サブプライム問題の影響は(2007.9.25)(時事通信)

 

時事通信インタビュー記事

* 自民党金融調査会・金融政策小委員会の山本幸三委員長は18日、時事通信とのインタビューに応じた。山本委員長は、米国の低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題を受け、世界経済は下振れリスクが強まっていると指摘。利上げを模索する日銀の金融政策に関しては「むしろ利下げを考えるべき局面だ」との認識を示した。また、来年2月にも同委員会としての報告書をまとめ、インフレターゲット(物価目標)の導入など次期日銀総裁への注文も盛り込む考えを明らかにした。インタビュー要旨は次の通り。

■国内経済の現状認識は。
日本経済は順調だといわれているが、いびつな形だ。輸出が増加し、製造業の設備投資や生産が伸びている一方で、住宅投資や個人消費は低迷している。所得が増えないため個人消費が盛り上がらない。日銀が主張する生産、所得、支出の好循環は働いていない。特に地域の中小企業は悲惨な状況で、9月の日銀企業短期経済観測調査(短観)でそれがはっきり示された。中小企業が元気が無いときに利上げはあり得ない。

■サブプライム問題の影響は。
 影響はこれから深刻に出てくる。欧米の実体経済に影響しないわけがない。米国の住宅価格は一層下落する可能性がある。また、原油価格の値上がりも米経済に非常に効いてくる。サブプライム問題と原油高で米経済が落ち込むことは必至だ。米連邦準備制度理事会(FRB)はすでに利下げに踏み切ったが、さらに利下げするだろう。欧州経済も厳しい。世界経済は下振れリスクの方が大きい。中国やインド経済などが好調だが、中国は来年の北京五輪後に過剰投資の調整の必要が生じる。

■日銀の金融政策運営について。
 日本経済の国内需要の停滞ぶりや欧米経済の減速懸念などを踏まえると、フォワードルッキング(先見的)に、金利を引き上げるというのは正気の沙汰ではない。むしろ金利の引き下げさえ考えるべき局面だ。消費者物価(CPI)は7ヶ月連続で下落している。昨年の量的緩和解除の条件は、CPIの前年比上昇率が安定的に0%以上になり、その後マイナスに戻らないと確信することだったが、その条件さえ守れていないのは明確だ。その後も利上げしてきたが、見通しを誤ったことへの説明責任を果たしていない。

■日銀は徐々に金利の調整を行う方針を維持している。
 それは完全に間違っている。量的緩和やゼロ金利の解除条件すら崩れているのだから、今すぐに元に戻すべきだ。CPIが少なくとも0,5%以上で安定的に推移するようにすべきだ。

■次期総裁の条件は。
まずデフレ脱却をしっかりと実現できる人だ。さらに、日本経済の潜在能力を最大限生かすことに信念を持っていることが必要だ。官僚や日銀出身者はなるべく避けるべきで、インフレターゲット論者が望ましい。
-日銀は今月末に経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表する。
展望リポートが公表されたら、小委員会で日銀から説明を聞く。展望リポートは、下振れリスクを重視するかがポイントだ。下振れリスクが大きいということになれば、利上げはあり得ない。

■今後の小委員会の論議は。
来週、金融庁と日銀からサブプライムローン問題について話を聞く。その後は日本経済の見通しなどについて専門家から話を聞き、日銀の金融政策も点検する。来年2月にも経済の見通しと金融政策のあり方について、報告書をまとめ、次期総裁への注文という形で提言していきたい。