量的緩和解除 日銀をけん制(2005.12.7)(毎日新聞)

毎日新聞(平成17年12月7日朝刊)記事
「成長率の目標示せ」
量的緩和解除 日銀をけん制

 日銀の量的緩和政策解除問題にからみ、自民党の金融調査会・金融政策小委員会(委員長・山本幸三衆院議員)が8日に初会合を開いて議論を始める。6日までに毎日新聞の取材に応じた山本委員長は、政府・日銀が「望ましい経済成長率」を公表し、共通の経済・金融政策運営の目標にするよう促す提言を来年3月にもまとめたい考えを明らかにした。量的緩和の早期解除のけん制とゼロ金利の長期維持が狙いと見られる。
 山本氏は、量的緩和政策の解除の前提条件として「名目経済成長率を目標にすることで政策の透明性を確保すべきだ」と指摘。「政府・日銀で共通目標を決め、現実手段は日銀に任せる。その方が、日銀にとっても、政治からの注文をつけられずに済む」と、日銀の独立性維持の点からも、政策目標が必要との認識を示した。
 日銀の量的緩和政策は「消費者物価指数が前年比で安定的にゼロ%以上になること」を解除の条件にしている。これが達成され、量的緩和を解除した後の金融政策運営について、「物価上昇率を目標にし、政策運営の透明性を確保すべきだ」との声が日銀内部からもあがっている。世界でも、物価上昇率を目標に揚げる中央銀行はいくつもある。 だが、山本氏が挙げた「経済成長率目標」は、国の経済全体の動きを最終的に示す経済成長率の達成を金融政策に課すという先進国では例のない政策になる。物価上昇率目標よりも日銀にとって高いハードルと言える。
 山本氏は、成長率目標が金融政策の機動性を失わせるとの懸念には、「2,3年先の中期的目標とするので、目標を下回ったから一切、利上げができないということはない。短期的な操作は日銀が柔軟に考えればいい」と指摘する。さらに、長期金利上昇を抑えるため、日銀の長期債権買い入れについても「現行の毎月1兆2000億円から上積みを考える必要もある」と語った。
 日銀が示した消費者物価指数のゼロ%以上という解除条件が来年春にも実現する見通しとなり、政府・与党の日銀への注文も年明けから一層、強まることは確実だ。こうした議論について金融情勢に詳しい中前忠・中前国際経済研究所代表は「景気が良くなったから政策変更するという日銀の説明だけでは理解は得られない」と指摘。ただ、量的緩和政策については、「ある程度の利上げで家計の所得を増やすことが個人消費を刺激し、一段の景気押し上げにつながる」と解除の必要性を指摘している。