 最終的な案ということではお尋ねのとおりでございますが、先ほども申し上げたとおり、その見直しは、累次の段階におきまして、それぞれのレベルで意見交換、意見聴取ということをさせていただきながら最終的にまとめたということでございます。

○島津委員 大臣、今まで人事院からの答弁がありましたけれども、労働基本権の剥奪の代償措置としての役割をやはり果たしていないと思うんです。
それなら、ILOも繰り返し、日本の公務労働者の労働基本権の回復の勧告を行っているわけです。剥奪した労働基本権、これは公務員に返すべきじゃありませんか。どうですか。

○山本(幸)国務大臣 この点は、先ほども議論してまいりましたけれども、私どもは、人事院勧告制度で、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度というものがありまして、これを尊重しているということであります。労働協約締結権を付与するかどうかについては、まだまだいろいろな疑問や議論があるということで、慎重に検討すべきものだと思っております。

○島津委員 これをずっと議論するわけにはいきませんから、剥奪した公務員の労働基本権の代償措置として人事院がその役割をしっかり果たすよう求めて、次の質問に移りたいと思います。
総裁、これで結構です。ありがとうございました。
次に、公務員の現状について伺います。
初めに、公務員は、国家公務員、地方公務員と、それぞれ部署で働いているわけですけれども、国家公務員の現状についてまずお聞きしたいと思います。
国家公務員の人数、その内訳で、いわゆる正規、常勤職員、非常勤の職員、それぞれ直近で何人なんでしょうか。

(略)

○島津委員 結局、ハローワーク、ほかのところもそうなんですけれども、非常勤の職員がいないと職場が回らないという実態があるわけです。
このハローワークの仕事ですけれども、これは本来どういう仕事なのかということなんです。
例えば、これは聞いた話なんですけれども、ある高校生の就職活動が、卒業しても決まらなかった。この高校生の相談に乗ってきたハローワークの担当職員が、年度末を境に突然別の職員にかわってしまった。非常勤だったから、かわったわけです。これまで何カ月もかけてその高校生に対して熱心に相談に乗ってくれた人が、予期しない全く別の人にかわる。継続性もない。その高校生がどういう仕事に向いているか、どういう希望があるのか、何が得意か、それまでの相談員がこれまで積み重ねてきた蓄積がなくなるわけです。何よりも、行政に対する信頼感がなくなった、こう話していました。
また、こんな話もあります。ハローワークの職員が、地元の会社を訪ね歩いて、就職希望の高校生の内定率が低いから、求人のお願いに来る。ぜひ求人を出してもらいたい、こういうことで、その会社にどういう人がマッチするのか、よく理解してくれるハローワークの職員がいるわけです。それが、毎回違う人が来たんじゃ、一から全て説明しなきゃならない、会社から見て。こういう業務を担う職員はぜひ常勤にしてほしいと、ある会社の方は話していました。
大臣に聞きたいんですけれども、これはハローワークの事例なんですけれども、本来このように、人と人との信頼関係で成り立っている業務を担う職員というのは無期雇用の方が、経験の蓄積や業務の継続性などさまざまな面で、国民にとっても力になると思うんですけれども、どうでしょう、大臣、所見を。

○山本(幸)国務大臣 ハローワークの職業相談員を含む非常勤職員については、平成二十二年、従来の日々雇用制度にかえた期間業務職員制度を導入して、不安定な地位の改善や業務実態に即した適切な処遇の確保を図ったところでございます。
 期間業務職員の採用に際しては、人事院規則において、原則として公募によることとされておりますけれども、勤務実績に基づいて能力を実証できる場合には、例外的に公募によらない採用も可能であります。
 また、その公募によらない採用は、平等取り扱いの原則及び成績主義の原則を踏まえて、同一の者について連続二回を限度とするよう努めるものとする旨、人事院の通知に定められております。ただ、公募を経て能力の実証が制度の趣旨に沿って適切に行われた結果として同じ者が引き続き勤務することはあり得るものと承知しております。
 以上のような制度的な枠組みのもとで、ハローワークにおいては、職業相談の内容をシステムに記録して職員間で共有してもらうなど、行政サービスを低下させることなく、求職者のためにきめ細かな職業相談、職業紹介を行っていただいているものと認識しております。

○島津委員 公募等の話もありましたけれども、継続の道があるとはいえ、実際にはやはり、三年の雇いどめという状況もあるわけです。
お配りした資料2を見ていただきたいんです。職員数とハローワークの設置数、この資料は、公共職業安定所の正規の常勤職員の数とハローワークの設置数のグラフ、これは厚労省の資料です。常勤職員が減っているのが一目瞭然にわかるんですけれども、私が注目したのはハローワークの設置数です。昭和四十二年、一九六七年の七百カ所から、二〇一六年、平成二十八年、五百四十四へと減っています。これは何で減ったんですか。

