政策レポート

米国出張報告(2010.5.19)

訪米報告
2010年5月19日 
衆議院議員 山本 幸三

連休中、恒例の日米国会議員会議(2日目は日米韓)に出席するため、米国ワシントンを訪問。議員の外にも旧知の友人達を訪ね、最近の日米関係等につき意見交換、米側の厳しい見方にショックを受けた。

(なお、今回は、動物愛護管理法改正の関連で、アーリントン動物福祉連盟にも足を運び、米国の進んだ動物愛護事情についても話を聞いた。)

(主な会見先)

○キミット前財務副長官、FRBコーン副議長、スミック
Johnson-Smick代表、グリーンCSIS日本部長、アーミテージ前国務副長官、マルムグレン元USTR次席代表

米側の主な意見は、以下の通り。

 

 

1(日米関係)

○ 米国内では鳩山総理に対する信頼が失われている。

○ 鳩山総理についての最初のショックは鳩山論文。次が胡錦濤との会談で東アジア共同体を提案した時。極め付けは、普天間よりも連立の維持を選択した時。

○ 保守派のキッシンジャーは、「このままの状態が続けば、信頼できる同盟国であり続けることができない。」と論文に書いた。保守派のAEIも進歩派のディック・サミュエルズも同調。

○ キャンベル国務次官補やグレッグソン国防次官補は、中国と関与しつつ強固な日米同盟を元にバランスを保つべきとの考え方だが、ホワイトハウス内部は「日本はどうでもよい」というのが大勢。

○ 民主党の人間が色々やって来て、「鳩山の考えはこうだ。」と言うが、皆違うことを言う。明確にコミットできる人間が必要。

○ ゲイツ国防長官が鳩山総理と良くない。ゲイツは、民主党の人間から、「日本はとにかく押せば最後は折れる。」と聞き、その通りにしているようだ。

○ 辺野古がある上で徳之島も活用できるということなら問題ない。しかし、QIP(杭打ち桟橋方式)は米としては受け入れられない。

○ 一番良いのは、普天間を現行案で決着させること、インド洋での給油のように国際舞台でリスクを取る姿勢を見せること、そして、経済を回復させることである。

○ 米国のビジネス・リーダーは、中国に関心を向け、日本への興味を失った。

○ 郵政問題のように、日本の政策の予測可能性が低いと見られている。中国も低いが、収益機会が多いと見られている。

○ 米中には戦略対話があるが、日米間には無い。

 

2(米中関係)

○ オバマ政権では、温暖化問題等、中国を巻き込みたい事項が多いこともあり中国に接近したが、最近はより現実な方向になってきている。

○ 中国は、米中関係を安定させる方針と思うが、国内で国粋主義的な突き上げにあっているようだ。軍のコントロールも懸念。米中間には、まだ緊張関係がある。

○ 中国は十代の子供のようで、自分のことしか考えず、世界全体のことに関心が無い。

○ 人民元の切り上げは必要。自らの利益にもなる。毎年5%ずつ位上げていくのではないか。

○ 中国経済は透明でなく、バーナンキも中国経済は統制されていると見ている。経済対策支出も85%は国有企業向けで、持続可能性の問題がある。

○ 中国経済は高い成長だということだが、データーが信じられるかという問題がある。

○ ビジネス界は、中国は競争力が無いと見出してきている。技術力が無く、人件費上昇でもはや世界の工場でもない。今はインドが注目されている。インドは英国支配の遺産で法の支配が信頼できる。海軍も強い。

 

3(米国経済)

○ 米国経済はより良くなってきているが、ゆるやかな回復だ。

○ 今回の不況は1981~82年当時と同程度の深さ。その後の回復期には、8%以上の成長が続いた。これに対し、今回の回復の程度は、大規模な財政支出を行い、ほぼゼロ金利まで引き下げているにも関わらず、3~4%の成長率に過ぎない。

○ FRBの思い切った金融政策は上手くいった。金融市場が安定し、これが実体経済の改善に良い影響を及ぼしている。

○ ギリシャについてのIMF・EUで合意したものは強力なパッケージと考える。ギリシャにとって困難なのは、為替政策なしに競争力を回復すること。

○ 隠れた問題は、ブッシュ減税が失効することで、予期せぬ結果を招く恐れがある。キャピタルゲインの税率が15%から28%に上がると、本年中に売ってしまえという行動を誘発しかねない。しかし、これだけ延長という訳にはいかないので、他のパッケージも含めて延長できるかどうか、心配。

○ 州・地方政府の負債が大きく、州法が規定する財政均衡のためには人件費の削減しかない。しかし、製造業の全労働力に占める割合は9%に過ぎないが、州・地方政府職員の割合は20%に上り、この削減は経済へ大きな影響を与える。

 

4(米国政治)

○ オバマは、選挙の際には左派と右派の橋渡しをしたいと言っていたが、中西部の労働組合の強い地域の出身ということもあって、今は左派寄りの政策をやっている―例えば、医療制度改革。

○ オバマはメディアへの露出が多過ぎ、あらゆるイシューについてオバマ本人が責任を負わされるという形になっている。

○ オバマは米国内で偉大な仕事を成し遂げた人間になりたいと思っており、国際関係には本当のところ、あまり関心がない。

○ 2006年、2008年の選挙で、民主党新人が多数当選したが、彼等は保守の地盤から。生き残るため、オバマとは距離を取ろうとしている。

○ オバマは、今や、党に対しても議会に対してもコントロール能力を失っている。また、高い失業率や原油流出の問題に直面している。

○ 議会日程を考えると、議員は地元との関係で月・金曜は動かず、実質的に動くのは火・水・木の3日間だけ。また、夏休みのため、7月には10日間だけ、8月は完全に動かない。その後は中間選挙が控えており、もはや重要法案を処理する時間は限られている。

○ 民主党は、11月の中間選挙で大きく負けるだろう。下院で40以上負けると多数を失う。

○ しかし、共和党も経済対策についてアイデアがある訳ではなく、余り勝つと経済状況に責任を負わなければならないということで痛し痒しだ。

 

5(トヨタ問題) 

○ トヨタの経営陣は昔のスタイルのままで横の連携が取れておらず、問題に気付くのが遅かった。

○ ラフード運輸長官は政治的な人間であり、GMやフォードにも同じ問題があるにも関わらず、トヨタだけ叩いている。

○ 米国民一般は、今回の問題では米政府がGM、フォードを助けようとしていると感じている。一般人の評価では、GM、フォードの車が信頼に足りるとは思っておらず、トヨタへの信頼は失われていない。

○ トヨタはコミュニケーションを取るのが遅かった。トヨタのようなグローバルな企業は経営陣もグローバルになる必要があるのではないか。

○ 政治的には山を越えたが、まだ訴訟等が継続中なので、油断すべきでない。

○ トヨタは、まずは高い品質と手頃な価格を引き続き追求していくと共に、議会、政府、法廷等との関係で適切な対応をすることが重要。

○ トヨタだけでなく他の日本メーカーにとっても、政府の行為にどう対応するかでなく、如何に政府の行為を避けるかが重要。

○ 日本のビジネス・リーダーは、NYだけでなく年に一度はワシントンに来て、議会、政府関係者と会う関係を作っておくことが必要。トヨタも奥田社長の頃には、非常に頻繁にやって来ていて、我々との関係を作っていた。

○ 政治家も、自分の工場がある州の議員などを呼べば必ず出席するはずだ。日頃から、こういう関係を作っておけば、今回のような事態も避けられたのではないか。

(以上)

(以上)