政策レポート

デフレ対策緊急提言

 

デフレ対策緊急提言

衆議院議員 山本幸三

 

1.今日のデフレの原因

 まず、今日のデフレが総需要の不足によって起こっていることを確認すべき。供給側の要因によって起こっているのではなく、従って、構造改革や規制緩和で解消できるものではない。総需要を刺激するための政策を総動員する必要がある。

 

2.金融政策

(1)総需要を刺激するための一番の政策は、期待インフレ率を現在のマイナス3~4%からプラスに転じさせるような思い切った金融政策である。インフレ・ターゲット付き量的金融緩和政策が、これに当たる。(インフレ・ターゲットは物価の行き過ぎを止めるアンカーともなる。)

(2)大量の不良債権の存在で「銀行の貸出チャネル」という正統的な 金融政策が機能不全に陥っており、「量的」に緩和されても、「質的」に緩和されていない。そこで、非正統的な金融政策を考える必要がある。すなわち、社債や外債、不動産投資信託、上場株式投信などを購入対象に加え、資産価格の上昇や円安を目指すのである。これによって企業や家計の保有資産価格や企業収益が高まり、総需要が刺激されよう。

(3)これらを完全に実現するために、日銀法の改正が必要。なお、米 国のFRBでも、同様の政策の検討が行われている由。

 

 3.不良債権処理

(1)主要行の不良債権は、主要地方行も含めて2年以内に処理(債権放棄を中心に)。

(2)銀行配当は償却に回させ、優先株は普通株に。処理に伴う資本不足分は、普通株の政府割当て増資を(=準国有化)。場合によ っては、強制資本注入できるような法改正も検討。

(3)RCCの不良債権買取資金を日銀が融資(政府保証付)。RCC は、積極的に担保不動産売却と債権放棄を。2次ロスは、政府の負担で。

 

4.財政政策

(1)過去5年間で名目GDPは0.8%縮小したが、寄与度で2.9%ポイント分が公共投資の落ち込みによる。無理な激減は避けるべき。一方で、民需刺激型の公共投資は増大すべし(例えば、都市再生、基幹路線の高速道路、下水道)。

(2)民需刺激型の税制改正(投資促進税制、住宅税制、贈与税等)を。

(3)資産価格上昇に資する税制(土地及び証券税制の緩和)を。

 

5.デフレ・ヘッジ先物市場の創設

(1)債務者が一種の保険料を銀行に支払うことで、デフレが進行した分、債務者の元利返済を減ずるような融資制度を創設。

(2)銀行に対しては、当該債権をヘッジするための、物価指標の先物市場を整備する。当面は、ヘッジ・コストの一部を政府が補填する(又は税制優遇措置)必要があろう。

 

6.流動性預金のペイオフ延期

 元々、ペイオフは、不良債権処理が終了し、金融システムが安定する前提で導入が考えられたはず。デフレが解消しない状態で、流動性預金まで実施するには、リスクが大き過ぎる。デフレ解消と不良債権処理が見込まれるまで、少なくとも2年は、その実施を延期すべきである。