○大西政府参考人 ハローワークにつきましては、行政改革の流れの中で、そういった合理化等を実施してきたところでございます。
こうした中でハローワークの数が減ったということでございますが、ハローワークの整理統合をしてきたわけでございますが、その場合に、管理、間接部門の合理化、業務の集約化等もあわせて行ってきて、窓口体制の確保もあわせて図ってきたところでございます。

○島津委員 窓口体制の確保といいますけれども、実際にハローワークそのものが数が減っているわけです。しかも、この厚労省の資料にありますように、昭和四十二年の求職者数と今の数、ふえていますよ。むしろ、ますますハローワークの役割が必要になっているのに。
私、実際に、あるところのハローワークに通っている人から話を聞きました。月一回行くんだけれども、いつもハローワークは混んでいる。駐車場があるんですけれども、入り切らない車が道路にあふれて並んでいる。近くに有料駐車場があるんですけれども、ハローワークに行くぐらいの人ですから、そういう有料駐車場代のお金も節約するんですよ。道路に仕方なく並んでいる。行き過ぎた合理化をしたんじゃありませんか。
今、電通の過労死が大問題になっています。監督官が足りないもとでブラック企業が横行していることが改めて浮き彫りになりました。ハローワークもそれと同じで、正規職員を減らして非正規をふやしている、そしてハローワークそのものも減らしている、公共業務を減らして国民に不利益が及んでいる、こういうことじゃないんでしょうか。
大臣、どうですか。

○山本(幸)国務大臣 今もお話がありましたけれども、厳しい財政状況のもとで、厚生労働省において、ハローワークの整理統合によりまして、管理、間接部門の合理化や業務の集約化等を図ってきておりますが、一方で、窓口体制の確保を図ってきております。
 また、ハローワークの再編に当たっては、労働市場圏や利用者の交通アクセスなどにも配慮されているなど、利用者に極力不便をかけないよう努めているところと承知しております。
 さらに、昭和四十二年当時はなかった新卒応援ハローワーク、わかものハローワーク、マザーズハローワークなどの専門的な支援を行う施設の拡充を図ることにより、求職者のニーズにきめ細かく応えてきているものと認識しております。
 また、先般の地方分権法の改正によりまして、地方版ハローワークというものも設立したところでございます。
 今後も引き続き、ハローワークが雇用のセーフティーネットとしての役割をしっかりと果たすことができるよう、必要な体制を整備するため、めり張りをつけた定員管理を行ってまいりたいと思います。

○島津委員 結局、矛盾は激化しているだけなんです。機械的な定員削減はやはり見直すべきだと思うんです。
次に、非常勤職員の雇いどめの話をお聞きしたいと思っているんですけれども、大臣、先ほどお答えになりましたから、このことは繰り返しませんけれども、三年で雇いどめになる、その先の雇用の継続の可能性は閉ざされていないんですけれども、やはりこれがいろいろな足かせになっている。
この雇いどめというのは、実は、職員にも非常勤職員にも、大きな影響を与えているんです。
ハローワークで、何人かの方から私は話を聞きました。
ある就職支援ナビゲーターの女性の方は、一年ごとの契約のために、次の更新があるのか不安な日々を送っています、自分が仮に雇いどめになる可能性があっても、自分が応募する求人に希望している求職者がいた場合には相談、紹介を行うので、不安な気持ちやストレスがたまりますと。つまり、自分の席を求人に出して、その求人に来る人の対応をするというわけですよ。公募を廃止していただき、安心、安定した非常勤職員となるように希望します、この方はこう言っています。
また、ある女性の方は、公募によってメンタル疾患となる非常勤職員が発生し、治らないのでやめる実態もあります、精神的な疾患に追い込んで社会に放り出すという状況をなぜ厚労省が繰り返すのでしょうか、このことによる最大の被害者は利用者であり、国民であり、国民に損害を与えています、こういう声があるんです。
機械的に公募をすることで、期間業務職員が非常に不安定な雇用の不安を抱える、また、公募をきっかけとして管理者が恣意的に契約を更新しないという例も聞きました。後を絶たないということがあります。
雇いどめという制度、弊害の方が多いんじゃないですか。

○福田政府参考人 お答えいたします。
期間業務職員につきましては、先ほど大臣から答弁いただきましたように、期間業務の採用につきましては、国公法が定めます平等取り扱いの原則あるいは成績主義の原則の観点から、国民に対しまして官職を公開し、広く応募の機会を付与することにより、公平公正な任用を確保することが必要であることから、公募によることを原則としておるところでございます。
ただ、能力実証を面接及び期間業務職員としての従前の勤務実績に基づき行うことができる場合については、例外的に公募を行わないで再採用することができることといたしましても、直ちにこれらの原則に反するものではないと考えられるところでございます。
しかしながら、このような再採用を何度も繰り返すということになりますと、国民に対する官職を公開する機会を狭めることになることから、公平公正な任用の確保のため、連続二回を限度とするよう努めるところとしているところでございます。

