産経新聞『単刀直言「消費税再増税は“迷惑”、1年半先送りを」自民党・山本幸三「アベノミクスを成功させる会」会長』

20141025産経

私にはアベノミクスの原案作りに携わった者としての自負があります。議員連盟「アベノミクスを成功させる会」の前身は、アベノミクスの元となる議論をしてきた「デフレ・円高解消を確実にする会」です。

 何としてもアベノミクスを成功させなければいけない。経済を失速させるわけにはいかない。そう思い、22日に活動を再開しました。名称変更は意図を分かりやすくするためです。

 非常に大きな反響がありましたね。出席者は議員本人が45人、代理が37人で80人を超えました。会合後も「頑張ってくれ」「自分も同じ考えだから行きたかった」などと声をかけてくれた人が結構いましたよ。

 当選1回生が多かったのは、次の国政選挙で(消費税増税が)大きな問題になるので一番敏感なのだと思います。中堅以上の出席者は少なかったですが、選挙地盤が固まっている人が多いですし、それぞれにお立場もあるのかなと感じていますけどね。

 消費税率を10%に引き上げるのは、予定(来年10月)より約1年半先送りした方がいい。そう思い始めたのは、8月末頃に7、8月の(経済指標の)数字を見てからです。それで考えを百八十度転換しました。

 アベノミクス自体はちゃんとうまくいって、円安が進み、株価が上がり、失業率が下がり、物価もそれなりに上がって、全ての実体経済に好影響を与えてきました。

 ところが、4月の消費税増税で冷や水をぶっかけちゃった。4~6月の消費が(増税直前の駆け込み需要の反動で)落ち込むのはしようがありませんが、7~9月も減り続け、消費マインドも落ち込んでいる。

 一番の誤算だったのは、円安の進行で回復するだろうと思っていた輸出が全然伸びないことです。増税のマイナス分を輸出の伸びで埋め合わせるのが僕の理論の前提だったんですけどね…。

 アベノミクスにとって、消費税の再増税はちょっと迷惑な話でね。本田悦朗内閣官房参与がよく言うんだけど、アベノミクスはアクセルを踏んで離陸しようとする政策。一方、消費税増税はブレーキをかける政策。相反しているんです。今はまさに、アベノミクスと消費税増税の影響がせめぎ合いをしているのでしょう。

 だから、増税のタイミングをずらすことで、どちらもうまくいくようにするべきではないでしょうか。最悪のパターンは、増税を急ぐことによってデフレに逆戻りすることです。

 先送りした場合、1年半後の平成29年4月までの間、日銀には2%の物価目標に向けてしっかりやってもらわないといかん。弱くなった需要を元に戻す金融面の手立てを講じてもらわなければなりません。

 すると物価が2%に向かい、予想インフレ率が上がって、経済が回復してくる。生産も消費も回復する可能性があります。そうなると、賃金も上がってくる。労働市場は賃金を上げないと十分に人材を確保できないほどタイトですし、企業収益もいいですから賃金に回してもらう。

 こう考えていくと、物価が安定するのは平成27年末か28年始めでしょう。持続できる状況かどうかは、半年か10カ月みたほうがいい。それぐらいたてば、デフレに戻らないことがおそらくはっきりすると思うのです。10月ではなく4月なのは、企業が値段の変更などをするのに年度替わりの方が好都合だからです。

 消費税率の再引き上げ先送りにリスクがあるといいますが、どんなリスクがあるというのでしょう。このタイミングで増税して税収が上がりますか。むしろ下がるでしょう。

 日本国債の投げ売りによる金利高騰も、何かあれば日銀が買うことになっているからあり得ない。先送りして日本経済が回復する見込みを立てれば、株価も上がります。

 「成功させる会」の会合を開く前に、私が所属する岸田派(宏池会)名誉会長の古賀誠さんと議論しました。「結構なことじゃないか。意見は違うが大いにやれ」と言っていました。集団的自衛権についても「決まったことはもういいんだ。今は安倍晋三首相に継続してやってもらうしかない。全体がうまくいけばいい」とも話していました。

 首相には、自信を持って判断してもらいたい。われわれが11月下旬に出す提言を尊重してもらいたいですね。自民党税制調査会が決める話ではありません。衆院解散は首相の考え次第ですが、解散時期で判断が左右されたら本末転倒でしょう。(豊田真由美)

 

◇やまもと・こうぞう 昭和23年、福岡県生まれ。東大卒。大蔵省(現・財務省)を経て平成5年の衆院選で初当選、経済産業副大臣などを歴任。衆院福岡10区。当選6回。