日刊不動産経済通信「ガバメントリート活用で地方財政を改革-自民PT座長・山本幸三議員に狙い聞く」

公的不動産(PRE)を投資対象としたリート「ガバメントリート」の活用促進を提唱した自民・不動産鑑定士制度推進議員連盟の証券化対象不動産鑑定評価のあり方に関するプロジェクトチーム(PT)。PT座長の山本幸三・衆院議員に狙いなどを聞いた。 

 

-地方自治体が持つ公的不動産の置かれている現状とガバメントリートのメリットは。 

 

山本議員 極めて活用できていない。また厳しい財政下で老朽化した庁舎や病院、学校などの更新に自治体が自由に投資できる状況にない。自治体は有効活用や機会逸失といった感覚に欠けている。うまく民間資金を使えば、公的不動産の活用は厳しい財政下でもできる。たとえば役所は地域の一番いい立地にあることが多いが、周りにほかの施設がないケースもある。そこに民間資金を活用して商業施設やスポーツ施設、住宅などを整備すれば、財政資金を節約した上で、収益もあがるしにぎわいも創出できる。これまでのPFIも良いのだが、それでは資金の出し手が限られる。リートにすれば一般の投資家から資金を集められる。また、公的不動産を活用したリートは安全性が高く、投資家にとっても良い金融商品ができる。

 

-ガバメントリートの導入のイメージは。

 

山本議員 アセットが庁舎のみでは収益にならない。先述のように役所の周辺で商業施設などを開発し、組み込んでいく。学校や病院、スポーツ施設や公民館なども対象になる。運用会社は第三セクターになるだろう。投資家は個人・法人問わず幅広く集める。官の資金が入ると施設の借り手である自治体との利益相反の問題を指摘されるし、賃料は税なので厳しい目も向けられるが、民間に貸す場合との比較などは、不動産鑑定士が適切に機会費用について判断するだろう。

 

-ガバメントリートが証券化市場に与える影響について。 

 

山本議員 最近だとヘルスケアリートがあるが、新型リートができるのは大いに結構なこと。運用者や投資家が経験を積んでいくことでガバメントリートの市場ができていく。公的不動産を対象としており安全性は高く、国債に続く良い金融商品になるのではないか。東京などでは容積率を上げて良い施設を造ることで、リート向けに良いアセットとなる可能性はある。

 

-海外での事例は。

 

山本議員 米国では連邦捜査局(FBI)や国土安全保障省などの施設もガバメントリートに組み込まれている。また収益が上がる公的事業にレベニュー債を発行する。上下水道や高速道路など、収益が上げられる事業を一般財政と切り離し、債権を発行し投資を募る。リスクを投資家がとることになる。

 

-日本での今後について。

 

山本議員 日本で行おうとしても、自治体にインセンティブがない。総務省が地方に甘い。簡単に地方債を発行させ、あとから地方交付税で面倒をみてしまう。リートやレペニュー債だと2.5~3%といった一定の利回りを投資家に示す必要があるが、地方債だと0・5%ぐらいの金利で資金調達ができてしまう。地方債の発行制限など、総務省も巻き込んで地方財政のあり方を抜本的に変える必要がある。日本では茨城県が金利2.51%のレペニュー債を100億円発行し、廃棄物処理事業を行ったケースがある。空港や港湾などもリートでさらなる活用できるのではないか。地方財政を甘やかしてはいけない。