(略)

○三輪政府参考人 民間企業の諸手当の状況でございますけれども、厚生労働省が就労条件総合調査という調査において調査を実施しているというふうに承知をいたしております。

○浦野委員 あるならあるで、そういった既にある調査がどうだったかということと、人事院勧告の調査の内容がどうだったかというのを比較すべきだと思うんですね。
これは、平均給与の話でもそうですけれども、ちゃんと国が所管省庁として実態調査を、民間を調べている調査が既にあるわけなんですね。それがなぜ活用されずに、人事院は人事院で独自に調べていくのか。
前回も指摘をしたように、いい数字だけ切り取って、自分たちの都合のいい調べ方をして、その都合のいい数字にのっとって人事院勧告をされたら、それはもうまさに自分たちのお手盛りで自分たちの給料を決めることができる、事実上決めることができるようになってしまっているんだと言っても過言じゃないと思うんですね。
私はやはり、人事院の勧告が妥当かどうかというのをこれからもっともっと議論していかないといけないんじゃないか。調べ方についてもしっかりと一度精査を、国会がですよ、国会が精査をするべきだと私はやはり思っています。
今回、給与部分と手当部分、中には手当の部分でこれは賛成すべきだという部分はもちろんあります。私はやはり、これは法案として、給与部分と手当などの待遇改善部分を分けるべきと考えているんです、法案としてね。法案を分離すべきだと考えているんですが、いかがでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 国家公務員の給与改定について、政府は、労働基本権制約の代償措置の根幹をなす人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、国政全般の観点から検討を行った上で、その取り扱いを決定することとしております。
 本年度においても、その基本姿勢のもと、給与関係閣僚会議において検討を行った結果、勧告どおり実施するとの結論を得るに至り、今国会に法案を提出させていただいているところであります。
 今回の勧告は、俸給や勤勉手当の引き上げ等の給与水準の改定と、扶養手当の見直し等の制度改定で構成されております。これまでも、給与水準の改定に加え、制度改正を含む勧告がなされた場合には、一体として法案を提出してきているところでございます。

○浦野委員 本当にこの制度については、任命権者が誰なのかとか、何か間違ったことがあった場合に誰が指導するのか、誰が是正をできるのかという、本当に根本的な問題というのが全く解決されていません。東京オリンピック・パラリンピックの問題でもそうですけれども、最終責任者は誰なのかということを全く明確にできないんですね、この問題については。
人事院の皆さんは、いや我々は自分たちの調査にのっとって、ルールに従った調査にのっとって勧告をしているだけです、それをお決めになるのは国会の皆さんですと。しかし、国会は国会で、人事院勧告が出たから、先ほど井坂委員も鋭い質問をされていましたけれども、従わざるを得ない部分もあるということで、結局は、お互いがお互い、責任を押しつけ合って、責任をとろうとしない体質というのがもう見てとれると思うんですね。
私は、これは大臣、本当に、人事院勧告が間違っている、おかしいとなった場合に誰が責任をとるべきなのかというのを、いま一度答弁いただきたいと思います。

○山本(幸)国務大臣 私どもは、国家公務員を使用し、監督する立場であります。それに対して、人事院は第三者機関でありまして、人事院のやることについて私どもがコメントするのは差し控えたいと思います。
 しかし、いろいろな問題があるとして、それを決定するのは、最終的にはこの国会における議論によって行われるべきものだと考えております。

○浦野委員 そういう答弁にならざるを得ないだろうとは思っていましたけれども。
本当に、この人事院制度については、民進党の先生方からもいろいろな指摘がありました。これは国会としてしっかりと議論すべき問題だと思うんですね。やはり、人事院勧告の平均給与が余りにも高過ぎるし、民間の給与と比べても全然低くないというのが実態です。
私は、これは、もちろん財政問題も含めて、こういう財政状況の中で、なぜ公務員の皆さんだけが給料がウナギ登りなのか。それは、一人一人は微々たる額かもしれません。しかし、全体でいうと、地方を合わせたら、先ほども指摘しましたけれども、六千五百億円、もう既にこの三年間で恒久財源が投入されてしまうわけですね。それだけふえている。これだけ財政が厳しい中で、それだけしっかりと財源を充ててもらっているのは、実は公務員の皆さんだけだと思うんですね。こんなに予算アップできているようなものはほかにないと思います。私はそこは非常に疑問です。
先ほど井坂委員の質問の中で、野党ならただただ反対と言っていればいいというふうなことを言っていましたけれども、別にただただ反対しているわけではありません。しっかりと理由もあって反対を、私たちは、日本維新の会はするわけです。
やはり、国民の皆さんは、国の財政がよくないというのは重々承知です。その中で公務員の給与が引き上げられるということについて、私は国民の納得を得られないと思いますので、本当にこの人事院制度を根本からしっかりと見直していただく必要があると思いますので、よろしくお願いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。

平成28年11月02日 衆議院内閣委員会